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得意科目と不得意科目の差が大きい子ども。親としては苦手科目でもう少し点が取れるようになってほしいです。どうしたら?『中学受験 親のお悩み相談室』(#9)

少子化にもかかわらず、中学受験者は年々増加しています。中学受験は親と子がタッグを組んで取り組むものだからこそ、さまざまな悩みや壁にぶつかることも…。本連載では、子どもの中学受験を控えた親御さんの悩みに、教育ジャーナリストの中曽根陽子先生が答えます。

質問:得意科目と不得意科目の差が大きい子ども。親としては苦手科目でもう少し点が取れるようになってほしいです。どうしたら?

回答:苦手科目にテコ入れするより、得意科目を伸ばすほうが合格に近づけます。できないところに注目せず、できるところを見ると、勉強にも身が入るでしょう。


必要なのはポジティブアプローチ

算数はできるのに、国語はダメ。理科は得意だけれど、社会がダメ。そんなふうに、得意科目と不得意科目の差が大きいというケースはよくありますよね。

結論からお伝えすると、今何年生なのかにもよると思いますが、苦手科目を克服することに意識を向けるより、得意科目を伸ばすことに意識を向けるほうがいいのではないかと思います。

というのも、入試というのは、総合点で合否が決まるので、得意な科目があれば、それが全体を底上げすることになるからです。さらに、心理学的もそのほうがいいということがわかっています。

そこで、ポジティブ心理学をベースにした考え方である「ポジティブ・アプローチ」を紹介しましょう。

問題があったときに私たちがやりがちなのが、どこに問題があるか、その問題の原因を探ってそれを何とか解決しようというアプローチです。

つまり、できていないところに注目して、それをできるようにしようとするということですね。これをギャップアプローチといいます。

それに対して、未来の作り上げたい姿を描いて、それがどのようにしたら実現できるかを考えるアプローチがあります。それをポジティブアプローチといいます。

ギャップアプローチは、問題解決の手法として一般的に使われますが、悪いところはどこかを見ていくので、「ダメ出し」になりがち。

一方ポジティブアプローチは、実現したい未来を考えて、その実現のために具体的にどうするかを考えていくので、革新が生まれやすいといわれています。

できるところを見ていくので、アプローチの過程で楽しくなります。その結果、思考も広がるのでしょう。

実は人の能力も、ギャップアプローチよりポジティブアプローチをしたほうが、伸びるといわれています。

考えてみてください。ダメ出しばかりされたら、やる気が出ますか?

多分、たとえ自分でも何とかしたい! と思っていても、言われれば言われるほど、やる気がなくなりますよね。

しかも、「私は〇〇ができない」ということが脳にインストールされて、余計に苦手意識が強くなりそうです。

ダメ出しをやめると、うまくいく

親は特に、子どものできないところが気になりますよね。これはある意味、仕方のないことなんです。

ネガティビティバイアスといって、危険を察知して生き残るために、私たちのDNAに備わっている働きが作用しているため、「できないところが気になってしまう」のです。

しかも、自分の子どものこととなると、余計に「何とかしたい!」と思うのが親心。やらないでおこうと思っていても、つい、ダメ出しをしちゃいますよね。

でも、そうすればするほど、子どもはやる気がなくなり、能力も伸びないとしたら、どうしますか?

そう。お子さんの能力を伸ばすには…? ポジティブアプローチです。

お子さんのできているところに注目して、そこを伝える。そして、できる教科がさらにできるように励ましてあげましょう。

お子さんにしてみたら、得意なこと・できることをするので、ラクだし、楽しいし、結果も出やすいはず。それによって、お子さんは自信を持てます。1つのことに自信を持てたら、他のこともできる気がする。

つまり、ポジティブアプローチによって、前向きないい循環サイクルが回ります。

その上で、最高の未来を描き、その未来を実現するための方法を一緒に考えてみてはどうでしょうか。

「まずは得意科目、余裕があれば不得意科目を攻略」でOK

ポジティブアプローチをした上で、不得意科目の攻略法も、具体的に考えてみたらいいと思います。

その際も、何となく苦手だからできないではなくて、どこでつまずいているのかを分析することが大事。つまずきポイントがわかれば、そこを克服するために、問題解決型アプローチで対策を立てたらいいのです。

実際、ベテランの塾講師の方からも、経験的に苦手科目の克服より、得意科目でちゃんと点が取れるようにするのが、合格への早道と伺いました。得意科目に余裕ができれば、他の科目に時間を割くことができますよね。

ぜひ、ポジティブアプローチでお子さんに寄り添ってあげてください。


中曽根陽子(なかそねようこ)
教育ジャーナリスト。マザークエスト代表。出版社勤務後、女性のネットワークを生かした編集企画会社を発足。「お母さんと子どもたちの笑顔のために」をコンセプトに、数多くの書籍をプロデュースした。現在は、教育ジャーナリストとして、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆する傍ら、海外の教育視察も行う。20年近く教育の現場を取材し、偏差値主義の教育からクリエイティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。「子育ては人材育成のプロジェクトであり、そのキーマンのお母さんが探究することが必要」とマザークエストを立ち上げた。常に自身の最新学習歴の更新に務め、お母さんの気持ちがわかるポジティブ心理学コンサルタントとして、エンパワメントサークルも主宰している。著書に『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)などがある。