健康診断でママに出会った

梅雨入りが嘘のように感じる、よく晴れた1日。

雑務ばかりで、午前中の業務はとても退屈に感じた。なんだか、人生のやる気が雑務にすべて奪われているような、そんな気すらしていた。

なんとか午前中の業務を終わらせ、昼ごはんを済ませた後、健康診断を受けに会社の体育館に向かった。

早めに着いてしまったためだろうか、体育館はガラガラだった。

並ぶこともなくサクサクと視力や聴力などの検査項目をすませた。次は血液検査だ。いやだなぁと思っていると

「次の方〜こちらへどうぞ〜︎ ︎☺︎」

と可愛げな声の看護師さんに呼ばれた。声だけで、お世話好きの若作りしているお姉さんかなぁと想像を膨らませていたが、顔を見るとめちゃくちゃ幼い。

恐らく、看護師なりたての20歳前後の女の子だろうか。

僕はそこまで若い女の子には興味無いんだよ、とでもいいたげなニヒルな顔をしながら、左手を採血台に乗せた。すると、

「〇〇さん(ぼくの苗字)、ですね!採血します〜︎ ︎!よろしくお願いします〜!」

と元気の良い挨拶をされ、いい子だなぁと感心してしまった。またその子は続けて

「ちょっとチクッとしますよぉ( ⑉´ᯅ`⑉ )」
「怖くないですからねぇ( ⑉´ᯅ`⑉ )」

と心配してくれた。
この瞬間、得体の知れない感情が僕を包んだ。

なんだ、これは、と思った。
と同時に、この人は僕のママなんだ、と思った。

この子は見た目は幼いのに、他人の幸せが自分の幸せです、みたいな純粋な気持ちがあるなぁと感じいってしまい、僕のママ知覚レーダーが誤作動してしまったようだ。

採血終わり際に差し掛かると、

「もう終わりますよぉ〜( ⑉´ᯅ`⑉ )」
「お疲れ様でした( ⑉´ᯅ`⑉ )」

と、ママから愛情いっぱいの言葉を貰った。

生まれたてのヒナが、初めて見た生物を一生ママだと認知するのと同じように、僕はこの人を一生のママだと認知した。

今日をもって僕のママは2人になった。

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