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自己肯定感でレジリエンスを高め、事業の荒波を乗り越えていく


自己肯定感とは

 自己肯定感とは、ありのままの自分を受け入れ、その自分に価値があると感じられること。仕事のみならず、生きていく上で大事なお話ですねー。自己肯定感が高いと、ポジティブで、主体的に行動でき、失敗を恐れずにチャレンジすることができます。ぜひとも高めたいポイントです。

 自己肯定感は、「自己受容」と「自己価値」によってもたらされます。ありのままの自分を受け入れることを「自己受容」といい、その自分自身に価値を見出すことを「自己価値」と言います。
 
 自己受容は、自分の良い面も悪い面も、ありのままに受け入れることです。例えば、結果を出せるから自分には存在する意味がある、といった条件付きの状態は自己受容に当たりません。結果が出せない自分も自分として受け入れられる、そういう状態が自己受容です。その背景には、過去に無条件に受け入れられ、良い面も悪い面も向き合ってもらってきた経験が強く影響しています。過去だけでなく、未来に向けてもメンバーを受け入れていくことによって自己受容を高める支援をしていきましょう。

 自己受容がありのままに、全体を受け入れる一方、自己価値は多面的です。人はいろいろな側面を持っており、それぞれに価値があります。例えば、仕事でのパフォーマンスが高くリーダーシップが強いという側面を持ちつつ、プライベートでは、周囲に気を配り、盛り上げ役という側面を持っていたりします。そのそれぞれの側面ごとに自己価値は存在します

 他方で、仕事におけるパフォーマンス重視の姿勢を、効率優先で多様性の無いあり方だと否定的に見られることがあるかもしれません。そのようなときも、その人のすべてが否定されるような話ではなく、一つの側面において否定的な意見がありつつも、他の部分においては依然価値があり、何より自己受容は担保され続けると捉えることで、自己肯定感を毀損することなく、軌道修正していくことが可能です。

 このように、マネージャーは、メンバーを人としてはありのままに受け入れ、役割に応じてポジティブ/ネガティブなフィードバックを行うことで、その価値を高めるように関わっていきます。結果が出ていればオールOK、出てなかったら人格否定のような上司がたまにいますが、そうした雑なマネジメントは今すぐやめましょう。


内発的プロセスと外発的プロセス

 自己肯定感が高まるプロセスには、内発的なものと、外発的なものがあります。内発的な報酬による自己肯定感は、仕事自体を楽しみ、そこから得られる満足感によって得られるものです。

 一方で、外発的な報酬による自己肯定感は、目標達成による昇給、昇進や、上司や周囲に誉められた、認められたといった結果に得られるものです。昇給や昇進は汎用性が高く、特にお金は代替性もあるので、強い自己肯定感が得られますが、長期的に依存するようになるとネガティブな影響もありので注意が必要です。

 内発的プロセスは、本質的で、持続可能で、自身でコントロールができるので、自己肯定感を高く保ち続けられるのが最大の秘訣と言えます。一方で、外発的プロセスは、環境に影響するため必ずしも報酬が得られるとは限りません。例えば賞与は事業コンディションによって増減する原資を相対評価によって提供しているので、自身の価値とは必ずしも連動しません。例えば、前回以上に努力をしたのに、賞与額が前回以下だと認められていない、報酬が足りないという感情に囚われてしまい、視座が下がり、本質的な成長の機会を見失っていきます。

 メンバーの努力を引き出すために昇給・昇進を約束するマネージャーは毒です。にんじんをぶら下げて走らせているようなものです。メンバーの頑張りに対しては、その内容にしっかり向き合い、相手のためになるポジティブフィードバックで応えるべきで、昇給・昇進は副次的な位置付けにするのが良いと思います。


役割の仮面と本質的な自分

 「成長はすべてを癒す」とよく言われます。事業が成長している間はマネジメントを意識しなくても、職場は活気付いて、メンバーの士気も高く、積極的なチャレンジを行うものです。しかし、事業は景気に連動して波を打つものなので、成長が停滞し、困難に直面するときがきます。そのときになって、慌ててマネジメントを強化しても、苦戦の要因は何なのか?と内向きな思考が蔓延し、関係の質が低下し、組織は疲弊していきがちです。

 私たちは、良い面も悪い面も無条件にすべてを自己受容すべき素顔と、役割に応じて価値を高め、結果に向き合い調整をしていく自己価値の仮面を持っています。自己受容があるからこそ、私たちは多面的な役割の仮面を持つことができます。特定の役割なので、たとえ失敗したとしても、役割の限りにおいて反省することで、全人格否定を免れ、レジリエンスを保つことができる。レジリエンスとは、困難な状況を柔軟に乗り越えていける精神的な回復力のことです。

 うまくいっていればオールOK、結果が出なければ人格否定、という雑なマネジメントに陥らないためにも、うまく行っているときにメンバー一人一人と向き合い、内発的報酬を一緒に考えていくことが大事です。そして困難な局面においても、その全人格が否定されるわけではなく、特定の役割における改善に取り組んでいくことで、モチベーションを下げずに力強く成長していくことができます。

 こうしたきめ細かいマネジメントを行うことで、個人の自己肯定感は高まり、ポジティブで主体性のあるチームが形成され、苦難にあってもレジリエンスの高い組織でいることができます。事業は、良い時も悪い時もあります。荒波を共に乗り越えていくことで絆が深まり、同じ釜の飯を食った仲間は家族のような関係になっていきます。そうした仲間と共に高みを目指してこそ事業の醍醐味を感じられるというものです。


後輩 竜野が思うこと

組織におけるメンバーの役割と、本人にとって心躍ることや大切にしたいことを、どのように切り分けてバランスをとっていけばいいだろうかと思いながら、答えを持てずにいました。

結果を基準にコミュニケーションするのは、マネージャーの立場からだと至極正しいことのようにも思える一方、報酬や賞賛がメンバーの行動の根拠になってしまうことの危うさも想像できます。メンバー一人一人が行動意欲の源泉を自分の中に持っておくことは、来たる順風満帆でない状況を乗り越えるために必要不可欠なんだと思います。

メンバーと一緒に本人の内発的報酬を明らかにしていくことは、きっとメンバーの本質に向き合い、存在そのものを肯定することにもつながるんだと思います。組織をヘルシー且つ持続可能な状態に保つには、やはりメンバーへの興味を絶やさず、時間とエネルギーをかけることが欠かせないようです。


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