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1000万をどう使う?N/S高生徒会はこれからの生徒会の未来像になるか(前編)


「N/S高、2万人の高校の代表となる「生徒会」を設立
10月より会長、各高総代表などの役員選挙を開始
本当に生徒が決められる生徒会を目指す」

学校法人 角川ドワンゴ学園 N高等学校(以下、N高)、S高等学校(同S高)は、かねてより生徒から要望が多かった生徒会をN/S高合同で設立することをお知らせいたします。N/S高の生徒数は両校合わせて22,267名(2022年6月30日時点)となっており、生徒会はこの約2万人の生徒の代表となります。
(中略)
生徒会も、生徒にとって卒業後の社会生活で本当に役立つ経験ができるように、日本でもっとも生徒自身が決められる生徒会となることを目指します。例えば、生徒会の権限で自由に使ってよい予算として年間1,000万円を用意します。これを特定の同好会の活動支援金として分配したり、卒業式へのゲストの招待、文化祭ゲストや追加企画の実施、さらには新たな独自イベントの開催、全国にいる生徒会役員が集まるための旅費交通費や宿泊費、会議中の食事費などといったように、使い道は生徒会で決めることができます。

2022/10/11 プレスリリース N/S高、2万人の高校の代表となる「生徒会」を設立

2022年10月に発せられたこのプレスリリースは多くの生徒会役員に衝撃をもたらした。二万人という桁違いの規模、全国を股にかけたまさに前代未聞の生徒会が誕生したのである。
また生徒会権限で使える予算が1000万というのもまさに規格外である。多くの学校で生徒会費は計500~2000万ほど集められるものの、実際大半が部活動費や文化祭実行費として使われ、生徒会の権限で支出できる費用の幅はごくごくわずかである場合が多い。

「日本でもっとも生徒自身が決められる生徒会」

鳴り物入りで誕生したN/S高生徒会。それから一年が過ぎた今、実情はどうだろうか。N/S高のみなさんにお話を伺った。


インタビュアー:桃井晴崇(生徒会活動振興会 編集長)
インタビュイー:
第1期役員・石井さん(会長)、山代さん(近畿地区代表)
第2期役員・石田さん(会長)


巨額の決裁権限、N/S高の意図は?

1000万円という巨額の決裁権限を実際に持った生徒会を作るに至ったN/S高。その意図は何だろうか。広報の方は「日本で最も生徒自身で決めることができる生徒会」であることをあげた。様々なプロジェクトを実施していくことを通じてそれを実現するための要素として、1000万という異例の決裁権限が生まれたのだ。
そんな生徒会は高校生の目にどう映ったのだろうか。第1期役員のお二人に、その時の所感を聞く。

役員が見る「新生・N/S高生徒会」

1期会長・石井さん「そうですね、生徒会の発足を望む声がかなり多かったので、ようやくできたのかという感じでしたね。しかもこのような、予想を裏切ってくるような大きな規模での生徒会ができるってのは、最初聞いたときは率直にびっくりしました。」
1期会計・山代さん「まず驚いたのは1000万円が予算であるということで、それが何にどれぐらい使えるのかも想像がつかず、生徒会ができて、どう私達のN高・S高生活が変わるのかっていうところは不安と期待が入り混じったような感じでした。最初は全く立候補する気はなかったので、どんな人が出るんだろうなぁ、どんな公約が出るんだろうなぁとちょっとウキウキしながら、立候補者一覧を見ていた記憶があります。」
生徒会ホームページにも、「生徒会の審議を経た用途であれば、自由に使用できる。」とあるが、実際に当選して、活動をやっていくにあたって、この1000万の決裁権限は運用上どの程度の自由度があったのだろうか。石井さんは「基本的にほとんど自由」と語る。
石井さん「この金額1000万円の自由度に関して言えば特にこれは駄目、あれは駄目っていうのはなく、基本的に生徒で決めていけるようになっています。
生徒会費としての徴収があるわけではなく、学校の決裁権限が1000万円分生徒会に移譲される、という形でしたので、学校の決算の規定とか、稟議のフローに従うことにはなるんですけれども、基本的に実際に生徒会が使用していく上で予算が使用できないとか、これは駄目だとか、学校側からそういうふうに言われるってことはなかったです。」

決裁のフローについてさらに伺った。
石井さん「まず生徒会の中で予算を使う際に合意をまず取り、その後顧問の先生から支出の方に関してのチェックが一旦ありまして、そこから学園の中のこの決済の稟議を通して、そこで許可が下りれば、学園側が支払いをするっていう形になります。しかし実際に縛り付けが厳しいものではなく、社会的に見てよほど不適切な支出でなければ、基本的に何でもできるんじゃないかなという感じがします。」
生徒会で各プロジェクトの実施計画、どれくらいの費用が掛かるのかなどを審議し、生徒会担当の職員に相談。
職員は企画を実施する上で予算の見積もりが適切なものなのか、アドバイスするという流れでサポートしている。
実際の企業同様、あるいはそれよりも、弾力的な予算運用が図られているようだ。


多くの学校では年5000円から10000円ほど生徒会費の徴収があり、そのお金が生徒会予算として活用される。私が通っていた高校も、月1000円×12か月×約1250人で1500万ほどの生徒会予算があった。しかし実際これには部活動費や大会参加費、文化祭の運営費が含まれ、実際に生徒会が支出できる費用はないか、あっても数万程度であることが多い。
N/S高では生徒会費という形で費用徴収があるわけでなく、角川ドワンゴ学園の予算1000万分の決裁権限が委譲される形だ。しかし一から使い道を考えられる予算が1000万というのはまさに異次元である。
役員の皆さんに、実際にどんな支出があったのかを聞いた。

実際にどんな支出が?

山代さん「私の記憶にすごく残っていて参加者の方がすごくたくさん参加していたのは、「歌舞伎鑑賞ツアー」です。
役員に芸人の方がいたのですが、その方が歌舞伎が好きだったんです。それで歌舞伎座で一等席でご飯を食べながら歌舞伎を見て、その後歌舞伎について語り合うワークショップをしました。それがすごく人気でそれで生徒会の知名度が上がったように思います。」
またN/S高・N中等部の合同文化祭文化祭「磁石祭2023」ではステージにゲストを呼んだ。
「磁石祭のときに、そのときは、どんなゲストに磁石祭に来て欲しいかアンケートを取って、それでオープニングステージとエンディングステージに芸人の宮迫さんをお呼びしました。来てくれて嬉しかったとか、楽しいものになった、ステージがあるから行こうと思ったっていうお話もお聞きした反面、本当にゲストにお願いするのが適切なのか、金額を払うことが、生徒の利益に繋がっているのかっていう意見をいただきました。
昨年度の磁石祭は一番探り探りの時期だったので、だいぶ難しかったように思います。」
またほかにも、「ネットの高校」の特色を生かした企画が行われた。コメンテーターのひろゆきさんを呼びディベート対決をしたほか、役員内でやっていた企画審査会をステージの上で開催した。プレゼンターの生徒3人が企画のプレゼンテーションをして、生徒会がどの企画を採用するか決めた。それにより運動会の企画が実現し、実際に2023年10月東京で開催された。
石井さん「アオハル体育祭という名前で、通信制高校で体育祭ってなかなかないと思うんですけれど、皆さん本当に盛り上がっていました。」

ニコニコ超会議

磁石祭は、N/S高の設立母体のドワンゴが主催するイベント「ニコニコ超会議」内で行われた。N/S高生徒会は、そんなニコニコ超会議で磁石祭ブースを飛び越え活動した。実際どのような反響があったのだろうか。
石井さん「自衛隊ブースがありましてそこで私が生徒会代表というか、N高を代表して、現役の自衛官と匍匐前進対決をしました。あとは超会議に官房副長官がいらっしゃいまして、磁石祭実行委員長と一緒に、官房副長官とのフォトセッションも回りました。」
山代さん「ひろゆきさんとのディベート対決は一番盛り上がっていて、他のブースから『ちょっと人が多すぎないか』といわれるくらいには磁石祭ブースに人が集まって、大人気でした。」

「ものづくりコンテスト」とその反響

2期生徒会長・石田さんに、一期の企画で一番印象に残った企画を聞いた。
石田さん「1期生徒会が活動していたころは、入ったばかりの1年生で、あまり生徒会の活動を知らなかったんです。その中でも印象に残っていたのはものづくりコンテストです。コンセプトとしては、今まで作品を出してみたいけど出せなかった生徒、例えばイラストを書いてる方だったりとか、アニメーション作成をしてる方々がコンテストに応募することを後押しする企画。それが印象に残っています。」

手探りの中、必要とされている「生徒会」とは何かを追い求める生徒会。後編では通信制高校の生徒会活動の日常と、今後の展望を伺う。

【取材】桃井晴崇(生徒会活動振興会編集長)


    


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