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孤独のグルメ化しつつある生成AI

 さて先記事では、当面の生成AI案件は数億円以上が動くような大規模案件ではなくて、身近なところにアシスタント的に導入する形でお客様に食い込むツールとしての役割を担うことが増えそうだ… と書いたつもりだ。
 今回は、それを実現するのが実は結構大変なのだという体験記である。


自分にとって理想形の織田病院

 言ってしまえば「孤独のグルメ」のように、ちょっとしたところで感動を得るような使い方である。生成AIに100%確実なアウトプットを期待するのは難しいので、今のところはアシスタント的な使い方が有効だ。それを実現しているのが、佐賀の織田病院だったりする。

織田病院のシステム (日経xtech記事より)

 これを見るとお分かりのように、生成AIシステムは独立した存在ではない。既存システムの中に追加され、単純にボタンを一つ推すようなイメージで引継ぎ向け要約データを作成できる。看護師はそれに目を通し、必要に応じて修正する。まさに部下に資料作成を頼むようなもので、アシスタント的な使い方だ。
 もしかしたら既存システムを修正した部分も加えて500万円くらいで実現できているかもしれない。もし年間1,000万円レベルの給料だと仮定すると、一か月100万円… 月の勤務日が20日だとすると一日5万円… 資料作成コストは、手作業だと5千円くらいだろうか。運用維持費を無視した場合、1,000回ほど利用すれば、500万円という投資を回収できることになる。
 このくらいの金額であれば、ちょっと勇気が必要になるけれども、お試しとして病院側でも導入することが出来そうだ。そういう風な視点で見ても、織田病院システムの関係者には見事だと感心させられる。(それに先の記事で紹介したように、A2000だとPCIe電源などは必要ない。デスクトップPCに空きスロットが2つ分あれば、それを装着するだけで済む)

先週の事案

 さて我が身を振り返ってみると、先週の事案は「お客様に販売した機器の稼働状況を要約したレポートを提出したい」というものであった。あちこちで聞く典型的な生成AIへの期待案件だ。
 しかしこれ、相当にしんどい。自分の本職は事業企画なので、今回のアルバイトは辞退させて頂くことにした。
 なぜならITシステム管理ソフトウェアの関係者だったこともあるけれども、こういったレポートは自動作成機能として実装している。今回は自動化されていない部分の稼働ログ情報をExcelシートで手作業分析&参考作成しているけれども、そのExcelを見て、作業指示書に従って生成AIに分析レポートを自動的に作成できないかという相談だった。
 … 生成AI関係者はご存じのように、近づいてはならない事案である。
 相談元は優秀な部署で、Excelシートも作り込まれている。それでも自分は辞退させて頂くことにした。

  • 基本原則: 現在の生成AIへ100%確実なアウトプットを期待するのはNG

 生成AIはコンピュータのプログラムとして動作しているけれども、Aというインプットデータに対して、Bというアウトプットを出力するように設計されていない。Aにしてもインプット形式が指定されておらず、文書による指定である。わずかな言い回しの違いで、アウトプットは大きく異なる。
 だから生成AIからのアウトプットは、正確さが必要な場合は内容確認することが必要なのだ。今回のような場合は内容確認するということは手作業をやることと同じだから、生成AIにExcelデータを処理して貰うことは論外である。
 こういう時に一般的なのは、やってほしいことを文章形式で記述して、それを生成AIにVBAマクロや関数などで構成されたプログラムを検討して貰うことだ。もちろん生成AIが作成したものに100%完全はないので、人間がそのVBAマクロや関数をチェックする。自分の場合はいい加減なので、「出力が正しければ、とりあえずオッケー」という判定をすることもある。
 その作業指示を記述したドキュメントが、素人には理解できなかった。日本語の文章構造が分からないので、これでは生成AIに作成依頼する文章へ嚙み砕くこともできない。
 それで今回は辞退という結果になった。
 ちなみに織田病院の場合は、看護師が別看護師に引き継ぐ申し送り文書を作成する場合には、あらかじめ必要事項を箇条書きにして、「この項目を入れた内容で要約文を作成してください」といったプロンプトを作れば解決することができる。
 さて辞退案件はどのような着地点を迎えるだろうか。来週はアルバイトではなく専門家が登場する予定である。どういう展開を迎えるか… 興味津々というところである。

 ちなみに生成AIに理解できる文書を作成する場合、適当なひな型を作ってから、それを生成AIに見直して貰うといったことも出来る。だから前提条件を知らない僕は辞退せざるを得ないが、前提条件を知っている人たちが適当な文書を書き殴りながら生成AIのアシストを受けて文書を作成すれば、あまり苦労せずに作業完了させることができるかもしれない。

しめくくり

 先週の事案は、なかなか厳しいものだった。前提知識がないと理解できないから、やはり作業指示書を誰にでも分かるように内容修正するところから始まるのだろうか。なかなか実案件というのは、大変だ。
 ちなみに生成AIにVBAマクロや関数の作成を依頼すると、こんな感じの出力が返って来る。ご参考まで。

Excelで列Aに年齢を数値で入力して、3以上の行を抽出したいです。どのようなVBAマクロまたは関数を記述すれば良いか教えてください。
Windows 11 Copilot Preview版に相談した場合

 この作業依頼を、長々とした文章で全て記述すると、目的とする成果が得られる… ハズである。おそらく予算はゼロ。冒頭画像のようなパンを食事として「孤独のグルメ」をやるようなものだろうか。(意味不明)

 それでは今回は、この辺で。ではまた。

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 記事作成:小野谷静(オノセー)

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