ワタクシ流業界絵コンテ#06

 前回、三題噺で企画書を作ることになったところまで書きましたが、実のところ三題噺自体は大変なことでも何でありません。学校の論文試験で何とか赤点を取らないようにあれこれ苦心して解答用紙を埋めた経験がおありの方ならば、大抵の場合何とかなるかと思います。実際に企画書を作ってみてわかるのは、作品全体を見据えた上での“狙い”〝テーマ〟〝売りどころ〟をいかにアピールするか、或いはその逆に自分が描きたい要素を作品に盛り込んでいくためには作品の骨格をどのようにすればよいか? つまり立体的に作品を捉えるシミュレーションになる、ということです。ただ漠然と「僕にはやりたい作品がある」「僕の頭の中には素晴らしいアイディアが渦巻いている」と思っているだけでは只の妄想に過ぎません。企画書という形で現実化してあげた上で、それが本当に素晴らしいものなのかどうか、客観的に吟味するトレーニングするのも必要なのだと思います…というようなことをあらためて書くのは『放送文化』をお読みになられている方々ならば言わずもがななことでしょう。が、TVアニメの演出家というものは、撮影作業用の素材出しであるとか原画のチェックとかの実作業が曲がりなりにも出来るようになったら毎週50本放映されるシリーズ群の奔流に叩き込まれてしまいます。作業はすれども演出は出来ず、そんな状態でキャリアを積んでいく人も結構いるのが実状です。何十本も企画書を書いたわけではありませんが、そういった機会をまず最初に与えてくれた会社のエライヒト達には感謝をしなければなりません。
 さて、話は演助時代の三題噺企画に戻ります。幸か不幸か、企画書の原版もコピーも行方不明なのでお見せできませんが、結局以下のような形でまとめ上げてプロデューサー氏に提出しました。

 企画書『ようこそ!おムコさん』

 大まかな内容としては──

 入りムコを迎えたネコの一家が毎回舞台設定を変えて、時には時代劇、時にはファンタジー、そして時にはご町内コメディーを繰り広げるファミリー向けアニメ。

 きっと今読み返すと至らぬ所ばかりで赤面必至な代物なのでしょうが、ヘンなコト考える奴だなぁ、と目を留めて頂けたのでしょう。何本か企画書を書いた後に、某ビデオ作品の演出をしたまえ、とプロデューサー氏に言われました。直接採用はされなかったのですが、映画会社のプロデューサーが「あの企画書を書いた人を──」と推薦して下さったそうです。

「で、何をやるんですか?」
「原作ものだよ。ギャグ漫画」
「タイトルは何ですか?」
「がきデカ」      (つづく)

NHK出版『放送文化』2000年9月号掲載


読んで下さってありがとうございます。現在オリジナル新作の脚本をちょうど書いている最中なのでまた何か記事をアップするかもしれません。よろしく!(サポートも)