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なぜ、いま、日本はインバウンド(訪日観光)にこだわるのか?

上海写真

コロナウイルスで、中国経済だけではなく、日本経済も大きなダメージを受けています。
メディアでも報じられていますが、観光に関わる面だけの影響ではなく、中国(の工場)で生産をしているアパレルメーカーなど、この影響はさらに広がっていくと思われます。

2020年は、オリンピックイアーでもあり、日本政府は訪日旅行者4,000万人という目標を掲げております。昨今の状況から鑑みると、その目標達成は危ぶまれておりますが、日本の成長戦略の一つが観光であることは決して間違いではありません。

では、なぜ、日本は観光を成長戦略の一つとして置いているのかを考えていきたいと思います。

その答えの一つには、世界経済の成長です。

GDP成長率①

『世界経済は成長しています。』それだけを言うと、日本がまったく成長していないみたいに聞こえますが、実際は、頑張って維持しています。ただ、周りの国々がもっと成長しているのです。別の言い方をすると、日本は、他の国に比べて、早く成長してしまったのです。

ここで申し上げたいのは、今、成長していないことが、悪のように報じられいますが、この国土面積で、この1億2千万人という人口で、世界3位の経済大国なのです。その事自体は、非常に誇るべき事であり、世界を代表する先進国である事は、改めて申し上げておきたいと思います。

その上で、重複をして恐縮ではありますが、世界の国々が日本よりも成長率が大きいという事なのです。
世界経済という視点で、判断をしていく際に、自国だけの視点では、判断する事はできず、世界の多くの国々の経済成長と自国の成長を相対的に比較せざるをえないのが現状です。

日本のメディア、日本人の感覚としては、どうしても実質的な成長がどうであったのかという、自国内での成長度合いにフォーカスする傾向があり、他国の成長と自国の成長を比較する傾向(意識)が低いと言えます。

それは、恐らく、日本は、高度経済成長という時代を経験し、自国の成長こそが、世界経済の成長であり、他の追随を許さないほどの勢いで成長をしてきたのだと思います。
そういった経験や体験から、一昨年、昨年、今年の自国の経済成長に注目すれば事足りていたのではないでしょうか。

しかし、今現在は異なります。我々、日本国の経済成長よりも、世界の国々の方が、我々の成長率よりも高い成長率で、経済成長をしているのです。したがって、実質GDPの成長だけに注目するだけでは、日本の現在のポジションを正確に把握することはできません。名目GDPにもっと、目を向けて、他国との経済成長を比較する必要性があります。

GDP成長②

※上記図は、アメリカと中国を抜いた名目GDPの推移表です。水色の折れ線グラフが日本です。

名目GDPってなんだっけ??

今一度、確認をしておきたいのですが、「名目GDPってなんだっけ?」という方の為に簡単に説明します。※私は経済学者ではないので、あくまでも簡単に説明します。

一言で言うと、名目GDPは、『儲けの合計』です。つまり、これだけ儲かりました!という報告です。以下の説明をご覧ください。

GDP説明資料①

厳密に言えば、小麦の種が国内で…とか様々な条件定義が必要ですが、簡単に言うと、小麦農家さん、製粉屋さん、パン屋さんの儲けを足し上げていった合計値が名目GDPになるということです。

では、名目GDPが成長するということはどういう事でしょうか?

GDP成長資料②

今まで、パン1個200円で売っていたところを、パン1個300円で売ります。そうすると、儲けの合計が増えますよね。これが、名目GDPが成長したということです。なので、みんなの儲けが増える。これこそが、名目GDPの成長なのです。そして、もう一つ大切なのが、それを購入することができる家計になっているという事です。つまり、家計の消費金額も増えるわけですから、お父さん・お母さんの財布の中に入ってるお金の量が増えいてるという事です。

では、もう一度、さっきの名目GDPの成長推移の表を見て欲しいのですが、アメリカと中国、めちゃくちゃ伸びていますよね?つまり、アメリカ人と中国人のお財布の中にあるお金が増えいているという事です。

そして、日本はどうでしょうか?あまり変わっていませんよね?つまり、商品の値段に変化がないという事です。先ほどのイラストで言うと、パンの値段は200円のママという事です。

したがって、アメリカや中国の人達は、お財布の中に入ってるお金の量は増えている。日本は、物の値段が上がっていないとなれば…

中国人から見ると、日本の商品は、年々、割安になってきますよね。日本では、去年10,000円で泊れたホテルは、今年も10,000円で泊れます。これが名目GDPが上がっていない国の特徴です。そりゃあ、世界から見たら、日本って、なんかめっちゃ割安!って、年々なりますよね。

そう!だから、中国人は、日本に来るんです!これは、日本の官僚たちも当然気づいています。だから、必死になって外貨を獲得する為に、日本国はさまざまなインバウンド(訪日旅行客)対応をしているのです。

中国とか見れば日本が割安なのは分かったけど…。でも、そんなに外貨を獲得しなきゃいけない状況なの?日本は…?

下の図をご覧ください。

【日本国の人口推移表】

生産人口減少資料

国土交通省観光庁提供資料(抜粋)

理由は、生産人口が減少するからです。つまり、稼ぐ人達から減る中で、GDPを維持するのは並大抵のことではありません。当然、生産人口が減少すれば、国全体の儲ける力は弱まるはずです。したがって、日本国の名目GDPは減少していくはずです。

こういった状況下の中で、日本国が、現状の名目GDPを維持する為には、外貨獲得は、経済成長戦略の一つなのです。その事を、政府や企業だけが意識をするのではなく、日本人全体が認識したうえで、外貨獲得の重要性を考えなければ、本当の意味での成功はできないでしょう。官民一体となって、日本の経済力を維持していく為に努力していくことが必要だと思います。

さまざな国に訪問をすることが多いからこそ感じるのですが、日本は、世界の多くの国から尊敬されていると思います。その理由は、これだけの経済発展をしてきたからです。そして、諸外国への支援も十二分にしてきたと思います。だからこそ、私たちは、胸を張って日本人として世界で勝負することができます。

今までも、これからも、日本人として誇りをもって、世界で挑戦していく為に、日本の未来を一つ、一つ考えていきたいと思います。

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