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「世界はジャズを求めてる」2021年1月第1週(1月7日)放送分スクリプト(出演 村井康司)


M1  テーマ曲:What the World Needs Now Is Love/Stan Getz

こんにちは。今日から始まる新番組「世界はジャズを求めてる」、進行役の音楽評論家、村井康司です。
この番組は鎌倉FM、毎週木曜日の午後8時から1時間、ジャズを中心としたさまざまな音楽とおしゃべりをお送りします。
進行役は週がわりで、第一木曜はわたくし村井康司がお相手をつとめます。

今お聞き頂いている曲はバート・バカラックの名曲「世界は愛を求めてる」、英語ではWhat the World Needs Now Is Love っていうんですけど、番組名の「世界はジャズを求めてる」はそのもじりですね。英語だとWhat the World Needs Now Is Jazz ということになるのかな。
とはいってもジャズだけではなく、ロックもポップスもソウルミュージックもラテンも、そしてたまにはクラシックもかけて、ゆったりとした気分でいい音楽をお楽しみいただければ、と思っています。
ちなみに演奏は、テナー・サックス奏者のスタン・ゲッツです。

それで、私の選曲なんですけど、ある曲の次に、その前の曲となんとなく関係がある曲をつなぎます。タイトルが似ているとか、同じ人が演奏に入っているとか、音楽仲間だとか、その他こじつけもあって、「音楽のしりとり」みたいな気分でかけていこうと思います。
どんな番組になるのか、私もワクワクしています。よろしくお願いします。

さて、記念すべき第一回の1曲目ですが、私の大好きなアルト・サックスプレーヤー、チャーリー・パーカーの曲をかけましょう。
パーカーは1920年生まれ、昨年2020年は生誕100年にあたりました。
では、チャーリー・パーカーとストリングスの共演で、「April In Paris」、「パリの4月」をお聴きください。

M2  April In Paris/Charlie Parker

チャーリー・パーカーで「パリの4月」でした。パーカーはこの曲を録音する半年ほど前に公演旅行で初めてヨーロッパに行き、パリで大歓迎を受けました。彼は生まれて初めての海外旅行が楽しみだったみたいで、渡航前に録音したオリジナル曲のタイトルは「ヴィザ」「パスポート」なんです! かわいいところがありますよね。

さて、次もパリにちなんだ曲です。
バド・パウエルのピアノ・ソロで「パリの目抜き通り」です。これはバドの弟で、やはりピアニストだったリッチー・パウエルの曲。バドは1959年にパリに移住しましたが、この曲はその数年前の録音です。

M3  Parisian Thoroughfare/Bud Powell

バド・パウエルのピアノで「パリの目抜き通り」でした。
さて、フランスのジャズといえば、ジャンゴ・ラインハルトを紹介せずにはいられません。パリで活躍し、「ジプシー・ジャズ」と呼ばれるスタイルを創始したジャンゴは、ギターでジャズを演奏したパイオニアの一人です。
では、ジャンゴ・ラインハルトと、ヴァイオリンのステファン・グラッペリの共演を聴いていただきます。ジャンゴのオリジナルで「ヌアージ」、日本語だと「雲」ですね、をお聴きください。

M4  Nuage/Django Reinhardt

ジャンゴ・ラインハルトの「ヌアージ」、「雲」でした。
さて、フランスに移住したアメリカのジャズメンはたくさんいるんですが、ドラマーのケニー・クラークはその中でも最も早い時期にフランスに渡りました。クラークがフランスで結成した、ケニー・クラーク=フランシー・ボーラン・ビッグバンドの「ララバイ・オブ・ザ・リーヴス」、「木の葉の子守唄」です。

M5 Lullaby  of the Leaves/Kenny Clarke-Francy Boland Big Band

ケニー・クラーク=フランシー・ボーラン・ビッグバンドの「ララバイ・オブ・ザ・リーヴス」、「木の葉の子守唄」でした。

さて、次はパリに渡ったアメリカのジャズメンとフランス人歌手の共演を聴いてみましょう。60年代末にパリに渡ったフリー・ジャズのバンド、アート・アンサンブル・オブ・シカゴと、フランス人歌手ブリジット・フォンテーヌの共演で、「ラジオのように」をお聴きください。

M6  Comme a la Radio/Brigitte Fontaine & Art Ensemble of Chicago

ブリジット・フォンテーヌとアート・アンサンブル・オブ・シカゴの共演で「ラジオのように」を聴いていただきました。
さて、アメリカのロック・ミュージシャンでパリで亡くなった人がいます。ドアーズというロックバンドのリーダーでヴォーカリストのジム・モリソンです。モリソンは、パリのペール・ラシェーズ墓地に眠っています。
モリソンが参加した最後のアルバム、ドアーズの『L.A.ウーマン』から「L'America」という曲を聴いてください。

M7  L'America/The Doors

ドアーズの「L'America」でした。ドアーズの最も有名なヒット曲は「Light My Fire」、邦題は「ハートに火をつけて」ですが、この曲はたくさんの歌手がカヴァーしています。今日はその中でもっとも「ハートに火がつかない」感じのカヴァーを聴いてみましょうか。ブラジルの女性歌手、アストラッド・ジルベルトが歌う「Light My Fire」です。

M8  Light My Fire/Astrud Gilberto


M9 An American In Paris/George Gershwin-Arthur Fiedler

今かかっている曲はジョージ・ガーシュインの「パリのアメリカ人」」です。演奏はアーサー・フィードラー指揮、ボストン・ポップス・オーケストラです。ここでの「パリのアメリカ人」というのは観光客のことではなくって、アメリカからパリに渡ってきた小説家や画家、音楽家のことなんです。第一次大戦後、ガートルード・スタイン、スコット・フィッツジェラルド、アーネスト・ヘミングウェイなどのアメリカの作家たちがパリに住んでいたのですが、彼らがたまり場にしていた書店が、アメリカ人のシルビア・ピーチが経営していた「シェークスピア&カンパニー」でした。

この書店は今でも営業を続けていまして、小説家志望の若者を住まわせて、その代わりに店の手伝いをしてもらう、という奇特なことをずっと続けています。1990年代に住み込みで働いていたカナダ人、ジェレミー・マーサーが書いたエッセイが『シェイクスピア&カンパニーの優しき日々』です。
ジェレミー・マーサー著、市川恵里訳『シェイクスピア&カンパニーの優しき日々』、河出文庫から出ております。よかったら読んでみてください。

さきほど「ハートに火をつけて」をかけたアストラッド・ジルベルトは、ブラジルのボサノバを代表するシンガー、ジョアン・ジルベルトの奥さんだった人ですね。彼女はジョアンとスタン・ゲッツの共演作『ゲッツ=ジルベルト』で、初めて歌手として「イパネマの娘」と「コルコバード」を歌い、あっという間にスターになってしまったという人なんです。そのことと関係があるのか、ほどなくジョアンとアストラッドは離婚してしまったんですけどね。

今日はマイルス・デイヴィスが、ギル・エヴァンス編曲と指揮のオーケストラと共演した「コルコバード」を聴きましょう。

M10   Corcovado/Miles Davis And Gil Evans

さて、今日のお別れの曲です。ギタリストのケニー・バレルが、ギル・エヴァンスのオーケストラと共演したアルバム『Guitar Forms』から、「Moon And Sand」です。

M11  Moon And Sand/Kenny Burrell And Gil Evans

「世界はジャズを求めてる」第1回、お相手は音楽評論家の村井康司でした。毎週木曜午後8時から1時間、鎌倉FMにチューンインを! ではまた!

(世界はジャズを求めてる」は、アプリやウェブサイトを使って世界のどこでも聞けます。毎週木曜午後8時から1時間、再放送は毎週日曜お昼の12時から1時間です。)

また、「世界はジャズを求めてる」の記事をアーカイブするマガジンもあります。公開した記事を随時入れますので、こちらもチェックしてください!

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