vol.1合気道×不器用さん

 今回のブログテーマは、「不器用さん」です。私自身が不器用で、生きていくのに精いっぱい、という感じなので、同じような思いをされている方にぜひ読んでいただければ嬉しいです。
 まず私が合気道を始めたのは高校生の頃です。その後、大学の合気道部に入部し、本格的に稽古を始めました。最初は、「強くなりたい」という思いからでした。頑張れば、いろんな脅威に負けない自分を作れる、と信じていました。ですが、稽古を続けていくうちにその気持ちは変わってゆきました。初段くらいまでは、まったくコツがつかめず、「一番自分に向いていないものを始めてしまったな…」という思いが強くなってきました。たぶん、周りで見ていた人たちも、「この子辞めるだろうな」と思っていたと思います。
 私は何に対しても不器用で、運動は苦手、特に人とコミュニケーションをとらなければならない団体競技は全くダメでした。だから個人競技である武道を始めようと思ったわけです。ところが!合気道は個人競技どころか、人とのコミュニケーションそのものでした。それが分かるまでは、なぜこんなに努力してもうまくならないのか…と悩む日々でした。
 二段くらいから、だんだん稽古が楽しくなってきました。相手と気を合わせること、自分勝手ではなく、ちゃんと向き合ってコミュニケーションをとることを、何となく体で覚えてきたのだと思います。その頃になると、「強くなりたい」は、もうどうでもよくなっていました。
 合気道では、戦うとか、相手をねじ伏せるという感覚で技をかけません。相手が攻撃を仕掛けてきたら…という体で捌きを練習しますが、考え方としては、そもそも攻撃する気が起こらない、という状況になれば理想的です。大切になってくるのは、相手の動きや気持ちがどうなっているか感じ取ること、自分をしっかり持って相手に働きかけ、反応を引き出して柔軟にその瞬間瞬間で対応していくこと。相手が攻撃を仕掛ける前にその気がなくなるような働きかけができれば一番良いですが、攻撃されてしまった場合には、相手と気を合わせ、無理やり引いたり押したり、自分勝手に動いたりせず、しかし自分の軸はしっかり保ち、相手と同じほうを向き、力の流れにのって導くことで、最終的には相手が自らすすんで制される形にもっていきます。
 文章だけではうまく伝わりませんが、これは日常的な人とのコミュニケーションにもよくあてはまると思います。合気道を始めてから、人の中で人とつながりを持って生きることが、前よりも怖くなくなりました。不器用なので、要領を得るのにはほかの人よりも何倍も時間がかかりましたが、続けてきてよかったと思っています。
 合気道の世界は深く、もちろん器用な方でも鍛錬する価値は十分にありますが、不器用な方にこそ、おすすめしたいです。「私には向いてない」「全然上達しない」そう感じている方にこそ続けていただきたく思います。

次回は、具体的な技を通して、コミュニケーションに大切なことは何か、を掘り下げてみようと思います。


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