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塾の宿題をずっとさぼっていたわが子。なんて話したら?『中学受験 親のお悩み相談室』(#7)

少子化にもかかわらず、中学受験者は年々増加しています。中学受験は親と子がタッグを組んで取り組むものだからこそ、さまざまな悩みや壁にぶつかることも…。本連載では、子どもの中学受験を控えた親御さんの悩みに、教育ジャーナリストの中曽根陽子先生が答えます。

質問:塾の宿題を「やっている」と嘘をつき、ずっとさぼっていたわが子。答えを丸写ししていたときもあるようです。嘘をつかれていたことがショック……。なんて話したらよいでしょう?

回答:お子さんが嘘をついたその行動の裏にある気持ちを考え、話を聞いてみましょう。話を聞くときは決して責めずに。話を聞いた上で、これからどうすればよいか一緒に考えられるとベストです。


まずやるべきは、なぜ宿題をやっていないかを知ること

塾の宿題をやっていると嘘をついてずっとサボっていたのですね。しかも、答えを丸写ししていたこともある。嘘をつかれていたのがショックだというお気持ち、わかります。

でも、怒りたい気持ちをグッと堪えて、こうして相談されている。まずその姿勢が素晴らしいなと思います。

では、お子さんは、なぜ「やっている」と嘘をついたのでしょう。

嘘をついてまで宿題をやっていないことを考えると、塾に通っているものの、やる気はなさそうですね。なぜやる気にならないのか。思い当たることはありますか?

私には本当のところはわかりませんが、息子さんの様子から考えられることは「やっていない」と言ったら怒られるから、その場しのぎで「やった」と言っていた。そんなところではないでしょうか。

こんなときには、まずお子さんの状況を把握して、その行動をとった理由を明らかにする必要があります。この場合は、宿題をやらない理由を明らかにするのです。

なぜ宿題をやらないのか。その理由としては

•内容がよくわからないから、できない。
•やればできるのはわかっているけれど、めんどうくさいからやらない。
•他に気になることや、やりたいことがあって、先延ばしにしている。
•塾で何か嫌なことがあって、やる気にならない。
•疲れている。
•そもそも受験勉強をする意味がわからない。

こんなことが考えられます。

「答えを丸写しして提出する子はときどきいる」と、あるベテランの塾の先生もおっしゃっていました。

先生が見れば一目瞭然なので、そんなときには頭ごなしに怒らず、じっくり話を聞くそうです。すると、子どもなりの理由が明らかになるので、対応を考えるそうですが、理由の中で多いのが、「お母さんに怒られるから」というものだそうです。

嘘をつかれたときこそ、関係修復のチャンス

多分これまでも、お母さんはお子さんに対して「宿題はしたの?」とチェックをしていましたよね? そして、やっていなかったときにどんな声をかけていましたか? また、思うような成績がとれなかったときに、どんな声をかけていましたか?

もしかすると、これまでの経験からやっていないと言ったら怒られるので、嘘をついてしまったり、答えを丸写ししてしまったりしたのかもしれません。

お母さんにしてみたら、嘘をつかれたのはショックだと思いますが、お子さんが嘘をついたその行動の裏にある気持ちを考えてみませんか? そして、お子さんの気持ちを理解しようと意識して、聞いてみてください。

そのときの聞き方ですが、まずは「宿題やっていないのに、やったって言っちゃったんだね」と事実をそのまま受け止めることです。

その上で、「そうしちゃったのはなぜかな?」と聞いてみてはどうでしょうか? そして、お子さんが何か喋ったら、そのままその言葉を繰り返してみてください。

問題が起きたときがチャンスです。うまくいっていない理由を把握して、ここからどうしたら良いかを一緒に考えてみてください。

お母さんは怒っているんじゃない。子どもの行動の理由を知って、どうしたら良いかを一緒に考えたいんだというメッセージが伝わると良いですね。

中曽根陽子(なかそねようこ)
教育ジャーナリスト。マザークエスト代表。出版社勤務後、女性のネットワークを生かした編集企画会社を発足。「お母さんと子どもたちの笑顔のために」をコンセプトに、数多くの書籍をプロデュースした。現在は、教育ジャーナリストとして、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆する傍ら、海外の教育視察も行う。20年近く教育の現場を取材し、偏差値主義の教育からクリエイティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。「子育ては人材育成のプロジェクトであり、そのキーマンのお母さんが探究することが必要」とマザークエストを立ち上げた。常に自身の最新学習歴の更新に務め、お母さんの気持ちがわかるポジティブ心理学コンサルタントとして、エンパワメントサークルも主宰している。著書に『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)などがある。