ワタクシ流業界絵コンテ#05

 演出になった切っ掛けは人それぞれでしょうが、僕の場合は「なりたいので(演出に)して下さい」と以前いた制作会社のエライヒトに訴えたのが実を結び……とエラく乱暴な展開なのでその顛末についての詳細は書きません。その人は良く出来た方だったので、無礼な直訴に怒ることなく、「じゃ、これをやってみて」とオリジナル作品の企画書作りを任せてくれました。
 任せてくれたのは良いのですが、企画書というものはどのように書くのか皆目見当が付きません。社内のプロデューサー氏に尋ねると、「それを考えるのが君のこれからに繋がる」とわかったようなわからないようなお説教をされました。ちょうど他の会社が作った企画書が来ていたので、参考に見せてもらうと、これがあんまりイケてない。文章も胡散臭いし、テーマも型通り。型通りなのはよいのですが、それをどのような戦略を持って描いてゆくのかが何も書かれていないのです。実写と違い、アニメの場合は「どのような絵で」「どのような世界観で」というところが大きなウリになります。したがって極端な話、魅力的な世界観を描いたイラストが数点あれば殆どオッケーなのではないか、そう思って先ほどのエライヒトにこう言いました。
「この企画の絵的なイメージってあるんですか?」
「ないよ。そこら辺をサトー君が文章で作っていくんだよ」
「ガチョーン……(心の声)」
 そりゃ、オリジナルの作品を一から作れというのですから何もあるわけがありません。原作モノの企画書の場合、このマンガ(或いは小説)がいかに面白く、魅力的であるかを書けばいいのですからはっきり言って楽です(その企画を通すための努力は別問題です、念のため)。オリジナルの場合は、まず世に出ていないが故に、企画書がその作品のいわばデビューになるのです。商業的評価が全くなされていないものを番組に仕立てて電波に乗せるというのははっきり言って投資です。お金を出すスポンサーにしても代理店にしても、より確実性を求めるのは当然のことです。確実性よりも革新を──そんな期待を抱かせる素晴らしい企画書を作れる人はそう滅多にいません。最近ではゲームキャラや他メディアと連動した〝オリジナル〟作品が目立ちますが、それらもある意味原作モノと言えるでしょう。
 さてさて、一からといっても、お題と大まかな方向性だけは出されています。気を取り直した僕は、それらをまとめて紙に書いてみました。

 ネコのファミリードラマ
 婿養子
 シチュエーションコメディー

 見事な三題噺です。これらから〝原作〟をひねり出さなければいけないわけですが続きはまた来月!※

NHK出版『放送文化』2000年8月号掲載

※今週末に続きの9月号分を公開します。

読んで下さってありがとうございます。現在オリジナル新作の脚本をちょうど書いている最中なのでまた何か記事をアップするかもしれません。よろしく!(サポートも)