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サーチファンドへの投資家を集める際のポイント

これまでと同じく Stanford GSB の Search Fund Primer に、投資家を集める際のポイントが記載されていましたので、メモがてら翻訳してみました。

投資家の分類手法(の一つのパターン)
i) サーチャーを個人的に知っているが、サーチファンドについては知らない人
ii) サーチファンドについては知っているが、サーチャーのことは知らない人
iii) サーチャーのこともサーチファンドのことも知っている人
iv) サーチャーのこともサーチファンドのことも知らない人

本文の中では、一部の人は iv) のサーチャーのこともサーチファンドのことも知らない人から資金調達するのは不可能に近いと言う、記載もありました。まだまだ米国でもサーチファンドの仕組みを知らない人から、投資を受けるのは簡単ではないということが伺えます。

一般的な資金調達成功者たちのアプローチ先(順不同)
i) プロのサーチファンド投資家
ii) 富裕な個人投資家、特に他のサーチファンドに投資実績のある投資家
iii) 以前のビジネス上付き合いがあった人
iv) ビジネスオーナー、起業家、企業の幹部等でサーチャーと以前から知り合いだった人物
v) 友人や家族

サーチャーが投資家を募る際に、その投資家がとっているリスクについてよく理解しておく必要がある、と本文には記載されています。サーチファンドへの投資はオルタナティブ投資というアセットクラスにあたり、多くの投資家にとって、ポートフォリオの 5-15% 程度の投資となります。初期のサーチ期間に必要となる金額(一人の投資家から $35K - $50K)ではなく、その後の買収資金の投資(一人の投資家から $100K - $1M)をできるか、この金額を一定のリスクにさらせるかというのが基準となることが記載されています。

また v) の友人や家族からの調達については、注意点が書かれています。サーチファンドの場合、概ね 1/3 はリターンが出ない結果となっていますが、この結果が友人や家族などの人間関係に影響を及ぼすことがあり、それを十分に認知した上で資金調達をすべきとされています。一方で、友人や家族から調達することのポジティブな面も述べられています。サーチャーに共感し応援してくれるだけでなく、ピッチの練習だったり、様々な観点を検討する手助けをしてくれます。また、他の投資家から見た際に、サーチャーのことを一番知っている友人や家族が、お金を預けているというのは、プラスの要素となる、と書かれています。

iv) のビジネスオーナー、起業家、企業の幹部等でサーチャーと以前から知り合いだった人物については、ビジネスについての知見や経験は当然持っているが、サーチファンドについてはあまり知らない可能性があると記載されています。これらの人々については、サーチファンドがもたらすであろう経済的なリターンだけでなく、サーチファンドのような新たな手法や若い起業家をサポートできるという理由から投資をするケースが多いと記載があります。

最近資金調達に成功したサーチャーから紹介をしてもらうのも一つの手であるとされています。特に、投資家に対しては、個人的なつながりを使って紹介してもらうことがすすめられています。ここは私としても納得する部分で、特に投資のような多額のお金が絡むような話題の場合、しかもその意思決定を限定された時間の中で実施する必要がある場合、よく信頼している人からの紹介である場合とそうでない場合で、かなり違いが出るかなと思いました。

これはアメリカ特有な気がしますが、多くの投資家は、リード投資家/リードファンドの判断を信じて投資をすると記載されています。サーチファンドのコミュニティはまだsmall and close-knit である、と。ここはアメリカ以外で投資家を集める場合、適用できないものの、スタートアップの投資も含めて投資という行為自体の特性上、このような傾向に収斂していくのかなと思いました。

最後に、投資を受ける前に、投資家の評判や、どのようなリソースをその投資家が持っているか、投資動機は何か、投資後にどのような役割で起業家を助けてくれるのか、といった部分はよく検討すべきと記載があります。以下がこれらを判断するための質問として例示されているものです。

・その投資家は直近の投資においてどのように関わっているか?
・その投資家は経済的もしくは株主としての投票権としてのコントロールをどの程度気にしているか?
・その投資家は多くの投資において取締役となり重要な意思決定に一票を持っているか?
・企業経営のどの分野においてその投資家は役に立つか?
・どのような形で、また、いつ、投資した資金の liquidity を求めるか?
・サーチャー起業家と投資家の投資に対する時間軸は合っているか?投資家は比較的早めな exit を志向しているのか?あるいは長期の保有を考えているのか?

特に後半の exit や liquidation に対する考え方は当たり前ですが重要だと感じました。この辺りは定量的に事前に把握することはとても難しく、また投資家の他のアセットの状況にもよる、つまり、マクロの経済状態にも相当影響を受けると思うので、個人的にはあまりその方向性を担保として決定的な意思決定はしないほうがいいのかなと思いました。

以上、今回はサーチファンドへの投資家を募る際に考えるべき点を Search Fund Primer からピックしてみました。調べてみると、特にサーチファンドだから、ということはなく、一般的な投資における考え方や interest を理解していれば、類推できるものが多いなと感じました。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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