見出し画像

『声を視る』人生を変えるJ-POP[番外編]

こんにちは。いつも連載を読んで頂いて、ありがとうございます。今回はいつものような内容ではなく、私の少し変わった能力についてお話ししようと思います。

私は今、音楽評論という仕事をしていますが、実は、評論の仕事の他に「声鑑定」という仕事もしています。

「声鑑定」というのは、その人の話し声を聴いて、声からその人の外面的な印象と内面的な部分とをお伝えするものです。その人の声の音質がどのようなものなのか、外面的印象をお伝えするのが「音質鑑定」で、たとえば、柔らかい声なのか固い声なのか、高い声なのか低い声なのか、響きは明るいのか暗いのか、など、声の持つ音質的な特徴を鑑定するものです。

「音質鑑定」に加えて、声の質から類推できる性格、性質、行動パターンや思考パターン、さらにはどんな人(声)と相性が良いかとか、適職など、ありとあらゆることをお伝えするのが「声鑑定」です。今日は私の特技でもある、この「声鑑定」についてお話しようと思います。

名称未設定 1

ひといちばい「声」に敏感だった幼少時代

私は幼い頃から人の声に非常に敏感でした。2歳の頃には家にある童謡の本5冊の全曲を歌えるような子供で、お喋りよりも歌う方が好きだったのです。

そんな私は幼稚園の頃から父に連れられてミュージカルや宝塚歌劇を観に行くという環境の中で育ちました。中学生になり、友人に誘われて入ったコーラス部が毎年、コンクールの府代表になるような強豪校だったため、朝練、昼練、夕練と運動部並みに練習をし、夏休みも冬休みもほとんどないような学生生活を送りました。

今から思えば、その頃に人の声と合わせてハーモニーを作る、という練習を繰り返したことで、「人の声を聴く」という能力を徹底的に鍛えられたのだと思います。そうやって私は自然に音楽の道に入っていきました。

大学では声楽を専攻しました。学校では徹底的にソロの勉強をしましたが、在学中からボーカルグループに入って、各種のディナーショーやホテル、結婚式場などの披露宴で、クラシックからポップス、さらには歌謡曲から演歌まで、ありとあらゆる歌を歌っていました。

ボーカルグループは6人でソプラノ、メゾソプラノ、アルトという3部に分かれていました。各パート2人ずつの構成だったので、歌によっては4部や5部のパートに分かれると、1人でそのパートを担当することもしばしば起きました。

私はソロで歌うことも好きでしたが、ハーモニーを作ることも大好きでした。相手の歌声を聴いて、その歌声のトーン(色味)に合わせて自分の歌声を変えるのです。私は元々メゾソプラノなのですが、女性には珍しく1オクターブ下の“ド”の音まで出るほど低音域が広い為に、ハーモニーを作るときは必ず下のパートを歌っていました。

ハーモニーを奏でることで見えてきたもの

ハーモニーを作るときに重要なのは、上のパートを歌う人か、下のパートを歌う人か、どちらだと思いますか?

実は、下のパートが非常に重要なのです。

一般的にハーモニーは、上のパートの人がメロディーを歌い、下のパートの人がハーモニーをつける、即ち、ハモる側という構成が多いです。そのため、下のパートを歌う人は、相手の歌声を慎重に聴いて、その音色や変化を瞬時に判断しながら、自分の歌声を合わせてハーモニーを作っていくという作業になります。

相手の音程が下がり気味だったりした場合は、それに合わせて自分も下がり気味に音程を取るなど、相手の歌声の変化を聴き取って合わせていく能力が要求されることが多く、下のパートを歌う人は非常に声に敏感になります。

上のパートの人がハモる場合も、同様のテクニックが要求されます。即ち、ハーモニーというのは、ハモる側に高度なテクニックを要求される事が多いのです。

私はボーカルグループで活動していた約5年間に徹底的に相手の声を聴く、という能力を開発されました。それは中学時代にコーラスで下のパートを歌ってきたという下地が大きく作用しています。要するに上のパートの声を聴きながら歌っていたのです。

そんな経験もあって、いつも私は他の人の歌声を聴きながら声を出すという訓練をしていたのだと思います。他のパートの歌声を聴きながら、自分の声量の調節をしたり、他の人の歌声に自分の歌声を重ねながら、その音響を楽しんだり。

自分の声と他の人の声の重なりの中で、いつも他の人の声のジャッジ──たとえば、音程が下がり気味とか上ずっているとか、言葉のアクセントをどこに取っているかとか、今日はよく声が出ているとか、出ていないとか…そんなジャッジ──をしながら、人の声というものに非常に敏感になる感覚を磨き続けていたように思います。

さらにその感覚は、そのうち、歌声だけでなく話し声に対してもそういう感覚を持つようになっていきました。

その人の声を聞くだけで、その人が緊張しているとか、少し気取って話している、または非常に力んで話しているとか、ちょっとイライラしている、さらには、怒りをグッと我慢して話しているなど、その人の感情の状態がなんとなくわかるようになったのです。

いつのまにか、それほどに人の声に敏感になっていたのだと思います。

実は結婚後、育児や仕事に忙しい時期、私はほとんど歌というものを聞かなかった時期があります。歌を教える仕事で神経が疲れてしまい、歌手の歌を聴くのが苦痛だったのです。それでピアノ曲やシンフォニーばかり聴いていた時期がありました。

画像2

「声が視える」は特殊能力?

私は、この感覚は長年、私のような歌の仕事をしている人達共通の一種の職業病のようなものだとばかり思っていました。

ところがある日、音楽をしている友人にその話をすると、「それは久道さんだからよ」と言われたのです。さらに知人からは自分の声からどんな性格か言ってみて欲しいと言われ、感じたままを話すと、「どうして、そんなことまでわかるの? 声だけで、その人がどんな人かわかるなんて、それ、特殊能力よ」と言われたのです。

私は試しに歌手の歌声から、その歌手がどんな性格の人なのか、ということをブログに書いてみました。するとそれを読んだファンの人から、「すごく当たっている!どうして声だけでそこまでわかるんですか?」と言われるようになったのです。

それで、次に私はブログの読者、5人、10人の声を聴いては、性格や性質など感じたまま話すと、やはり皆、当たっていると言うのです。その数が50人、100人となり、いつの間にか気づけば500人を越えていました。それで、もっと詳しく視て欲しいと言われる方が増えて、今では一般の方を対象に音質鑑定や声鑑定をするようになりました(これまで鑑定した人から、「外れている」と言われたことは一度もありません)。

多くの方を鑑定してわかったことは、案外、自分の声に自信のない人が多く、中には自分の声が小さい頃から嫌いだったとか、コンプレックスでハッキリものが言えなかったりする人もいたりしたことです。

去年は、就職試験に面接で落ちている人や大学受験での面接指導などもさせていただきました。合格の報告を受けたときは本当にうれしかったです。少しのアドバイスで、自分の声に自信を持てるようになり、緊張することなく、自分の考えを堂々と面接で表現することができ、希望する場所を手に入れたのでした(もちろん、ご本人の努力もありますが!)。

声でわかる、性格や思考、行動パターンなど

声にはその人の性格や性質、思考のパターンや行動パターンなど、多くのことが深く反映されています。

たとえば、「ビブラートのない真っ直ぐで単純な響きを持つ人」は、普段から物事をごちゃごちゃと考えないタイプが多いです。あっさりとした性格で物事の決断も早く行動的な人が多いのが特徴です。

これに対し、「声に幅があって響きが複雑な音色をしている人」は、物事を深く考えるタイプが多いです。あれやこれやと常に頭の中で思考する癖があり、何かを決めるときにも熟考するために、どちらかと言えば決断が遅れがちになります。一旦、決断したことを後から逡巡するのも、このタイプの声の人に多い特徴です。

「声のボリュームがあり滑舌の良い人」は、快活で、何事にも積極的な傾向で、自分の意見をハッキリ言う人が多く、こういうタイプは自分を表現することに躊躇がありません。姉御肌や親分肌の人に多く見られる特徴です。

反対に「ボリュームもそれほどなく細い声の人」は、言葉がうちに篭りやすく、自分の意見を言う場合に、一度、自分の中で言葉を反芻してから言うタイプが多いです。こういう人は、相手と自分の意見が異なった場合、相手に合わせて自分の意見を引っ込めるか、または、言いたいことを我慢して、いつまでも自分の中にそれを持ち続けて後悔することが多かったりします。

このように声の特徴によって、その人の性格や性質、さらには行動パターンや思考パターンなども分類できます。

落ち着いて物事を冷静に客観的に捉える人は、声のトーンが落ち着いていますし、逆に感情が豊かで主観的なタイプは、声のトーンが飛び跳ねています。

本人が自覚する以上に、「声」というものに、その人の性格や雰囲気が現れているのです。ですから、初対面の人と出会った時、親しみやすいと感じたり、ちょっと気難しそうだな、と警戒したりするのは、案外、相手の声から受ける印象によってイメージを瞬時に判断していることが多いのです。

例えば、最初になぜか違和感を覚えた相手とは、付き合ううちに何かトラブルになったり自分の気持ちを理解してもらえないと感じることになったりします。それとは反対に、とても親しみを感じた相手とは、何も言わなくても気持ちが通じ合えたりフィーリングがあったりするのです。

このように、声による印象で私達は相手との相性を無意識に感じ取っていることがあります。

声による相性の良し悪しは、その人の声を好きだと思うかどうかに比例します。相手の声が好きだと感じる場合は、相手もそのように感じている場合が多く相性も良くなりますが、なんとなく違和感を覚える、あまり好きでないと感じる相手には、無意識で関係に距離を持とうとする心理が働きやすいです。

これも瞬時に相手との相性が良いかどうかを判断していることが多いのです。また、その声との親和性と言って、声を重ねたときに、綺麗な響きになる相手とはやはり相性が良く、響きに違和感を覚える相手とは、やはりあまり相性がいいという風にはならないことが多いです。

このように音質的な響き1つを見ても、声との相性によって、相手との関係性が出来上がったりします。

画像3

声の特質から適職もわかる…?

また、声の持つ特質から、その人に向いた適職もなんとなくわかります。

たとえば、カウンセラーや占いなどをしたいと思っている人は、優しい音色の響きで相手を包み込むような、又、安心感を与えるような声が良く、起業家や経営者、教師や弁護士には、明るくハキハキとしたタイプの声が相手にリーダーシップを感じさせたり、一種の威厳や威圧感を与えるという意味では、むいていると言えるでしょう。

医師という職業の場合は、内科や心療科などの医師に向くのは、相手を包み込み相手に安心感を与える落ち着いた声質が良く、それほど声量がなくてもいいように思います。これに対して、外科や整形などの医師は、声量もある程度あり、ハッキリ快活な口調で話す声質が向いているように思います。

また、アーティストの場合は、その人の持つ素直さや真面目さ、環境への順応性、又、スタッフやファンに心を開くオープンなタイプか、それとも自分の殻に閉じこもって音楽を追求するタイプか、なども全て声に現れているのを感じます。

このように、声の特徴から、各種の職業に向いた声質もある程度わかったりするのです。仮に自分の声がなりたい職業に向かない場合は、「声を作り替える」ことで希望の仕事がしやすくなったりもします。

声は、持って生まれたものですが、その出し方については、訓練を受けた人以外は、皆、自己流で出しています。正しい出し方や、その人が希望する声の出し方を訓練することで、誰もが、自分の声を作り替えることが出来るのです。

また、自分の声の特質を知って、それを生かした職業に就くことも可能です。それほど、声というものは、人間を作り上げている重要なアイテムの一つと言えるでしょう。

声には、自分が自覚しない気質や性質がよく出ています。あなたの声がどんな声で、さらにどんな本質を持っているのか。興味があれば、ぜひ、あなたも声鑑定を受けてみてください。あなた自身も知らない、あなたの本質を知ることができますよ。


久道りょう
J-POP音楽評論家。堺市出身。ミュージック・ペンクラブ・ジャパン元理事、日本ポピュラー音楽学会会員。大阪音楽大学声楽学部卒、大阪文学学校専科修了。大学在学中より、ボーカルグループに所属し、クラシックからポップス、歌謡曲、シャンソン、映画音楽などあらゆる分野の楽曲を歌う。
結婚を機に演奏活動から指導活動へシフトし、歌の指導実績は延べ約1万人以上。ある歌手のファンになり、人生で初めて書いたレビューが、コンテストで一位を獲得したことがきっかけで文筆活動に入る。作家を目指して大阪文学学校に入学し、文章表現の基礎を徹底的に学ぶ。その後、本格的に書き始めたJ-POP音楽レビューは、自らのステージ経験から、歌手の歌声の分析と評論を得意としている。また声を聴くだけで、その人の性格や性質、思考・行動パターンなどまで視えてしまうという特技の「声鑑定」は500人以上を鑑定して、好評を博している。
[受賞歴]
2010年10月 韓国におけるレビューコンテスト第一位
同年11月 中国Baidu主催レビューコンテスト優秀作品受賞