時代劇レヴュー・番外編②:始皇帝烈伝(2001年)

「時代劇」と言うカテゴライズとはやや異なるが、中国の歴史を材にしたドラマを紹介する「番外編」の第二弾。

北京の「中央電視台(CCTV)」が2001年に制作した連続ドラマで、タイトルが示す通り、秦の始皇帝の生涯を描いた作品であり、始皇帝の父・荘襄王の即位から始皇帝死後に趙高の陰謀で扶蘇が自害するまでを扱っている(ちなみに原題は「秦始皇」で、日本向けDVDソフト化に際してつけられたセンスのない邦題よりよほど良い)。

内容は概ね『史記』をベースにしていて、始皇帝に関する主要なエピソードはほぼ網羅しており、歴史解釈もオーソドックスである。

『史記』に出ていないこと、例えば始皇帝の婚姻や皇族の婚姻などについてはドラマの創作による部分が多かったが、これもそこまで無理な設定ではなかったと思う(もっとも、時々どうしてそう言う設定にしたのか、と突っ込みたくなるような箇所はあったが)。

作中で描かれる人物像も概ね『史記』のイメージ通りで、英明なれど暴君の顔を序盤からちらちらのぞかせる始皇帝、奸佞な趙高、生真面目で優等生な扶蘇、有能だけれども小者な李斯、奔放でどうしようもない始皇帝の母親などなど、この手の創作ではお馴染みのキャラクタ設定になっている。

唯一『史記』のイメージとちょっと違う印象だったのは呂不韋で、かなり立派な人物に描かれており、野心家と言うよりも始皇帝の忠臣と言った役回りで、むしろ始皇帝の方が、呂不韋の言うことを聞かずに暴走する困った奴と言う印象すらある(日本の歴史小説で似たような描き方をしているものを探せば、宮城谷昌光の『奇貨居くべし』の呂不韋のイメージが近いであろうか)。

全体的には、始皇帝が批判的に描かれているものの、その有能な部分も強調されていて、後半になってもそこまで耄碌した感じはせず、徐福を使って不老不死の薬を探し求めるお馴染みのくだりも、始皇帝は承知で彼に騙されると言う、『史記』とは違ってだいぶ始皇帝に都合よく(?)解釈されていた。

とは言え、やはり始皇帝像そのものはステレオタイプで、決してつまらなかったわけではないのだが、良く言えばオーソドックス、悪く言えば平板なストーリーなので、特に後半は惰性で見てしまった感もあった。

始皇帝役は張豊毅であり、映画「レッドクリフ」でエロおやじの曹操(!)を演じた人と言えばわかりやすいだろうか(笑)。

物語を彩る女優陣では、始皇帝の二人の妃役、趙出身(と言う設定)の扶蘇の生母を演じた張静初と、楚出身(と言う設定)の胡亥の生母を演じた范冰冰(ファン・ビンビン)が花形と言った所。

ファン・ビンビンはかなり若い時期(たぶんまだ十代)の出演作であるが、個人的には張静初の方が好きである(ちなみに、扶蘇の生母は前半で死んでしまうので、以降張静初が見られなくなったのはいささか残念であった)。


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