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FC東京を振り返る(2021年第14節vs柏)

5連敗。解任の瀬戸際である。
対する柏レイソルも下位に沈む。
2021年の1月には互いにルヴァン杯で覇権を争った。
そんな両チームが、ほぼ同勝ち点で背水の陣に臨む。


●試合前

今節はアウェイでの対戦だった。
東京都に緊急事態宣言が発令されていたことから、ビジター席の設置はなし。
そのため、都内のキャンプ場にPCを持ち込み大自然の中でDAZN観戦を行った。
奥多摩の川辺で見るサッカーは素晴らしく、こういう場所に屋外スポーツ観戦ゾーンを設けたら、小規模でも面白いなと感じた。


●先発出場

森重・渡辺剛のコンビが復活。

固定できていない右SBには内田宅哉が入った。右肩を負傷し退場を余儀なくされた鳥栖戦以来の起用である。

ボランチには青木を起用、安部と高萩で中盤をどのように構成するかキックオフまで判断ができなかったが、高萩を真ん中のセントラルMFとして自由に動くことを許し、底を二人で受け持つ配置であった。

トップには好調の田川、アダイウトン、この数試合でいまいちリズムの上がらないディエゴを起用した。


●前半

立ち上がり11分、両チームは強度を維持して序盤を推移する。
右サイドのハーフウェーライン付近での混戦から、セカンドボールを奪取した安部が逆サイドに走り込んだアダイウトンにスルーパス、エンドラインまで深くえぐり、GKをかわす浮き玉のパスで中央のディエゴへアシストを送り込んだ。


5連敗を喫したとしても「先制したら滅法強いFC東京」は健在である。
16分、再びアダイウトンがゴールを生み出す。

1点目と同様、中盤でのボールの奪い合いが混戦となり、柏の選手が出したバックパスが前線のオフサイドポジションに位置取りをしていた高萩に渡り、裏に抜け出した格好となる。
そのままGKとの1対1を迎えたが、猛然と左サイドに走り込んだアダイウトンにスルーパス。滑り込み左足に当て、ゴールを決めた。

相手のミスを見逃さない強かさ。

更に、柏のキックオフによるリスタート直後、アダイウトンは気落ちする柏の守備陣を見逃さなかった。

アダイウトンがボールを落とし、3人目の動きでそのまま左サイドへ走り出す。安部のくさびのパスを高萩はフリックし、アダイウトンが受けてそのままペナルティエリア内へ突撃。
田川とディエゴも走り込み、柏の守備陣との枚数は同じだったが、右足でファーへシュートを蹴り込んだ。

僅か8分以内に3点のリードを奪うことに成功した東京は、プレス強度やラインの高さを保ち続け、危なげなく前半を終える。


●ハーフタイム

連敗中の東京はとにかくラインが低かった。
一度押し込まれると陣地回復が出来ず、失点を重ねるまで最終ラインはペナルティエリア内へ押し込まれ、それに引きづられるように中盤のラインも下がりプレスの開始位置を上げることが出来なかった。

今節の前半は、右サイドバックの内田を筆頭に常に高い位置取りが出来ていた。

なぜそのような位置取りを出来ているのか。
その答えが後半にあった。今節を象徴するシーンとして、FC東京の公式Twitterも大きく取り上げている。


●高萩による「下がるな」のコーチング

後半の立ち上がりを過ぎ、柏にボールを持たれ少し押し込まれる時間帯。左サイドの小川に対して大きな声で激を飛ばした高萩の姿だ。

FC東京のラインコントロールは、相手の勢いに飲み込まれることが度々ある。これは長谷川監督の就任前から見られていたと記憶しているので、チームとしての悪癖として言いようがない。
両センターバックがラインの上げ下げを指示することが通常だが、森重を筆頭に最後の局面で失点を防ぐことも東京の守備の特徴でもあるため、ラインを上げること、下げることで危ない局面をしのぐことは表裏一体となっている。
そのため、必要のない場面でラインを下げてしまうことも多々ある。

今回の高萩の声は、そのディフェンスラインのラインコントロールを補って正しく押し上げさせるためのファインプレーである。

現代サッカーにおいて、相手の最終ラインを下げさせることは基本である。
そのために、足の速い選手に裏を狙わせて、それを嫌がらせることで押し込んでいく。
東京であれば永井やディエゴに裏を走らせる。そこへの対抗策は、例えばマリノスであればGKがそのスルーパスに対応することで、最終ラインを安心させてハイラインを維持させる。

いわば、ラインコントローうはメンタルの部分が大きい。
「ラインを上げても大丈夫だ。裏を取られても失点しない」
こういった意識を少しでも感じることが出来れば、守備陣は勇気を持ってラインを押し上げることができる。

この高萩のコーチングは、その意識を植え付け、全員の意識を前へと向けさせる最高の指示となった。


●後半

その高萩のコーチングが飛ぶ直前、柏が攻撃の形を見せる。


更に58分、柏に好機が続く。

ニアサイドへ打ち込まれた低いシュートに対して、波多野が左足一本でセーブする。


互いにチャンスを作る状況が続く中、72分に内田がシュートを放つ。

交代で入った永井が前線へ持ち込み、エリア内でキープ。
最終ラインから走り込んだ内田がシュートを打つも、枠外へ飛んだ。

本職でない右サイドバックの選手が、一番疲労の辛い時間帯にゴール前まで顔を出す。
内田は試合終盤に足の攣った仕草も見せず、それどころか相手を凌駕し続ける強さを見せ続けた。


そして最終盤の後半ロスタイム、途中出場の2人が仕事をする。

またもや左サイドの裏へ抜け出した永井がエリア内からファーへパスを送ると、しっかりゴール前に顔を出した三田がゴールへ流し込んだ。

この時間帯に途中出場組がしっかりと走り、二人で点を取った形だ。
ベテランの年齢になろうとしている2人が試合をクローズしてみせた。


●試合後

結果的には4−0の大勝である。
この5連敗はなんだったんだと、正直思わなくもない。

高萩に自由を与え、中盤をひっかき回す戦術が功を奏した。

そして右サイドバックの内田が高い位置を取り続け、持ち前のドリブルスキルでラインを押し返し続けた。
守備でも力強い体幹で臆することはなく、高萩・アダイウトンに次ぐMVPであると言える。内田にここまでこのポジションの適正があるとは思わなかった。

ただ、U23時代から守備戦術への理解は素晴らしいものがあったし、昨シーズンのトップチームにおいても、途中出場した場合の守備の貢献は素晴らしかった。
特にプレスの強度が高い。そして相手とボールの間に体を滑り込ませる感覚を持っている。
ウイングの選手としては前でのアイデアが今ひとつ物足りなかったが、現在の東京のポジションとしては、間違いなく天職だ。
今後に期待したい。

もしかしたら、川崎の左サイドバック旗手クラスのブレイクスルーを果たすかもしれない。


たまにサポートをいただけるのですが、あまりにも申し訳ないのでお題のリクエストなどを併せていただけるとありがたいです。もちろんなくても大丈夫です!読んで頂きありがとうございます。