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『養生大意抄』- 江戸の養生書を読む 02

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多紀元悳(1732~1801)著の養生書で、全2巻。内容は医家向けではなく一般向けで、心、飲食、起居動作、性、鍼灸薬餌などの養生の要点がまとめられている。著者の多紀元悳(もとのり…
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2019年11月の記事一覧

半酔の人は長寿なり - 養生大意抄06

1.食後に暖かいお酒を少し飲む【原文】 ○酒は百薬の長と古人いへり。少しく飲ば陽気を助(たすけ)、血気をやすらげ、食気をめぐらして大に益あり。多飲(のめ)ば血脈を乱し腸胃を傷(やぶ)りて大に人を損す。必多く飲べからず。人の性にて節(ほど)あり。其節を考えてほろほろ酔を度として其うえを飲すごすべからず。食後に少し飲ば食気をめぐらして益あり。温酒(かんざけ)をのむべし。陽気をかりて気をめぐらす故なり。冷酒はよろしからず。熱酒固(もと)より飲べからず。 【意訳】 「酒は百薬の長」

偏って同じ味のものばかり食べた時の害 - 養生大意抄07

1.偏って同じ味のものばかり食べた時の害【原文】 ○五味偏勝(かたよる)とは、五味の内にて唯(ただ)一味を常に多く食すれば、其一味の気偏にかつをいふ。假令(たとえば)甘物をつづけて多食すれば、中焦(ちゅうしょう)の気滞りて痞(つかえ)満(はり)腹痛等の病を発す。辛物をつづけて多く食すれば、気上逆して眼病瘡瘍(できもの)等の病を生ず。鹹物多ければ、血乾く。故に嗌かわき湯水多く飲て脾胃を傷る。苦物多ければ、脾胃の生気を損ず。酸物多ければ、気ちぢみてのびず。此故に内経に気を積て偏な

養生は我が心にあり - 養生大意抄08

1.養生の基本は心にあり【原文】 ○養生というときは殊々しく聞ゆれども、左にあらず。惟(ただ)今日立居食男女の上に就て、少く心を用ゆる迄の事にして、事はおこなひ易く益は甚多し。 然(しか)れは我心にありて他にあらず。素問(そもん)と云(いう)古き医書に、心は君主の官といえり。其他の蔵府四支百骸は、臣下にして各(おのおの)其(その)掌(つかさどる)職あり。 假令(たとへば)手よく把(にぎ)り脚よく走(はし)るは、各自其職なれども、心に走らんと思わざれば、走らす。是(これ)臣

慢性的な自己解決できない悩みから身を守る方法 - 養生大意抄09

1.暇、ひま、ヒマ 【原文】 ○凡(およそ)徒(いたづら)にうっかりとして日を曠(むな)しく暮すことを深く戒(いましむ)べし。徒にうかうかとして暮せば気たるみ、精神抜て筋脈ゆるみ其うえに心に主(あるじ)なき故、種々の妄念慾心(よくしん)萌(きざし)動(うごき)て果(はて)は病を生ずるに至る者おおし。老年迄堅固に勤たる人の隠居して間もなく病気づく人おほきを見て知べし。冨貴の方或は閑逸(ひま)なる人、又は仕官して暇なく勤(つとめ)し人の致仕(いんきよ)せし、皆読書三昧をよしとす。