創作昔話【風神さまとさくら山】Ep.1 ;朗読
[バレンタイン🌸スペシャル]
創作昔話 『風神さまとさくら山』
作・agutami
読み手・村の鍛冶屋:sekine
メンバーさんと『コラボ制作した朗読配信』が私のラジオで再生数のトップになったので蔵出し公開いたします。
バレンタインプレゼントで「自作のおはなし」を頂いて朗読してみました。
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むかしむかし、そのまた昔のお話です。
いくつも関を越したある村に、和平さんという木こりがおりました。
信心深い和平さんは、
「お山の木が見事に育つのは、この地の風神さまが見守って下さるからじゃ。ありがたや、ありがたや」と、山にお社を建てて、毎日拝みに行きました。
ある日、和平さんがいつものように山へ入ると、どこからともなく、「ちぃちぃ」と、か細く、弱々しい鳥の鳴き声が聞こえてくるではありませんか。
「おや、これは様子がおかしいのう?」
和平さんは、耳をそばだてながらあたりをぐるりと見回すと
よし!とばかり、小川に向かってきびすを返しました。
するとそこには、なにやら色の珍しい手負いの文鳥が一羽、
川べりにうずくまって、ちぃちぃ鳴いておりましたので、心根の広くて真っ直ぐな和平さんは、
「こりゃあ、いかん!」とさっそく手ぬぐいを出して、
それにやんわりくるんでやると、大事に懐へしまってうちへ帰りました。
来る日も来る日も、それはそれは親身に手当てをしてやりました。
と、そのうち、和平さんの家の軒下の鳥かごからは
「ちっち」と、元気な文鳥の声が聞こえるようになりました。
その色の珍しい文鳥からは、なんともよい桜の香りがするようでしたので、
和平さんは「さくら」と名付け、家族のようにかわいがりました。
ことし一番の大嵐が来るぞと村中が慌て、しんと静まり返ったその日の晩、
和平さんは「今夜の嵐じゃ外は辛かろう」と、さくらをうちの中へ放してやりました。
さくらはしばらく家中を軽やかに舞うと、和平さんの膝元へ降り伏せました。
すると、なんてことでしょう!
そこには巫女さまの装束をまとい、人の姿をしたさくらがいるではありませんか。
和平さんは腰を抜かしそうなほどびっくりしましたが、
心のどこかで、なるほどそういうわけかとしみじみ思いました。
(さくら)
「こたびは、わたくしを助けてくださいまして誠にありがとうございました」
わたくしは、風神さまに仕える者にございます。この辺りの、かざぐもの様子を見に下りて参りましたところ、彼方よりのつぶてに当たって傷を負い、和平さまのお山へ落ちてしまいました。
和平さまのこの上ない手当てを受け、これ、元の通りに飛べるようになりました。」
(和平)
(なぜか事態が腑に落ちているので、落ち着いた感じで)
「『さくら』今宵、嵐の晩に、風神さまが迎えにきなさるのだな?」
さくらの話を遮るように、和平さんは聞き確かめようとしましたが、
そう言っているうちに、なんとも眠たくなってきました。
(さくら)
「はい。和平さまがお眠りなさっている間、さくらは風神さまとともに参りましょう。
今までありがとうございました。このご恩は、、、、」
さくらの声が最後まで聞こえるか聞こえないかのうちに
和平さんは、そのまま眠りについてしまいました。
朝、目が覚めると、嵐はすで去ったようでした。
戸の向こうから、小鳥の鳴き声が元気よく聞こえましたので、
和平さんは、「さくらかい?」と慌てて戸を開けてみましたが
外は、みずみずしい田畑がキラキラ輝くばかりで、
さくらの姿はありませんでした。
どこぞの家から転がったタライの縁に、見知らぬ小鳥がジジジと鳴いて止まりました。
緩やかな風とともに桜のいい香りがしました。
「さて、風神さまにお礼を言わんとな。」
そういって和平さんがお山を見やると
「こりゃあ、おどろいた!」
なんと、和平さんのお山いっぱいに
満開の桜が咲いておりました。
それからというもの、
和平さんのお山は「風神さまの桜山」と慕われ続け、
春になると村中の人を、いつまでもいつまでも楽しませてくれるのでした。
〜 おしまい 〜
===[BGM認可済]===
#道 / #knit(ニット)
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