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マイ・フェイバリット・ソングス 第11回~TOTO

(2021年7月改訂版)

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『TOTO』(1978年)

最初期メンバー、デヴィッド・ぺイチ、ジェフ・ポーカロ、スティーヴ・ポーカロ、スティーヴ・ルカサー、デヴィッド・ハンゲイト、ボビー・キンボール。スタジオミュージシャンたちによる世界最高峰の音の職人集団ですね。この頃はほとんどの曲をデヴィッド・ペイチが作っています。いきなり代表曲「I’ll Supply the Love」「Georgy Porgy」「Hold the Line」が入っている充実したファースト。ビルボード5位を獲得した「Hold the Line」はTOTOの名刺代わりとなった初期の名曲です。他にも僕は冒頭のインスト曲「Child’s Anthem」とハードロック風ナンバー「Girl Goodbye」が好きですね。全体的にロックとAORのバランスが絶妙で、とても聴きやすいアルバムです。デビュー作にして世界で450万枚の大ヒットとなりました。


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『Hydra』(1979年)

ファーストが成功したにもかかわらず、いきなり方向性を探りだしている感じがありますね。セカンドはややコンセプトアルバムのような感じで、プログレやハードロック色が強めになっています。(とはいってもAOR風の「99」やJazzyな「Mama」といった曲もありますが) 象徴的なのはやはり一曲目の「Hydra」でしょうか。7分以上にわたるプログレ風のドラマティックな曲。つづく「ST.George and the Dragon」「99」の流れはカッコいいですね。「White Sister」はメンバーの演奏力の高さが際立つロックナンバー。ファーストが聴きやすかったのに比べるとこのセカンドはやや難解な曲が多いので、TOTOファンの上級者に人気がある印象です。売り上げは世界200万枚とファーストの半分以下となってしまいました。


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『Turn Back』(1981年)

前作の反動からか3枚目はキャッチーでポップな曲が中心となっています。(演奏はかなりハードですが) 爽やかで明るい曲が多めです。「Goodbye Elenore」みたいなノリノリの曲も入っています。こんなキャッチーな曲がチャート100位以内にも入らなかったのはなんか不思議な気がしますけど、ちょっとヒットを狙いすぎたのかな・・・。あるいは、やはりTOTOにはファーストのような曲やAOR路線が期待されていたということなのでしょうか。僕はこのアルバムだと「A Million Miles Away」がお気に入り。「Turn Back」のアウトロと「If It’s the Last Night」のイントロの繋ぎ方なんかもカッコいいんですよねえ。残念ながら売り上げは前作をさらに下回り、世界で100万枚のセールスとなりました。


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『TOTO Ⅳ』(1982年)

グラミー6部門を獲得した不朽の名盤。世界1200万枚の大ヒットとなり、シングルでも「Africa」が初の全米1位、「Rosanna」が全米2位、「I Won’t Hold You Back」が全米10位を獲得しています。三枚目まではデヴィッド・ぺイチの色が圧倒的に強いんだけど、ここからは他のメンバーの作った曲も増えてきますね。冒頭の「Rosanna」からすべての楽器が大活躍という感じで惚れ惚れとしてしまいます。特に「Rosanna」におけるジェフ・ポーカロのドラムは最高です。(この難度の高いハーフタイム・シャッフルは後に「ロザーナ・シャッフル」と呼ばれることも) このアルバムあたりからジェフのドラムは神の域に達している感じがしますね。「Afraid of Love」のような比較的シンプルなドラムでも圧倒的に心地よい音を響かせています。あとスティーヴ・ルカサーが「I Won’t Hold You Back」を作ったのはバンドとして非常に画期的なことだったように思います。これを機にルカサーは名バラードを次々作ってTOTOをより深みや広がりのあるバンドに導いていくんですよね。ルカサーの間奏のギターも最高です。デヴィッド・ハンゲイトのベースはこのアルバムで一旦聴き納めとなります。


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『Isolation』(1984年)

ベースのデヴィッド・ハンゲイトが脱退しポーカロ兄弟の次男マイクに、ボーカルのボビー・キンボールが脱退しファギー・フレデリクセンに替わっています。この新ボーカルのファギーの声が僕はあまり好みではないんですよね。ハイトーンで美しい声だけど、ヘヴィメタバンドのボーカルっぽい感じがしてしまって。(結局というかやはりというファギーはこの一枚で脱退となります。)楽曲はどれもキャッチーで明るくていいんだけど、その分AORの要素とか大人ロックの深みみたいなのが薄れている気もします。すごく聴きやすいアルバムではあるんだけど。個人的には「Carmen」と「Endress」がカッコよくて好きですね。リリース当時僕はまだ小学生でしたが「Stranger In Town」がよく流れていたのは記憶に残っています。


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『Fahrenheit』(1986年)

学生時代繰り返し聴いたお気に入りの一枚。まず新ボーカルのジョセフ・ウィリアムズ(「ジョーズ」「スター・ウォーズ」「スーパーマン」「E.T.」「インディ・ジョーンズ」などのテーマ曲を作曲したジョン・ウィリアムズの息子)の声が大好きなんですよね。しかもジョセフはソングライティングの面でも大活躍。ジョセフが曲作りに関わった曲はことごとくいい。「Till the End」とか「We Can Make It Tonight」とか「Can’t Stand It Any Longer」とか「Could This Be Love」とか。あきらかにTOTOに新しい風を吹き込んでいます。ルカサーは「I’ll Be Over You」という珠玉のラブソングを、このアルバム後に脱退するスティ―ヴ・ポーカロは「Lea」という名バラードを作っています。「Lea」を誰が歌っているのかはファンの間でも諸説あるみたいだけど、僕はジョセフだと思うんだよなあ。正解ご存知の方います?
さらにこのアルバムはコーラスでドン・ヘンリ―とマイケル・マクドナルド、トランペットでマイルス・デイヴィスが参加という夢のようなメンバーでレコーディングされているんですよね。そんなわけで隅々まで聴きどころ満載の名盤です。


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『The Seventh One』(1988年)

僕はこれが一番好きです。中3~高1くらいに出会ってTOTOの入口になったアルバムだし、青春期に最も聴きまくっていたからすっかり体に沁みこんでいるんですよね。あとやっぱりジョセフがボーカルをとっている時代が僕の中では最盛期なので。(このアルバムの後ジョセフは一旦脱退) 楽曲も「Pamela」「Anna」「Stop Loving You」「Mushanga」「Home of the Brave」など名曲揃い。ジェフ・ポーカロのドラムはやはり文句なしに素晴らしい。あと僕はマイク・ポーカロのベースも好きなんですよね。「Stop Loving You」とか「A Thousand Years」とか。シビレるなあ。で、このバンドの演奏の素晴らしさのピークを味わえるのは「Mushanga」の間奏部分じゃないかと思うんですよね。何度聴いてもこの間奏めちゃくちゃカッコイイ。ゲストも豪華で「Stop Loving You」ではYESのジョン・アンダーソン、「Stay Away」ではリンダ・ロンシュタットがコーラスで参加しています。全体的にルカサーのギターが前に出すぎていないので、バランスの良いバンドサウンドになっています。AOR色も強め。尚、キーボードのスティーヴ・ポーカロはバンド自体は脱退したものの、ゲストとして全面的に参加しています。このアルバムは今聴き直しても高校生の頃と同じくらい胸が震えますね。いや、今の方がもっと感動してるかもしれません。


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『PAST TO PRESENT 1997-1990』(1990年)

ベスト盤は外すつもりだったんですが、これだけは言及しておく必要があるので・・・。というのは、このアルバムだけ加入していたジャン・ミッシェル・バイロンという南アフリカ出身のボーカリストがいるんですよね。彼が楽曲作りにも関わり新曲として「Love Has The Power」「Out of Love」「Can You Hear What I’m Saying」「Animal」の4曲が収録されているんですが、結局この一枚で脱退してしまいます。どうやら彼はレコード会社に無理矢理押し付けられたそうで、メンバーも納得していなかったとのこと。サブスクでもこのアルバムは外されてて、まるでなかったことのようになっている・・・。たしかにこれだけ名曲揃いのバンドが13曲入りのベストをリリースするのに、4曲も新曲を入れるって不自然すぎますよね。しかも彼の歌声も提供曲もどう考えてもTOTOには不似合い。というわけで幻のボーカリストが在籍したいわく付きのベスト盤です。


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『Kingdom of Desire』(1992年)

ジェフの遺作となった8枚目。ジャン・ミッシェル・バイロンが脱退し、ギターのスティーヴ・ルカサーをメインボーカルに。ルカサーはこれまでのしっとりとした歌い方から力強いハスキーボイスに変えていますね。サウンドもギターを前面に押し出したハードなスタイル。そんなわけで従来のTOTOに比べるとかなり異色で、リリース当時はかなり戸惑いました。ルカサー率いるハードロックバンドみたいになってしまって。ヘヴィで骨太の楽曲群ですが、ルカサーお得意の「2 Hearts」「Only you」といったバラードも入っています。僕としてはメンバー全員の演奏がバランスよく響いていている方が好きなので、ラストの「Jake to the Bone」というインストゥルメンタルが一番好きですね。4人の超絶技巧が堪能できる最高の一曲。2019年の武道館ライブで聴いたときもシビレたけど、ここに収録されているのはジェフがドラムを叩いているのでより完璧です。急死する直前のジェフの有終の美。


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『Tambu』(1995年)

ジェフの急死というTOTO最大の危機を経ての9作目。新ドラマーはサイモン・フィリップス。これも前作同様すべてルカサーがメインボーカル。「I Will Remember」「If You Belong to Me」「The Other End of Time」「Just Can't Get to You」「The Road Goes On」などバラード調の曲が多いアルバムですが、これらのバラードでさえいずれもルカサーはハスキーボイスで歌い上げています。個人的にはロックテイストでキャッチーな「Drag Him to The Roof」がお気に入り。あとフュージョンっぽいテイストのインストゥルメンタル「Dave’s Gone Skiing」がカッコイイですね。この二曲の演奏はTOTOの本領発揮といった感じで、このアルバム最大の聴きどころじゃないかと思います。ドラムがジェフだったらもっと・・・とは思ってしまいますが。


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『TOTO XX(1977-1997)』(1998年)

20周年企画のアウトテイク集。これはレア曲だらけなので整理してみます。

1.「Goin' Home」(1989)ー「Past to Present」でボビー・キンボール復帰作として用意されたが実現せずお蔵入りとなった曲

2.「Tale of a Man」(1979)ー「Hydra」のアウトテイク

3.「Last Night」(1987)ー「The Seventh One」のアウトテイク

4.「In a World」(1986)ー「I'll Be Over You」のカップリング

5.「Modern Eyes」(1986)ー「Fahrenheit」のアウトテイク

6.「Right Part of Me」(1984)ー「Isolation」のアウトテイク

7.「Mrs. Johnson」(1977)ーファーストアルバムのアウトテイク

8.「Miss Sun」(1977)ーTOTO結成前のテイク。のちにボズ・スキャッグスがヒットさせた曲

9.「Love Is a Man's World」(1977)ーTOTO結成前のテイク

10.「On the Run」(Live)ー「Kingdom of Desire」のアウトテイクのライブ・バージョン

11.「Dave's Gone Skiing」(Live)ー「Tambu」収録曲のライブ・バージョン

12.「Baba Mnumzaane」(Live)ー南アフリカの民謡。

13.「Africa」(Live)ー「TOTO Ⅳ」収録曲のライブ・バージョン


埋もれさせておくにはもったいない曲ばかりです。ボツになったのは、楽曲の良し悪しではなく、アルバム全体のバランスの問題だったと思うんですよね。この企画盤で日の目を見ることができてよかったです。ただ最後の方のライブ・バージョンはこのアルバムのコンセプトに沿ってないような・・・。10はともかく、11~13はこのアルバムに入れなくてもよかったんじゃないかなあ。


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『Mindfields』(1999年)

初代ボーカリストのボビー・キンボールが復活。さらに「Mad About You」ではジョセフ・ウィリアムズが作曲に参加してるんですよね。スティーヴ・ポーカロもその後のアルバムにちょくちょく参加してるし、脱退してもTOTOファミリーは不滅って感じがいいですね。TOTOというバンドには彼らの力が欠かせないという点もあるけど、過去のメンバーがその都度協力的にTOTOを存続させようとしているのは、亡きジェフ・ポーカロへの思いがあるからじゃないかと僕は勝手に想像しています。このアルバムだと僕は「Last Love」が好きですね。珍しくブルース調でボビーがシャウトしている「High Price of Hate」も聴きどころ。このアルバムって公式サイトに載っているのと『All In』のCDとApple Musicではすべて曲順が違うんですよね。どうしてなんだろう。


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『Falling in Between』(2006年)

引き続きボビー・キンボールをボーカルに据えたアルバム。キーボードのグレッグ・フィリンゲインズが新加入。サポートメンバーとしてスティーヴ・ポーカロとジョセフ・ウィリアムズ、さらにシカゴのジェイムズ・パンコウとジェイソン・シェフも参加していますね。一曲目の表題曲からレッド・ツェッペリンみたいなギターリフでハードロック路線を漂わせています。「Dying on My Feet」は後半のジェイムス・パンコウが手掛けたホーンアレンジがカッコイイですね。個人的には「Bottom of Your Soul」で久々にジョセフの声が聴けるのが嬉しいです。「Let It Go」や「No End in Sight」ではTOTOらしい演奏を堪能できます。


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『TOTO XVI』(2015年)年

前作の後マイク・ポーカロが脱退したのを機に一度解散。その後マイクの闘病支援のため再集結ツアーを行うも、ボビー・キンボールとサイモン・フィリップスが脱退。ジョセフ・ウィリアムズとスティ―ヴ・ポーカロが再加入。キース・カーロックが新加入。サポートに初代ベーシストのデヴィッド・ハンゲイトが参加。という流れでレコーディングを果たすも、リリース直前にマイクは亡くなってしまうんですよね・・・。そんな激動の入れ替わりを経ての作品だけど、このアルバムはすごくいいです。ここ数枚のハードな感じは抑えられてて、従来のAOR色が強く出ている。やはりジョセフの復帰は大きいなあと思う。彼がボーカルと曲作りに全面的に関わると僕の好きなTOTOになる。「Running Out of Time」「Holy War」「Orphan」「Great Expectations」カッコいいなあ。そしてこのメンバーのタイミングで2019年のライブを聴けたのは本当にラッキーでした。(デヴィッド・ぺイチが体調不良で不参加だったのは残念だけど) ツアー後に活動休止宣言をしてしまったし。でも、また復活してくれると信じています。数々の困難を乗り越えてきたバンドだから。ちなみに2019年武道館公演のセットリストはこんな感じでした。

01.DEVIL’S TOWER 
02.HOLD THE LINE  
03.LOVERS IN THE NIGHT
04.ALONE 
05.I WILL REMEMBER 
06.ENGLISH EYES 
07.JAKE TO THE BONE 
08.ROSANNA 
09.GEORGY PORGY
10.HUMAN NATURE (Michael Jackson)
11.I’LL BE OVER YOU 
12.NO LOVE 
13.STOP LOVING YOU
14.GIRL GOODBYE 
15.LION 
16.DUNE (the movie 『DUNE』) 
17.WHILE MY GUITAR GENTRY WEEPS (The Beatles)
18.MAKE BELIEVE
19.AFRICA

<ENCORE>
20.HOME OF THE BRAVE 



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『Live in Tokyo 1980』(2018年)

40周年記念のBOXセット「All In」に入っていた5曲入りライブ盤。これって日本盤だから入ってるのかな? なんで5曲だけなんだろう? よく分かりませんが、東京公演なので日本人としては嬉しいですね。収録曲は『Hydra』から「St.George And The Dragon」「Mama」「White Sister」そしてレア曲「Tale of a Man」「Runaway」


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『Old Is New』(2018年)

「All In」に入っている新曲集(のちに単独リリース)。書下ろしの新曲が「Alone」「Struck by Lightning」「Chelsea」、そしてホワット・ソー・ノットやスクリレックスとコラボした「We Keep On Running」。あとは81~84年に録音された未完成のセッション音源に新たなセクションを加えた楽曲。つまり、在りし日のジェフ・ポーカロとマイク・ポーカロ、旧メンバーデヴィッド・ハンゲイトのプレイに合わせて、2017年のルカサー・ペイチ・S.ポーカロがオーバーダブで完成させてるんですよね。それが「Devil's Tower」「Fearful Heart」「Spanish Sea」「In A Little While」「Chase the Rain」「Oh Why」です。(結果として「Fearful Heart」「Spanish Sea」「Oh Why」はポーカロ三兄弟が時空を超えて共演するという感涙ものの楽曲となってますね)まず、書下ろし新曲の「Alone」が素晴らしいですね。初めて聴いたとき、この人たちまだこんなカッコイイ曲作れるのか! と感動しました。演奏もジョセフの声もまるで衰えていない。「Spanish Sea」も最高です。これは書下ろしと解説されてるのもあるけど、ドラムがジェフでベースがマイクなので、未完成セッションから作った曲のはず。(当時「Africa」のパート2として作ったという言及もあるので)まさにⅣの頃の雰囲気で素晴らしい一曲です。他の曲もすごくいいですね。亡くなったメンバーも含めて勢ぞろいすることができるなんて、音楽ってすごいな。


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