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組織の多様性を生かすメタ認知力

 マネジメントは組織を活性化し、個人の能力を引き出し、事業の未来をつくるやりがいのある仕事です。反面、人と向き合う難しさや多様性を受け入れる人間力が問われ、学べばすぐに実践できるという類のものではないのが悩ましいところもあります。


マネジメントとは

ドラッカーのマネジメント

 マネジメントのManageという言葉の語源は、馬の調教を意味するイタリア語だそう。ちなみにコーチは目的地まで運ぶ馬車という意味のハンガリー語。太古の移動技術に関する言葉から派生してビジネス用語になっている点がとても面白い。まさに人の営みという感じがしますね。
 
 マネジメントという言葉が現在のビジネスシーンで多用されるきっかけは、ドラッカーの「マネジメント」の影響だと言います。
 彼は、人を経営資源として捉え、事業継続のための組織や力学、管理のあり方に注意を払い、その結果として個に向き合い、個の強みが生かされる環境を整えることを考えました。まさにビジネスの現場に通用する多くの視点を含んでいると思います。


メタ認知

 組織においてマネージャーという立場になる人は、プレーヤーとして結果を出し、認められて自身のチームを持つ形で、そのポジションに就くことが多いと思います。
 しかし、「名プレーヤー名将にあらず」的な言葉がよく言われるように、必ずしもプレーヤーとして優秀な結果を収めた人が優秀なマネージャーになるとは限りません。そのポイントは視点にあります。

 プレーヤーは結果を出すために自身が努力し、スキルアップし、強みを磨いていく。まさに自分と向き合っています。
 一方、マネージャーは配下のメンバーや、関係する組織を動かすために、相手の立場に立ち、相手の心象にどう影響を及ぼすかを考える必要があります。この自分の言動が相手にどう写っているかを捉える「メタ認知力」こそが、マネジメントにおいては重要な能力となってきます。

 「メタ認知」というのは、メタ(超越・高次)な認知ということで、自身の認知している様を客観的に捉えるという意味の心理学用語です。ビジネスの現場では、マネージャーという役割を全うするために配下に動いてもらうための言動を行います。自身が相手にどう写っていて、その結果、期待した行動を引き出せるかどうかはこのメタ認知の能力が影響してきます。

 相手が一人でも難しそうな話ですが、実際には自身のチームや他チーム含めた組織の空気感と向き合うことになります。


早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け

早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け

 アフリカのことわざで「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」というものがあります。ビジネスの場面では、事業継続性を考えた時に、組織の多様性が重要という文脈で度々用いられます。

 例えば、マネージャーと似たタイプのメンバーを集め、同じような価値観のもと一体感を持って事業推進をすることは、経験の浅いマネージャーでも比較的実践できます。このフェーズでは、メタ認知力が低くても十分通用します。
 一方で、このようなチームは変化への対応力に欠けるのも事実。遠くへ行く=継続して結果を出し続けることを考えると、組織の多様性が重要になり、それら多様な人材をまとめるマネジメント力が必要になってきます。

 また、管掌する組織規模が大きくなっても同様に多様性が高まり、マネジメントの難易度が高まってくることになります。

 帆船で目的地を目指すには役割分担が必要です。水先を判断する人、帆を上げる人、舵を切る人、それぞれの役割があって、それらが連携していなければなりません。
 水先人は地理や海流・天候に関する知識が必要。帆を上げ下げするには体力がなくてはならない。舵を切って思い通りに船を操作するには、構造と揚力に関する知識と経験が不可欠といったように、それぞれの役割に専門性があり、経験が蓄積されています。それはまるで、会社の営業や開発、経理といった部署のようです。

 同じ会社でも立場が違うとものの捉え方が異なることがあります。例えば、営業は顧客との大口の取引を追い求める。一方、開発は大きなプロジェクトになると期限までに要件を満たし切れるかを考えるでしょう。経理は取引が大きくなるほど、運転資金や与信リスクのことを考えます。

 それぞれの役割によって同じ状況でも見ている側面が異なり、それらが連携することで、良い仕事が実現されていくわけです。


虫の目・鳥の目・魚の目

虫の目・鳥の目・魚の目

 専門性を抜きにしても、多様なものの見方というのは重要です。「虫の目、鳥の目、魚の目」というのもよく耳にする言葉です。虫は近くから物事を細かく捉え、鳥は上空から俯瞰的に見渡し、魚は流れを掴み、先を見通します。

 それぞれの役割に特有のものの見方もありますが、一人一人が多様なものの見方をできると組織内の相互理解が広がり、柔軟にビジネスを展開することができるようになってきます。

 なによりマネージャー自身が多様なものの見方をすることが重要ですが、その上で組織には多様な人がいて、それぞれの立場からものを見ていることを知り、更には自身の言動がそうした相手にどう写っていて、どのような影響を及そうとしているのかを認識することが重要です。こうした視点に立って、マネジメントを行なっていく必要があるわけですね。


新人マネージャー竜野が思うこと

 今まで、変えるべきは自分の振る舞いだけでした。“マネージャー”になると急にそのステージから押し出されて、配下や周囲のメンバーに影響を及ぼさなければならなくなります。

 環境によっては、自分の成功体験をよりどころにメンバーに働きかけることで成果に繋がることもありそうです。ただ、成長し続ける会社にマネージャーの役割でもって貢献しようとすると、会社組織の中で自分を相対化することは避けて通れないだろうなとも思います。

 やるべきことは山ほどあるんだと思いますが、メタ認知力を意識して鍛えることは欠かさないようにしなきゃと思いました。状況に合わせて視点を変えられるスキルは、組織人として様々なシーンで役立つ気がします。


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