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シン・エヴァから考える人間と環境

一昨日、『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズの完結編、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(シン・エヴァ)がAmazonプライムで解禁されました。

解禁によせて、私がシン・エヴァを観て考えた人間と環境のかかわりについて、私の主観と偏愛をもとに書きたいと思います。

※以下、ネタバレを含む内容ですので、まだ観ていない方はご承知いただいた上で続きをお読みください。


ヱヴァンゲリヲン新劇場版の世界観

『新世紀エヴァンゲリオン』(エヴァ)シリーズはオリジナルのアニメ版、シン・エヴァを含む四部作からなる新劇場版で共通して、人類の半分が失われ、海洋が汚染されて多くの生物種が絶滅した「セカンドインパクト」という出来事の15年後から始まっています。

また、新劇場版の第三作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』では、
さらに「ニアサードインパクト/サードインパクト」という出来事が起こり、地球上のほとんどは生物が住めない場所になっている様子が描かれます。

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そして、これらの出来事は、人間が意図的に起こした出来事であることが明かされていきます。

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これらの出来事を起こした意図については、複雑なためここでは詳しく触れませんが、端的に言うと人工的な生命・魂の操作(劇中では「人類補完計画」とよばれます)が目的です。
人間が遺伝子改変技術を手に入れ、生命に介入できるようになった現代の状況を反映しているとも考えられ、その意味でも人間と環境、生命倫理のあり方を問いかける作品といえるのではないでしょうか。
(こうしたテーマは、私のこれまでの人生に最も影響を与えている、宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』(特にアニメージュコミックス版)に通ずるところがあります)
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人間によって海洋も大地も汚染され、そこに住む生物のほとんどが死に絶え、人間もかろうじて人工的な空間の中で生き延びているのが、エヴァの世界なのです。


環境活動家としての加持リョウジ

そうした絶望的な環境の中にも、希望はあります。

新劇場版の第二作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』では、
「セカンドインパクト」の前の海洋環境を復元し、わずかに生き残った海洋生物を人工的に飼育する研究施設が登場します。

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また、シン・エヴァでは、主人公の碇シンジたちが乗る戦艦「AAAヴンダー」が建造された本来の目的は、いまの人類の生き残りのために戦うことではなく、人類の企みによって他の生物種が絶滅に追い込まれることを防ぐべく、生物種を地球外に避難させる方舟となること、であると語られます。

これらの実現のために奔走したのが、物語の鍵を握る人物でもある、加持リョウジです。

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加持リョウジは、上述した「人類補完計画」を阻止するために行動する人物として描かれていますが、その願いはいまの人類を守ることよりも、他の生物種を自然のままの状態で生き残らせることでした。

その意味で私にとって加持は、エヴァの世界におけるひとりの環境活動家として映り、まっすぐで愛あふれるキャラクターも合わせて、私がエヴァでもっとも好きな登場人物です。


シン・エヴァで描かれた人間と環境

シン・エヴァは壮大なエヴァシリーズの完結編ですが、その3分の1ほどは、エヴァンゲリオンのパイロットの1人である綾波レイが、生き残った人々が暮らす村でつかの間の平和な日常を過ごすうちに、さまざまな人や自然とふれあう描写に割かれています。

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なぜ、物語の進行と直接関係ないように思われる、綾波レイの村での滞在先の家族とのふれあい、村の人たちと協力しての農作業への参加などが、これほど丁寧に描かれているのでしょうか。

それは、エヴァのそもそものテーマの一つが、「人間(らしさ)とは何か」であるからではないか、と思います。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』では、綾波レイが実は人間の形に造られた存在であることが明かされ、命令に忠実に従い、感情の起伏の少ないキャラクターとして描かれています。
そのような存在である綾波レイが、シン・エヴァではさまざまな人や自然とのふれあいを通じて、人間らしさを得ていき、最後には村の人たちとの別れに寂しさを感じて涙を流すまでになります。

シン・エヴァで生き残った人々が営む生活は、みんなで共同で農作業をし、貴重な森林と水資源を大切にする、どこか懐かしい生活です。
(村の様子の一部には、『となりのトトロ』の絵が使われているようです)
そんな人とのつながりや、大地に根ざした暮らしが、人間らしく生きるためには必要なはず。
それらを生活のなかに失いつつある私たちに、監督はそう伝えたかったのではないかと、私は思います。

そして、人間らしさを得た綾波との別れ際に、綾波から愛を受け取ったシンジも、人間らしさを取り戻し、自分の決断や過去の行為に対して責任をとる決意を固めるのです。


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人間と環境のかかわりについて、エヴァから感じ取ったり、学んだりできることはまだまだあると思います。

みなさんももし、エヴァを観る中で人間と環境のかかわりについて考えることがあれば、ぜひご共有いただけると嬉しいです。


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