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詩2

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2016年7月以降にネットで発表した詩
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2019年7月の記事一覧

ソレイユ

出口のない祠をさまよっていた

地図は破れ 磁針は狂い 

分かれ道にさしかかるたび

より闇の深い方へ迷いこんだ

とうに火種は尽き

わたしは触覚の折れた虫のように

両壁にぶつかりながら進んでいた

やがて水も尽き

もはやここまでと諦めかけたとき

ふいに遠くから

ひとすじの光が射した

ともし火に手を伸ばしながら

祠を抜けると

そこにあなたが立っていた

あなたはわたしの手をとって

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むつみ橋

むつみ橋のかげに腰かけて

川面にひとつ石を投げた

西から吹きよせる風は

そっとえりあしを撫ぜ

荷台を揺らすトラックの音が

頭上を通りすぎる

ゆたかな水をたたえる多摩川は

あなたの住む街をかすめ

やがて羽田のあたりで

海へとそそぎこむだろう

河原に咲くオニユリたちが

いっせいに首を垂れている

あなたは今もあの街で

よどみに耐えているだろうか

それとも別の土地へ発ち

新た

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