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集まって読む。【本を気持ちよく読む方法 その3】

これまでに何回か、本を気持ちよく読む方法について書いてきました。
前回までは、本を読む時の体勢(立って読む)や、本を読む場所(コインランドリーが意外に集中できる)などについて考えてきました。

今回は「集まって読むこと」について書いてみます。
本を読むときって普通はひとりなのに、「集まって読む」ってどういうことなのか。そして、集まって読むことの意義、というか面白さみたいなものについて書ければ、と思っています。

積読合宿のこと

今年の7月の連休に長野県佐久市で行われた「積読合宿」に参加しました。オンラインの企画講座「企画メシ2021」のメンバーを中心にさまざまな場所から、たまりにたまった積読を解消すべく参加者が集まりました。
しかし、参加者同士で話をする時間やテーブルゲームをする時間が楽しくて思っていたよりも本を読む時間が少なかったこと、そして他の人が持ってきた本が面白そうで読みたい本が増えてしまったことなど、積読は減るどころか逆に増える、という本末転倒な結果になりました。

「本を読む」という当初の目的からは逸れてしまいましたが、本を媒介にしたいろんな遊びやコミュニケーションが、自然発生的に生まれたのはとても面白かったです。とくに印象に残っているのは、参加者のひとりが教えてくれた、あるお題にたいして、その場にある本の一節を使って答える大喜利です。たとえば、「大統領を怒らせた一言は?」というお題。
私の回答は「おやおや、だれかとおもったら、うんこか」(『うんこ!』サトシン・西村敏雄、文溪堂より)
…こうやってあらためて書いてみると、だいぶひどい回答です。でも、めちゃくちゃ面白かったので、またやりたい。あとは『まさかジープでくるとは』(せきしろ・又吉直樹、幻冬舎)に触発されて、自由律俳句で合宿の思い出を表現してみたり。個人的にいちばん好きなのは「500円で馬が乗れるのに」という一句(全然本関係ないですが)。

こうやって書いてみて、長嶋有さんの『ねたあとに』(真夏の山荘に集まった大人たちが、夜毎にいろんな遊びに興じる様が描かれた小説。超名作)みたいな時間だったなあ、としみじみ思い出しています。『ねたあとに』はこの合宿にぴったりな本だったのに、持っていくのを忘れていたのが悔やまれる…

今回、合宿の場になったのは佐久市にある「木馬のワルツ」という一棟貸の宿です。元々は馬事公苑の職員宿舎として使われていた建物をリノベーションした宿で、地元の左官職人さんによる漆喰壁や、地名である望月(満月)にちなんで曲線でかたどられた開口部など、その土地とのつながりがいたるところに表現されている空間はとても心地よいものでした。
この宿の使われ方は宿泊する人によって様々でしょうが、本を読むための場所としてもすごくいい、と思ったのは、腰を下ろせる場所がたくさんあることです。座り心地のよいソファや椅子、ベランダにもカウンターとスツールが置かれているのに加えて、出窓の縁や、他の部屋から少しだけ下がっているリビングへとつながる二段ほどの階段など、宿のなかのあらゆる場所が読書スペースになります。参加者がそれぞれ自分の気に入った場所で読書をする姿は「これぞ積読合宿」という光景でした。2階には個室が3部屋設けられていましたが、そのうちの1室は屋根裏部屋みたいな、ちょっと秘密基地感がある空間でした。個室で本を読むのもはかどりそう、と思いましたが、不思議とみんなリビングに集まってくるのもなんだか微笑ましかったです。



真面目に積読合宿する様子。

積読合宿については、合宿を企画してくれた春花さんのnoteでも紹介されていますので、よかったらこちらも是非!


自宅図書室をちょっとだけお披露目したこと

noteでも書いてきましたが、自宅を解放して私設図書室にしたいと目論んでいます。その第一歩として、身近な友人たちに少しずつお披露目しています。
先日、東京と熊本から3人の友人が地元に遊びに来てくれました。みなさん本が好きな人ばかりで、オンラインで集まるときにはよく本の話をしています。今回は念願のリアルでの対面でした。

地元を案内することがメインだったので、本を読む時間は少なかったのですが、ちょっとしたスキマ時間を利用して図書室の本を手にとってくれるのはとてもうれしかったです。夜はお酒を飲みながら、本の話をしたり、友人の好きなCMをプロジェクターで壁に投影したり、ここ数年は持つことが難しかった友人たちとの時間を、自分の図書室で過ごすことができたのはなかなかに感慨深いものでした。
実際にこの場所を解放するときにも、ただ本を読むだけの場所ではなくて、本を通してたくさんの会話が生まれるような場所にしていきたいと思っています。

友人が撮影した地元のローカルスーパー。友人たちの視点が面白い。

余談ですが、秋の連休ということもありホテルがとれず、友人たちには自宅に泊まってもらいました。ひとりの友人には寝室ではなくて、図書室スペースに泊まってもらうことになり、こちらとしては恐縮していたのですが、翌朝によく寝れたか尋ねたところ「大変快適だった」とのこと。「泊まれる図書室」もありではないかと考えているところです。

この旅については、遊びに来てくれた友人のmakiさん、Shokoさん(記事はShokoさんが友人とやっているeliaというユニット名義)が記事にしてくれました。自宅図書室に興味を持たれた方はこちらもご覧ください。


集まって読むこと。

ここまで「集まって読む」ことについて、ふたつの経験をもとに書いてきました。「いい読書=効率よくたくさんの本を読むこと」という考え方をすれば、集まって読むことはきっといい読書とは呼べないでしょう。でも、本当にそうでしょうか。ふたつの集まって読む経験を経て、わたしのなかでは「いい読書」の形がぐにゃぐにゃと拡張していっているように感じます。もちろん、積読の山を前に「どうしたら、このたくさんの本を読めるようになれるのか…」と呆然とすることもあります。でも、それと同時に回り道、寄り道しながらの読書も、なんだかいいものなような気がしています。そして、そんな寄り道には友人が一緒にいてくれれば、とてもご機嫌な時間になる気がします

集まって読む、ということはこれからも試行錯誤しながら続けていきたいですし、そんな読書体験を可能にするような場づくりをしていけたらいいなと思っています。

最後に、この夏の思い出の1ページを。

「おやおや、だれかと おもったら うんこか」


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