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明日は会社を休みます。

仕事が忙しくなってくると、なぜだか決まって思い出す本がある。

『明日は会社を休みます』という少女漫画である。

「思い出す」と書いたけど、実はどういう話なのかは全く知らない。

大学を卒業して中堅の書店チェーンに入社し、最初に配属されたのは東横線沿線の店舗だった。20代から30代の女性が中心だった客層に合っていたのか、この漫画はよく売れていた。

当時はとにかく働くことがいやだったから、新刊が発売されてレジで見かける度に「こちとら汗水垂らして働いているのに…」と謎の憤りを感じていたものである。読んでないけども。

ほかにも繁忙期に思い出す本は何冊かある。
『とにかくうちに帰ります』(津村記久子、新潮社)はそのうちの一冊。
これはちゃんと読んだ(?)本なので、少しだけ紹介すると6編の小説が収められた短編集で、「とにかくうちに帰ります」は豪雨によって帰宅困難におちいった人々の一夜を描いた表題作である。津村さんの小説には、わたしたちの日常と地続きの、冴えなくて取るに足らないような時間が描かれている。

残業が続くと、ぶつぶつとこのタイトルを呟いている。
とにかくうちに帰ります…とにかくうちに帰ります…

もう一冊。
『はたらかないで、たらふく食べたい』(栗原康、タバブックス)
タイトルからして痛快で素晴らしい。アナキズム研究者のエッセイ集で、「働かざる者食うべからず」という我々の常識を真っ向から否定してくる。働かないと食べられないなんて、誰が決めた!?

ところで、この記事を書くために今まで挙げた本を調べ直していたら、重大な過ちを犯していることに気づいた。

『明日は会社を休みます』ではなく、『きょうは会社休みます。』だった。
「明日」じゃなくて、「きょう」。
当日欠勤なんて上司に怒られやしまいか。
憤りを超えて、なんだか心配になってきた。








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