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介護の終わりに;義母と

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2020年7月の記事一覧

介護の終わりに(17)

断っておく。義母は、穏やかな人だった。彼女の名誉のために、そして私の実感を込めて、それはきっちりと書いておく。

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介護の終わりに(16)

義母に対して、私が私自身の感情を整理しきれなかった。以前に書いた父の影響が大きくて、「病気の人間は不要」「病気は自己責任」という観念が大きすぎたのだ。

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介護の終わりに(15)

毎日、「どちらさまでしたっけか?」と尋ねられる経験は、そうそうあるものではない。楽しいとか苦しいではない。面倒くさい。しかし、これを毎日真面目に返答するとどうなるのか、興味があった。

記録していないから正確ではないが、おおよそ3,4か月続いた。

二つ以上の可能性があるが、その頃の私が思ったのは、
(1)私自身の名前を知らなくても、別にいいや、と義母が思うようになった。私の名前を知らなくてもどう

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介護の終わりに(14)

小学校から帰宅した私の息子。小学校1年生か、2年生か。そのくらいの年齢だった。暑くなり始めた季節だった。彼は半そでのTシャツで、息せきって帰ってきた。「ただいま」。

義母はその息子を見て、「あっ、〇〇ちゃん!(夫の愛称)」と呼んだ。

そうか。確かに。義母にとって、彼女のある一定の時期、とくに夫を育てていた時期、それが今よみがえっているのだ。そこには当然、今の夫はいない。同じ名前であっても、そん

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