10年タイマー

夜の犬の散歩では丘を一つ登ります。
東に向かって、まっすぐに田んぼの間にのびた道をゆっくりを下る時、昨日は綺麗な月が目の前に浮かんでいました。

10年後にセットしたアナログのタイマーが動き始めました。
逆回りをして。コッ コッ コッ コッ コッ コッ コッ … 。
いや、デジタルか? 「年: 月: 日:分: 秒」の表示の時計が、カウントダウンし始めている。ツッ ツッ ツッ ツッ ツッ ツッ ツッ…。

月を眺めながら、坂を降りながら、途方もないカウンタダウンをしながら、体の中に時計を感じながら、ゆっくりと歩いていました。

ふと。

「そっか、ちゃんと終わりはあるんだな」

坂を下り切った時にそう思いました。そして振り返り、暗闇の中に今歩いてきた道を眺めました。 丘が綺麗に影を作り、真っ暗ではなかったのかと思う空との境界線が綺麗でした。
犬が足元で座って遠くを見ていました。同じものを見ているわけではないという当たり前のことに気付きました。
しゃがんで犬の目線で犬が見ていたであろう方向を見ても、わたしには何も思うものはありませんでした。
「こいつは何を見ていたのだろう。」

不思議な時間を過ごしました。

歩き出しても、アナログの時計は逆回りし、デジタルの時計はカウントダウンし続けてます。

さぁ、家に帰ろう。


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