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お酒にまつわる漫画たち#1『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』

ウェブ連載とお酒の漫画たち

漫画を月に20冊ほど購入する。

試し読みなどは全くしないので、完全に「ジャケ買い」となる。
もちろん玉石混交であり、いい作品ではあるが己の好みと全く違う作品も多々ある。

昨今は、大手出版社が「ウェブ連載」の体制を整えたことから、出版される漫画の総数は増えたのではなかろうか。
「ジャンプ+」など、紙の雑誌では連載しきれない作品たちがSNSの口コミを通して、ウェブ上で多くの人の目に触れるようになった。

そこで好評だった作品は出版され、単行本として書店に並ぶ。
書店に並ぶということは、「紙の漫画派」を自称する自分のような偏屈者の目にも触れる機会が増えることに繋がる。

つまり、「ジャケ買い」する作品も増えた。
嬉しい悲鳴だ。

そんな作品の中でも、「酒にまつわる漫画」がジャンルとして存在感を増している。

ただ酒を紹介するだけではない、あくまでも酒を媒介して広がる物語だ。

酒の漫画というと『もやしもん』が代表に挙げられる。
酒の雑学や知識を図解等でわかりやすく紹介し、魅力的なキャラクターたちの動きも相まって面白い作品に仕上がっていた。
酒を中心とした漫画のパイオニアだろう。

今回紹介する作品は、それよりはもう少し「酒が主題ではない」作品だ。

テーマの一つとして各話に登場するが、それは舞台装置のほんの一つに過ぎない。

酒がなくとも成立はするのだろうが、作品を通した「1本の串」として酒を登場させることで、作品全体に統一感を持たせている。

酒に興味がない人も、例えば未成年の人も楽しめる作品になっているのは、キャラクターやストーリーの強さのおかげだろう。

何より、近年はクラフトビールなどカルチャーとしてそのデザイン性やコンセプトが魅力的なメーカーが多い。
そういった点が、漫画とうまく結びついて昇華されているのだろう。


『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』

2022年3月17日現在で3巻まで出ており、秋田書店のウェブ媒体である『マンガクロス』で連載されている作品だ。
https://mangacross.jp/comics/kamiinabotan

なんとも説明が難しい作品である。
ジャンル的な説明をすると、女性と女性の恋愛模様を描いた「百合」。

大学の同じ寮となった先輩と後輩が主人公。
互いに、お酒へのトラウマを少しだけ抱えている。
それでも二人でいろいろなところで酒を嗜んで…といった話だ。

女子寮なのでいろいろなタイプのキャラクターが登場する。

作者の塀氏はファションに造詣が深く、キャラクターが身につける衣装に色濃く反映されている。
登場するキャラクターはみんな可愛い服を着ている。

酒の説明はあまりページを割いていない。
酒造のある地域を目的として出向くこともない、キャラクター目線から言うと「たまたま出先に地酒があった」くらいの感覚だ。

キャラクターの酒への感想と、その時の心情描写が絶妙にリンクしている。

「この出てきた酒を飲みながら読めば、もっと深くキャラクターの気持ちが分かるのだろうな」
という気分にさせてくれる。

何よりもキャラクターが魅力的。

「可愛い」×「おしゃれ」×「酒飲み」

そんな女の子たちが毎回ほぼ必ずお酒を飲み、顔を赤らめている。

きっと作者は、酒そのものはもちろん、酒の場での会話が大好きなんだろうなと思う。

これを読むと、人を誘って酒を飲みたくなること請け合いだ。



おまけ〜この漫画を読んで飲んだ酒たちの一部〜

・うちゅうブルーイング『OTAKU』
・VERTERE『VALENTINE SOUR 2022』
・コエドブルワリー『瑠璃-Ruri-』
・『Absinthe Emeraude』 ※柏駅前『Cluster』にて

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