愛着障害、PTSDについて

こんにちは。
コロナがだいぶ騒がしいですが、身体やこころの調子は大丈夫でしょうか?
自粛が続き、孤独感や不安感がいっそう強くなりますが、内面を見つめ直し、新たに成長する機会に変えてしまえるなら、むしろいまはチャンスの時かもしれないと思います。

私は愛着障害やPTSDの患者さんを診ることが多く、その延長でプライベートでも愛着障害やPTSDの生きにくさのある人にそれを指摘したりするけど、表面的な理解に留まっていることが多く、難しいことは抜きにして、愛着障害を抱える本人や、なんとなく付き合いにくさを感じている周囲の人たちの助けになればいいなと思い、特性やどうやって傷を修復するかを書いていこうと思います。

心配しないでください。
愛着障害もPTSDも治ります!


1.PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは?

まずはそれぞれどういったものかを説明していきます。診断基準なども載せたほうが丁寧ですが、さくっと読めるように詳細は割愛します。この記事ではおおまかに理解してもらえればと思います。

愛着障害を理解する前にPTSDについて説明したいと思います。PTSDは発見されてから歴史は浅く、ベトナム戦争の兵士たちが心身の不調を呈したことがきっかけとなりました。

私たちは、概ね世界は平和であるし、他人はある程度信用できるし、自分自身も信用できるものと考えて生活しています。
しかし、災害や戦争など大きなイベントが起きると、それらの安心感が崩れてしまいます。災害などであれば、世界、自分自身の安心が損なわれても他人に対する安心感はそれだけでは損なわれません。
しかし、家族など信頼していた重要な人物からの裏切りなどは、世界、他人、自分自身に対する安心感がすべて崩れてしまいます。

一切に対する安心感が損なわれ、周囲の言動を被害的に捉えやすくなり、人間関係を保つことが難しくなっていきます。生きづらさを抱えますが、周囲の理解を求めることが難しい状況であったりするために孤立しやすくなります。
また、自分でもわからないような些細なきっかけで傷ついたイベントを思いだし(フラッシュバック)、パニックになったり、あるいは傷つく自分を守るために別の人格が出現する解離性障害(二重人格、多重人格などのほうが馴染みがあるかもしれません)を引き起こします。

PTSDをもっと知りたい方に「対人関係療法でなおすトラウマ・PTSD 問題と障害の正しい理解から対処法、接し方のポイントまで 」がおすすめです。

2.愛着障害とは?

本来、人間はお母さんなどとまず絆を持ち、それから外の世界を体験し、そしてそこで失敗したり不安になるとまたお母さんのところに戻る、ということを繰り返し社会に適応していきます。

しかし、最初のお母さんなど養育者との間に適切な関わりがなく、絆が結べなければその後の人間関係は不安定なものとなります。
またフラッシュバックを繰り返すことも多く、その場合、複雑性PTSDと言われます。

人間関係が不安定となりますが、パターンがいくつかあり、不安型、回避型、未解決型と呼ばれるものがあります。
不安型の人たちは不安が強く依存的で、見捨てられ不安も強く、馴れ馴れしいかと思えば些細なことから被害的に感じ、攻撃的になります。
回避型の人たちは人と深い関係になることを避け、共感性に欠け、相手の感情がわからず、自分の感情さえわからないことがあります。
未解決型の人たちは、不安型と回避型の両方の特徴があり、過度に依存的であったり、かと思えば人を極端なまでに避けたりします。

愛着障害をもっと知りたい方に「愛着障害の克服」がおすすめです。

3.周りの人はどう付き合えばいいのか?

なによりも大切なことは、ただそばにいることなのです。
なにかいいことを言おうとしたり、特別なことをしなくていいのです。
愛着障害もPTSDも世界、他人、自分自身に対する信頼が揺らいでいるため、安心感が重要となります。

本人がいうことを否定せずに、受け止めてあげてほしいと、本人と一緒に受診にきた家族などの周囲の人に話すと、わかっています、できています、でも改善がないんです、と言われることが多々あり、テクニック的なことも少し書いておこうと思います。

本人が訴えたことばをそのまま繰り返してみてください。
「死にたい」と言われたらびっくりしてしまうかもしれませんが、「なんでそんなこというの!?」と言いたい気持ちを押さえて、「死にたいと思うくらいつらいんだね」と返してみてください。
なにか訂正が必要なときも、まずは本人の思いを受け止めたうえで訂正してください。一生懸命サポートしようとしているのに、「全然わかってくれない!すごく傷ついた!」などと言われたり、そっちが悪いんでしょ、と思うこともあると思いますが、「わかってあげられなくてごめんね。傷つけてごめんね。でも~。」と続けてあげましょう。
ただ、愛着障害やPTSDの人が攻撃的になったり自暴自棄になるとき、本人も気付かないところでフラッシュバックをおこしていることがあり、フラッシュバックを起こしているときにどんな正論を言っても収拾がつかないので、そうしたときは私はあなたの見方だよ、というメッセージを伝えたうえでフラッシュバックのパニックを待つしかありません。

そもそも、愛着の形成は、赤ちゃんがお母さんに抱っこされるところから始まり、特に意味もなく一緒の時間を共有することが、意味のある言葉を交わすよりも大切なのです。

愛着障害もPTSDも治ります。ただし、安心感が得られるまで時間がかかります。サポートするためには忍耐が必要なことが多いです。自分一人で抱えすぎず、ときにはサポートする人自身もケアを受ける必要があります。

4.フラッシュバックの対処の仕方

まずはいつもと違う自分や、攻撃的で破壊的な自分は本来の自分でなく、フラッシュバックを起こしている、とわかることが第一歩です。
安心しきっているところで傷つき体験をしていると、安心や安らぎもフラッシュバックのきっかけになります。なんでフラッシュバックを起こしたか考えると、もっとフラッシュバックを起こしたりするので、理由は考えないほうがいいと思います。

神田橋処方といわれる、神田橋先生が考えた漢方処方を効いたりします。桂枝加芍薬湯と四物湯の組み合わせや十全大補湯などです。漢方が苦手な患者さんだったらエビリファイというお薬を3mg程度処方したりします。

お薬も効果がありますが、お薬を使わない、自分にあった方法を探すことはもっと重要なのではないかと思います。愛着障害については体験不足です。理屈にとらわれずにいろんなことを試していくことが治療的だと思います。

神田橋処方の神田橋先生が考えた方法で指いい子などがおすすめです。足の5本指を反時計周りに撫でます。左右両方します。理屈的なことを言えば、頭から足に意識を動かすので頭の辛さが和らいだり、体をさわっていることに無意識に安心したり、足をさわっている姿勢で緊張はしないだろうからリラックスできるのではないかと思います。一人でもできるし、だれかにしてもらうことも効果的です。

少し今回のテーマから脱線しますが、発達障害の困った行動もフラッシュバックが起きた結果であることが多く、また育てにくさから愛着障害とPTSDのどちらの問題も抱えていることがあるので、こうした方法を試してみると問題行動が少し和らぐかもしれないです。

フラッシュバックの対処法などもっと知りたい方は心身養生のコツがおすすめです。

5.愛着障害、PTSDの治し方

何度も繰り返しますが、愛着障害もPTSDも治ります。幼少期に恵まれた環境にいなかったらもうおしまい、これだけつらい体験をして残されたのは孤独で人生が終わる、というわけではありません。ただし、本人もサポートする人も忍耐強さは必要です。一朝一夕に治るわけではないけれど、時間をかけて治っていきます。

治し方についてですが、ここからは私の持論であり、一般的な学術的な事柄ではないですが、だいたいの人に当てはまっていると思うし、今まで関わってきた、改善している患者さんをみてもそんなに的はずれではないと思います。

愛着障害にしろPTSDにしろ、世界、他人、自分自身に対する安心感の揺らぎが問題なのです。
安心感を与えてくれる人にいてもらう。それは確かに正しいけれど、それがなかなか難しいことなのではないかと思います。

長期にわたる自己コントロール感の欠如が大きな問題であり、そのためにはコントロールできるという実感を得ることが重要であると考えています。そのため、最初はお薬でコントロールするのがステップとして踏みやすいかもしれませんが、先ほど紹介した指いい子など、自分一人でもコントロールできる、ということが大切だと思います。
コントロールするのはフラッシュバックだけでなく、フラッシュバックがおきると頭もくたびれてしまい質的に栄養状態が悪くなるので、栄養療法をしてみたり、運動療法をしてみたり、私が提案している方法(精神科を卒業するためにしてほしいこと)にこだわる必要はなく、オリジナルでよくなる方法を見つけるのです。よくなる方法の見つけ方として、気持ちいい、心地よいと思うことを探すことです。もっと具体的にしりたい人は心身養生のコツを読んでみてください。ヒントが見つかるはずです。

他に思い付く方法としては日記など気持ちを書き出すことがあります。紙が自身の思いを否定することはないため、受け止められる経験が少しできます。マインドフルネスなどもありのままの自分を受け入れるトレーニングになるのではないかと思います。またペットを飼うなども良いみたいです。ただし、ペットで終わらさずに最後は人間に帰着することが必要なのだと思います。野良猫の支援団体などは猫の保護から人間の関わりに帰着しており、そうした意図はないのだろうけど良い仕組みだなと思います。
また、人と時間を共有することも大切で、習い事をする、スポーツサークルに参加するなども良いと思います。そこで人との関係性がうまれるとなお良いですが、生まれなくてもただ言葉を介さずに共通のことをする、思い思いに他のことをしていても時間を共有することが大切なのです。

6.まとめ

今回は愛着障害、PTSDについて解説していきました。

トラウマとなるイベントがあり、人間関係を築いたり維持するのが難しくなり、生きづらさを抱え、自分でも気がつかないようなことでフラッシュバックを起こします。フラッシュバックに対しては指いい子など効果的だし、漢方を試したい方は受診をされてみてください(桂枝加芍薬湯と四物湯の組み合わせや十全大補湯などの神田橋処方を試したいと相談してみてください)。

また、信頼できる人にそばにいてもらう他にも日記を書く、マインドフルネス、ペットを飼う、習い事やスポーツなど人と言葉を介さない時間を共有することも一助となります。

なによりも、自分で症状や人生をコントロールできるという実感が大切であり、いろんなことを体験し、そのなかから自分に合う方法を見つけることが大切なのです。