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コラムニスト・石原壮一郎の新刊『押してはいけない 妻のスイッチ』先行公開(#5)

妻が突然黙り込んだ、不機嫌になった、当たりがキツくなった……。夫なら誰しもそんな経験があるのではないでしょうか。理由もなく、妻が不機嫌になることはありません。もしかすると、われわれ夫は気付かぬうちに「押してはいけない妻のスイッチ」を押してしまっているのかもしれません。コラムニスト・石原壮一郎氏の新刊『押してはいけない 妻のスイッチ』(青春新書プレイブックス)が2月16日に発売されるのに合わせて、内容の一部を先行公開いたします。

【スイッチ⑤】

妻が休日に作ってくれた手の込んだパスタを食べながら

「この前行ったイタリアンのお店はおいしかったよね」


パスタからの連想で、妻と一緒に行ったイタリアンレストランの楽しい思い出が浮かんでくるのは、まあありそうな話です。妻が作ったパスタがおいしかったからこそ、出た言葉かもしれません。

しかし、この状況でこのセリフを口にするのは無謀すぎます。自分はそんなつもりはぜんぜんなくても、妻は言葉の背後に「このパスタはイマイチだけど」という意味を受け取ってしまう可能性が大。

今すべきなのは、目の前のパスタに集中し、ホメるべき部分はきちんとホメて、おいしそうに平らげることです。食べ終わったあとに、「やっぱりイタリアンはおいしいよね。そうだ、また前に行ったあの店に行こうか」という提案をする分には、さほど危険性はありません。

お店でおいしい料理を食べているときも、同じジャンルのほかのお店について「あの店の〇〇は最高だった」などとホメるのは、いささか無神経。かといって、ほかのお店をけなすのも、それはそれでイヤな感じです。

妻が喜ぶリアクション
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「ずいぶん腕を上げたね。今度コツを教えてよ。俺も作ってみたいから」と尋ねる。近いうちに本当に作れば、なおよし


石原壮一郎(いしはらそういちろう)
1963(昭和38)年三重県生まれ。コラムニスト。1993年『大人養成講座』(扶桑社)がデビュー作にしてベストセラーに。以来、「大人」をキーワードに理想のコミュニケーションのあり方を追求している。『大人力検定』(文藝春秋)、『父親力検定』(岩崎書店)、『夫婦力検定』(実業之日本社)、『大人の言葉の選び方』(日本文芸社)、『無理をしない快感』(KADOKAWA)、『失礼な一言』(新潮社)など著書多数。故郷を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。