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教師にならなかったけど活きた、教育実習での学び

※こちらは2020年7月2日に別サイトで公開した記事を再編集したものです

教員免許は取得したが教師にならなかった

大学生の頃、僕は教育学部に所属していました。大学に入学したときには、卒業後の進路として教師を選択することを考えていました。1学年につき約2,000名の学生が在籍しており、その中で約500名が教育学部という規模感で、比較的教育学部に注力している大学でした。教育実習にもいき、教員免許を取得しました。

しかし、結局教師の道には進まず、一般企業で働いています。同じ学科の同級生では4分の1くらいが教師になりませんでしたが、そのうちの一人です。

「教育学部に通って教員免許も取ったのに、教師にならないんてもったいない」と言われることもあります。

教師の道に進んでいれば大学時代に学んだことが直接的に仕事に還元されたでしょう。しかし、教師にならなかったからといって教育学部で学んだことが無駄ではありませんでした。むしろ教育実習で学んだことは、財産として今の自分を支えています。

僕の教育実習

「教育実習」と聞いて、どんなイメージを持つでしょうか?自分が学生の頃、教育実習生がクラスにきたでしょうか?中には、自分のクラスにきた教育実習生とお話ししたり、お別れの日に寄せ書きを渡したりした景観がある方もいらっしゃると思います。

教育実習には
・母校などで教育実習を行うケース
・大学の附属学校で教育実習を行うケース

がありますが、僕の大学では後者の、附属学校で教育実習が行われていました。そして、そのような付属学校では生徒たちが教育実習生に非常に慣れています。それもそのはず、頻繁に教育実習を受け入れているので、生徒たちにとってそれほど新鮮な光景ではないのです。

それは少し寂しい気もしますが、一方で附属学校の先生方は頻繁に教育実習生を受け入れ、指導しているということになります。教育実習生の指導に慣れていらっしゃる先生方が多いという特徴もあります。そのような先生方からご指導いただいたり、大学の先生からフィードバックいただいたりと充実した教育実習でした。

「学習指導案」とにらめっこする教育実習

教育実習では「学習指導案」というものを書きます。教育実習の前から「学習指導案」を書く機会はありますが、教育実習はその実践的な場となります。「学習指導案」とは、いわば授業の設計図のようなものです。実際に教師として働き始めた先生方が、みっちり学習指導案を毎回作ることはありません。研究授業と呼ばれる、他の先生方に授業を公開する場面くらいです。ただ、まだ経験のない教育実習生は学習指導案を通して授業の組み立て方を学びます。

では、学習指導案にはどのような内容を記載するのでしょうか。その一部を紹介します。(古い記憶を呼び起こしています。正確ではない内容が含まれているかもしれません。また細かいところは全国共通というものでもないと思います。)

・題材観
この題材はどんな内容で、どんなことを学ぶのに適しているのか?ということを記載します。

・単元の目標
この単元を通して、どんなことに生徒たちが取り組むのかという目標を書きます。なお、その目標は文部科学省が「学習指導要領」で定める目標のどの箇所と関連するのか?が明確になっている必要があります。

・単元の評価規準
この単元で指導したことについて、どのような観点で評価するかを定めます。

・指導と評価の計画(単元)
前述の目標や評価規準にもとづき、その単元を扱う4時間〜5時間をどのような計画で進めるのかを設定します。

・指導と評価の計画(本時)
前述の単元計画からブレイクダウンして、約1時間の授業では何を行い、いつが評価のポイントなのかを設定します。

そしてこのような項目が、ゴールに向かって整合性のとれたものになっているかという点がポイントの1つです。「バックワードデザイン」という言葉がありまして、これはかなりざっくりいうと「ゴールから逆算して授業を組み立てること」を指しています。

この学習指導案を通した「考え方」は、教師にならなかった僕にとっても重要な学びとなりました。

学んだ「考え方」とは

「学校」と「会社」、「授業」と「会社での業務」は異なるように思えますが、学習指導案を通して得た学びはどちらにも大事なものだと思いました。

目指す状態との整合性をとること
どれくらい学校の実態が伴っているかはさておき、

文部科学省が定める「学習指導要領」という大まかな教育内容や目標

学校における3年間の計画

各学年の1年間の計画

各単元の計画

授業1時間の内容

というように、抽象度の高い中長期目標から逆算して各授業は構成されるべきであるということを学びました。これは会社でも同様です。会社が掲げる中期経営計画からブレイクダウンしたものが、今日取り組む業務になっていることが理想です。例えば、今年度の戦略として掲げた内容と、今週実行しようとしている施策は整合性のとれたものになっているか?などと照らし合わせることは重要です。

事前に評価ポイントを決めること
学習指導案では「単元の評価規準」を定めるということを紹介しました。これは「実施する前に、どんな観点で評価するのか」ということを決めるということです。やはりこれも、学校に限らず重要なことです。例えば、「施策実施前に、何の数字がどうなっていたら評価がマルなのか?を決める」ということです。これが決まっていなければ評価が適切にできなかったり、遅れたりして、次の打ち手への移行が遅れますよね。

スケジュールを計画すること
学習指導案では、少なくとも単元単位でのスケジュールを定めます。また実際の学校では、学習指導案とは別に1年間のスケジュールも設定されています。1年間のゴールを達成するために、何がいつまでに終わっているのかという予定を決め、年間通じてその進捗を確認します。スケジュールを設定することが会社でも重要であることは、改めて触れるまでもないと思います。

「考え方」はどう活きたのか

社会人となって最初の職種は営業でした。サービスを契約中の顧客に対するフォローが中心となる法人営業で、わからないことが多い中、周りの方々にたくさん助けていただきながら働いていました。

ただし、「知識」や「経験」という面では先輩方に比べて不足します。少しでもその差を詰められるようにインプットもするのですが、自分がとっている行動はこれで良いのか、確かめる観点が必要だと考えました。

この時に僕が立ち返ったのは学習指導案を通して学んだ「考え方」でした。

目標との整合性
・顧客の目標に対し、自分が今回行う提案はズレていないか?
・顧客の目標に対し、自分が報告しているレポート内容はズレていないか?

事前に評価ポイントを決める
・提案している内容は、最終的にその成功可否を何で評価するか提示できているか?
・評価ポイントに対して届きそうでないことがわかった時、何をするのか?

スケジュールを計画
・提案する内容はどんなスケジュールで進めるのか?
・自社と顧客でやるべきタスクと期日が明確なのか?

わからないことばかりである中、このような観点でおかしいところはないか、不足しているところはないかを考えることにしました。できることが多くない分、こういった「原則」ともいえそうな考え方に立ち返ることによって、なんとか前進することができていました。(うまくいかなかったことも多々ありますが)

現在は営業職ではないですが、このような観点を引き続き大事にしています。そして、新たに学んだことも増強して今に至っています。

今日の学びが将来に活きるかどうかは自分次第

一見関係性がなさそうな分野でも、その根底にあるルールを活かすこと。それが自分の得意分野の1つであるということも、この少し後に気づくことができました。教師にならなかったけど教育実習の経験が活きたように、現在過ごしている毎日の学びも、将来環境やジャンルが変わっても活かすことができるかどうかは自分次第なのだと思います。

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