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【中年の危機を生き延びる】(18)「みんな神様」だと思う

人は、人生の中でいろんな人と出会いますが、できればいい人とだけ出会いたいし、気の合う人とだけ一緒にいたい、と思うものではないでしょうか。私自身もそうです。

けれどもそうならないのが人生の妙で、必ず「いやな人」とも出会いますし、「気の合わない人」と時間を共にすることもあります。そんな時、私は「ツイてないなあ」とか「早く離れたいなあ」などと、ネガティブな思考にとらわれてしまっていました。

しかし「中年の危機」を経験したことで、こう考えるようになったのです。

「この人たちは、実はみんな〝神様〟なんじゃないか」と。

なぜそう思ったかというと、要するに自分に自信を失った結果、これまでの「傲慢さ」を思い知らされ、「強制謙虚モード」に突入したのです(笑)。そしてこの「強制謙虚モード」の行き着いた先が、「実はみんな神様」という考え方です。

「自分を下にする」だけでは飽き足らず、「他人を上にする=神にする」ことによって、さらなる「謙虚さ」を追求しようとしたのかもしれません。我ながらアホっぽい発想です(笑)。

一種の思考実験のようなものとも言えますが、こう考えれば、自分にとってネガティブな出来事がなくなるような気もしました。つまりこういうことです。

たとえば、自分に対して攻撃的な人が職場にいたとします。これまでなら、「あの人さえいなければ……」とネガティブな気持ちが湧いてきたと思います。しかし、その「攻撃的な人」が、実は「神様」だったとしたらどうでしょうか。

「え、神様が何でわざわざそんなことを?……俺に何を伝えようとしてるんですか?」

となるのではないでしょうか。ただの嫌がらせのためだけに、神様がそんなことをするはずはないのです。そこには必ず「意味」があるはずで、こっちはそれを読み取らなければなりません。

「何であんな人が同じ職場に……。そうか!そうやって俺を嫌な気持ちにさせることで、〝こんな会社はとっとと辞めて、次の場所に生きなさい〟というメッセージを伝えようとしてくれてるんだな!ありがとう!」

という具合です。私は実際にそう受け取って、別の会社へ移ったことがあります(笑)。それが結果的に良い選択になったので、この考え方がますます信憑性を持つようになったのです。

もちろんその「意味」の受け取り方はさまざまでしょう。元気がある時だったら、「なるほど、〝コミュニケーションスキルを磨く修行しろ〟ってことっすね!じゃあ、うまくやれるようにがんばってみるか!ラジャー!」となるかもしれません。

この考え方のヒントのひとつになったのが、荒井由実の「やさしさに包まれたなら」という曲の歌詞です。映画『魔女の宅急便』の挿入歌としてご存知の方も多いかもしれません。

♫やさしさに包まれたなら きっと
 目にうつる全てのことは メッセージ

この歌詞のように、「目にうつる全てのこと」を(神様からの)メッセージとして捉えられれば、世界の見え方は一変するに違いありません。

さらに言えば、この歌詞では「やさしさに包まれたなら きっと」→「目にうつる全てのことは メッセージ」という順番になっていますが、実は逆も成立するのではないでしょうか。つまり、「目にうつる全てのことは メッセージ」と感じられることで→自分の人生が「やさしさに包まれ」る。逆もまた真なり、ということかもしれません。

あと、これは完全に余談ですが、ちょうどこの考え方を発見した頃、新しい職場で短期派遣をすることになりました。出勤すると、フロアに座席表が貼ってあり、自分の席を確認しようと見てみたのですが、そこに書かれていた名前に衝撃を受けました。

何と、私の右隣の席に「神」と書かれているではありませんか。

「神」の隣で仕事をしている自分を想像して、一瞬頭がクラクラしました。確かに「みんな神様」と思うようにしてはいましたが、まさかの「本人登場」とは……。

ドキドキしながら席に座っていると、やがて私と同い年くらいの女性がその席に座りました。

「この人が……神!?」

恐れながらお名前を伺ってみると、その人は「カミ」ではなく「コウ」さんでした。初めて出会った苗字だったのですが、インターネットで調べてみると、「神」(じん/かみ/こう/かん/かなえ/しん/みわ/こお)さんは全国でおよそ13,500人ほどいらっしゃるそうです。

実際どう見ても普通の人間で、とんだ「神違い」でした。

「なんだよ!まぎらわしいな!」と思いましたが、話してみるといい人で、しばらくするとランチをご一緒するようになりました。

そこで私の離婚のこと、借金のことなど、いろんな相談に乗ってくれ、傷心しきっていた私にとってはまぎれもなく〝神〟だったのでした。

それはさておき、このように「みんな神様」と思っておけば、この「中年の危機」にも何かしらの意味を感じられるのではないでしょうか。今回の「強制謙虚モード」もそのひとつですが、要するに「今のままの生き方じゃダメだよ」という、神様からのメッセージだったと思うのです。

自分の身近にいる親、友人、恋人、赤の他人、自然、さらにはさまざまな出来事など。それら全てに「神」を見ることができれば、私たちはもう人生に迷わなくて済むのかもしれません。

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