偏差値重視の夫と意見が合いません。中学受験をきっかけに夫婦仲が悪くなり、悩んでいます。『中学受験 親のお悩み相談室』(#6)
少子化にもかかわらず、中学受験者は年々増加しています。中学受験は親と子がタッグを組んで取り組むものだからこそ、さまざまな悩みや壁にぶつかることも…。本連載では、子どもの中学受験を控えた親御さんの悩みに、教育ジャーナリストの中曽根陽子先生が答えます。
なぜ、偏差値が低いと意味がないのか――その裏にある本当の気持ちを聞き出して
子どもの受験を通して、夫婦の価値観の違いがあからさまになって、不仲になってしまうという話は割とよく聞きます。
そもそも教育って、自分の経験やそれまで生きてきた背景をもとに語られることが多いので、夫婦といえども考え方が違うのは、ある意味当たり前かもしれませんね。
「自分は中学受験経験者で、その体験が良かったから子どもにもさせてあげたい」
「自分が受験で嫌な思いをしたから、中学受験はさせたくない」
「地方出身で、自分は(親は)中学受験の経験がないからわからないけど、今は都会に住んでいて、職場や家の近くでも受験する人が多い。その影響を受け受験を考えるようになった」
「自分は高校受験をしたけれど、あまり良い思い出はないから、子どもには中高一貫教育を選びたい」などなど…、考え方も受験を考える背景もさまざまです。
さらにそこに、学歴重視か否かの価値観が入ってくると、ご質問のケースのような軋轢が生まれやすいのです。
価値観のすり合わせって、そんなに簡単ではないです。だからこそ、まずはお互いに話し合いのテーブルにつくことが大切です。そのために、いったん自分の主張は置いて、相手の話を聞いてみませんか。
お父さんは偏差値重視のお考えのようですが、まず、なぜそう思うのか、「偏差値の低い学校に行っても意味がない」という言葉の裏にある、本当の気持ちを聞いてみてはどうでしょうか?
そのときに心がけて欲しいのは、たとえその話に同意できなかったとしても、「あなたはそう思うんですね」とそのまま受け止めること。それを共感と言います。
人は、共感されると自分の話を聞いてもらえたと感じて落ち着き、人の話も聞くことができます。その上で「私はこう思う」と、ご自分の考えを話してみましょう。そうすることで、相手も聞く耳を持ってくれるのではないでしょうか。
「トラブル」や「軋轢」は本音で話し合うチャンスになる
夫婦で話をする前に、自分の考えも整理してみましょう。旦那様が「そんな偏差値の低い学校に行っても意味ない」と言ったその学校を、あなたや子どもはなぜ良いと思ったのでしょうか。
昔の情報を知っている人ほど、学校名だけで判断をしてしまいがちですが、5回目でも書いたように、今は学校教育もずいぶん変わっています。
それに、偏差値だって10年も経てば様変わりします。ですから、客観的な情報・事実ベースを使って話されたら、旦那様にも理解してもらえるかもしれません。
中学受験は、子どもの意思というより、ほぼほぼ親の考えで始まることが多いので、本来は始める前に、何のために受験をするのか、どういう受験にするのかを夫婦でよく話し合うべきなのですが、「とりあえず塾に行かせてみよう」と、雰囲気で始めてしまう方も多いですよね。
しかも、塾を選ぶ際も何となく評判や合格実績で決めてしまうと、そのまま塾が敷いたレールの上を走らされて、お子さんの成績に一喜一憂し、偏差値基準で学校を見るようになってしまいがちです。
こういったかたちで受験準備が続くと、知らぬ間に子どもも無理を重ねて体の症状に出ることもあります。
もしかしたら、あなたは、そんなお子さんの状態を見て、無理をさせたくないと思ったのかもしれません。それなら、そのことをきちんと話されたらいいでしょう。
もし、旦那様が普段子どもと接する時間が短いようなら、子どもの変化には気づかないこともあると思うので。
いずれにしても、トラブルは、逆に本音で話し合うチャンスです。ただし、そのときに気をつけて欲しいのは、どちらが正解かを競わないということ。
そして、忘れてならないのは、受験をするのも、その学校に通うのも、親ではなく子どもだということです。
なので、夫婦で話し合えたら、今度はお子さんも交えてどんな受験にしていくのかをもう一度、話し合ってみてください。
一番大事なことは、何のための受験なのか、その目的から話し合うことです。最終的には、ご家族みんなが幸せであることが大事なので、そこを見失わないでくださいね。