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【精神看護出版関連研修会のご案内】「第4回 トラウマインフォームドケアを学ぶ」研修会 In Ishikawa

「第4回 トラウマインフォームドケアを学ぶ」研修会 In Ishikawaが2024年7月20日(土)に金城大学看護学部(松任キャンパス)にて開催されます。この記事では主催者である金城大学看護学部学部長の一ノ山隆司先生、境美砂子先生、千英樹先生にこの研修会の見どころについて聞きました。

Trauma Informed Care
トラウマインフォームドケアが実践できるとは,トラウマの症状や徴候を理解し,看護ケアの提供において「いま目の前にいる個人やその個人を取り巻く環境に対して,トラウマが不利な影響を与えている可能性に敏感である」ということです。つまり,トラウマインフォームドケアの実践においては,「すでにトラウマ体験を受けている個人が再トラウマとなるようなケアが行われてないかを,援助者自身が直観的に気づき,予測し,『再トラウマ体験』を回避する」用心深さが必要となります(SAMHSA:米国薬物乱用・精神衛生管理局から要約)。

「第4回 トラウマインフォームドケアを学ぶ」研修会 In Ishikawa
お申込みはQRコードもしくはhttps://forms.gle/ggZh4ZbeYAXNa6WZ8から。

一ノ山 下記のプログラムスケジュールを見ていただくとわかるように、研修会は主にレッスン1からレッスン4までの構成となっています。これは川野雅資先生(心の相談室 荻窪・室長)が2018年に精神看護出版から出された『トラウマインフォームドケア』の構成とほぼ一緒で下記のとおりです。

09:30~09:45 主催者挨拶 アンケート依頼と記入
09:45~11:15 レッスン1「トラウマとトラウマインフォームドケアの理解」
11:15~11:25 リフレッシュメント・交流
11:25~12:30 レッスン2「研究でわかるトラウマ体験」
12:30~13:15 昼食
13:15~14:15 レッスン3「トラウマの反応」
14:15~14:25 リフレッシュメント・交流
14:25~15:30 レッスン4「トラウマインフォームドケアと非トラウマインフォームドケア」
15:30~15:45 リフレッシュメント・質疑応答
15:45~16:00 クロージングリマークス アンケート記入

第4回トラウマインフォームドケアを学ぶ研修会 In Ishikawaプログラム


トラウマインフォームドケアをすぐにでも自分の実践に活かしたい!」と思っている方にとっては、レッスン4の「トラウマインフォームドケアと非トラウマインフォームドケア」がもっとも関心の高い内容だと思いますし、実際にそのようなご意見もいただきます。ただ、トラウマインフォームドケアをしっかりと学ぶにあたっては、やはりレッスン1の「トラウマとトラウマインフォームドケアの理解」をまずは十分に理解いただきたい。どうしても理論に関するパートなので、多少難しくは感じるかもしれませんが、事例を基にしたグループワークでのディスカッションの時間も用意していますので、効率よく理解を進めていくことができると考えています。
では、境先生から研修会参加者の実際の声について紹介してもらいましょう。

 参加者の方々からは実にさまざまなご意見やご感想をいただくのですが、印象的な声は次のようなものです。。

日々のケアのなかでいつも違和感を常に抱えていました。そしてその違和感の正体を明確にできないままこれまで看護を続けてきました。この研修でトラウマインフォームドケアを知り、トラウマインフォームドケアの視点で自分の看護を振り返ると、それまで自分が抱いていた違和感の正体が少しずつ明確になっていきました。

ここでいう「違和感」というのは、たとえば「この患者さんはどうしてこんなふうに激しく反応するんだろう?」という患者さんの“真意の汲めなさ”のことで、こうした予期せぬ患者さんの反応について、「自分の言動によって患者さんが抱えているかもしれないトラウマを、気づかないうちに刺激してしまったのはではないか?」と捉え直すこと、それがトラウマインフォームドケアの視点なのです。もしその視点に援助者自身が気づくことがなければ、「どうしてこんな反応をするんだろう」という違和感を抱えつつ、患者さんには知らず知らずのうちに非トラウマインフォームドケアを提供しつづけることになってしまいます。実際に参加者の方のなかには、非トラウマインフォームドケアを避け、トラウマインフォームドケアに基いた看護の実践を展開することで、患者さんの反応も良くなっていったという感想もいただいています。
よくあるのが、患者さんが突然怒りを表すという場面です。こうした場面を「かかわりのなかで自分のなんらかの言動がトリガーとなって、患者さんのトラウマの再体験を引き起こしてしまった」と捉え直すと、患者さんが怒りを表出しないような言葉かけを慎重に選択することができるようになります。こうした、トラウマをよく理解したケア=トラウマインフォームドケアの展開は、患者さんとの適切な援助関係が築くことにも寄与するはずです。
また川野先生が研修会でたびたびお話される内容で、参加者に新しい気づきをもたらしているのは「禁止」の多用についてです。たとえば、病院内の掲示物などで「〇〇禁止」という表現がありますね。これは実は非トラウマインフォームドケア的なメッセージなのです。トラウマを抱えた人にとって「禁止」というメッセージはトラウマの再体験のトリガーになりやすいのです。ですから、看護師の言動だけではなく、病院内の張り紙などの表現の仕方も、トラウマインフォームドケアの観点から十分に留意する必要があります。

一ノ山 境先生、ありがとうございます。千先生は研修会に何度も参加いただいています。この研修会にどんな印象をもたれていますか?

 回を重ねていくうちに、医療現場の方々以外、たとえば教員の方々の参加が増えてきているなという印象をもっています。考えてみればそれは当然で、境先生が話してくださったような患者-看護師関係だけでなく、教員-学生関係の構築においても、トラウマインフォームドケアの観点は有効だと思います。境先生が指摘してくれた“違和感”というのは、どんな関係のなかでも生じる可能性があるのだろうと思います。言葉は少し適切ではないかもしれませんが、どうしても対人コミュニケーションにおいて「地雷」となるような言葉はありますので、それを適切に避け、関係性を築いていくには、トラウマという観点は欠かせない、そんなふうに思っています。


一ノ山 どんな関係であってもトラウマインフォームドケアを意識することで、身近な言葉を使えば、いろいろな人と協働していくことができる。トラウマインフォームドケアのもっている可能性は医療現場だけではないというは千先生のおっしゃるとおりだと思います。もっといえば、看護師だってこれまでの人生のなかで抱えてしまったなんらかのトラウマが、看護業務のなかで、フラッシュバックすることもあるでしょう。そうしたことを極力避けるようなコミュニケーション空間をつくるなど,安心・安全な職場環境を整備するというのは、組織にとって大切なことでしょう。「権力/管理を最小にする組織文化を醸成する事に常に気を配っているか」というのは、組織として行うトラウマインフォームドケアにとって重要な観点であることは指摘されています1)。

最後に

一ノ山 「トラウマインフォームドケアを学ぶ」というタイトルの研修会は石川県だけでも今回で4回目を数えます。同じようなプログラムで神奈川県でも数回開催しています。また今年は熊本でも初めて開催が予定されています。トラウマインフォームドケアを実践する方々がいま以上にどんどん増えていけばいいなと思いますし、研修会を通じてトラウマインフォームドケアを伝える方々――たとえば研修会でのファシリテーターの役割のような立場の人が育っていくことを期待しています。傷ついた心に共鳴するヒューマンケアリングを実践する方法、トラウマインフォームドケア。7月20日(土)、一緒にトラウマインフォームドケアを学んでみましょう!


引用・参考文献
1)川野雅資:トラウマ・インフォームドケア.精神看護出版,p.097,2018.






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