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小編 『泡』④

 なにが悪かったんだろう。わからない。どこに行きたかったんだろう。わからない。どうなりたかったんだろう。…わからない。恋人は去った。
 家に荷物を取りに来た日、「今だって──」「電話──」「──ったから」と別れる理由を滔々と話していた、はず。わからない。わからない。わからない。
 わからないは、どうでもいい。と一緒だ。
 …どうでもよかったのかな。わからない。

 今日は最高気温39度の超猛暑日らしい。だけど暑い日こそ食べたくなる。近所の中華屋に行くことにした。地球が終わる前に。
 うっとうしい汗を拭いながら店内に入ると、冷えた室内の空気が汗を落ち着かせる。カウンターに座り、いつものを注文する。
 麻辣タンメンを啜る。あー辛い。紹興酒を、氷の入ったグラスに注ぐ。するするする、と茶色の液体が氷を滑り降りる。グラスを取ろうとする手が体の熱さで微かに震える。
 ガララ、扉が開く。ザッサッザ、草履の音が入ってくる。「いらっしゃい」とおばちゃんが声を掛ける。
 サッサッザ、2つ隣で音が止む。
 紹興酒を一口ぐっと飲み、ほーっと息を吐き出す。
 箸を持つ。…あれ?この匂い。

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