ワタクシ流業界絵コンテ#01

 アニメについて書いて下さい、と言われました。曰く、「アニメ制作者の日常、仕事ぶり、人的つながりを一般読者、主に放送関係者向けに執筆していただければ──」 最近、方々でアニメについて語られるようになりましたが、自分が語る側に回ろうとは何ともはや。パソコン通信や同人誌などで細々とファンの方達が「この作品、面白いよね」などと語り合っていたのは今は昔、ついには大新聞で「アニメとは世界に通用する日本文化の一つ」とおっしゃる方も出てきました。これも宮崎駿さんをはじめとする諸先輩方のおかげです。アニメを見て育った人たちが大人になり、親になり、「アニメも結構オツなもの」として観て下さっているからこそ、以前に比べてはるかに〝作品〟として評価していただけているのだと思います。
 ちなみにここでいう〝アニメ〟とは毎週放映されるTVプログラム用に制作された20分前後のフィルムのことです。人形や切り紙を用いたりするアニメーションもありますが、僕らが作っているのはまず納品やら放送コード、スポンサーの思惑などをクリアしたうえで、面白いものが出来るといいよねという〝商品〟としてのTVアニメです。だからと言って僕らアニメの現場の人間は皆根っからの商売人なのかというとそういうわけではなく、やはり映像に関わる人間、絵に関わる人間としてのコダワリ、俺だってモノツクリしてるんだぜ、という自負があります。昔のアニメは良かった、テーマがあった……過去のアニメを熱く語る方々は本放送(あるいは再放送)当時、そういった先人たちの思いを子供ながらにも感じ取っていたのでしょう。
「それに比べて今のアニメは面白くなくなった」
 そういう声は昔からよく聞きますが、実際問題アニメの視聴率は5年前に比べると軒並み低くなっています。夜の7時はすでにアニメの時間ではなく……時代の趨勢だといえばそれまでですが、一方、アニメ自体の需要が高まっているのは『ポケモン』『もののけ姫』等、劇場アニメの大ヒットにも明らかです。21世紀(といっても来年)のデジタルTV放送、多チャンネル時代に向けて、現場では新番組を着々と準備しています。僕も実はそのうちの一人だったりします。業界に入って12年、監督と呼ばれるようになってまだ6年目──子供時代に観る側だったのが作る側に回った初めての世代の一人でもありますし。
 とはいえ、僕は自分の作品を面白くするにはどうすれば、とかいいネタないか、とか自分のことしか考えていないのでアニメ業界全般を俯瞰する連載など出来そうもありません。あくまでも僕の周辺の、僕の目から見たアニメいろいろヨシナシゴト的エッセイになるのは必至でしょう。それはそれ、肩ひじ張ったものにはならないと思いますので、これからしばらくの間よろしくお願いします。
(というわけでつづく)

NHK出版『放送文化』2000年4月号掲載


読んで下さってありがとうございます。現在オリジナル新作の脚本をちょうど書いている最中なのでまた何か記事をアップするかもしれません。よろしく!(サポートも)