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消防団の組織概要等に関する調査(政策短信20201202号)

政策短信とは

地方議会議員向けに、国の政策の動向を紹介します。永田町・霞が関で決まった政策が生活にどう影響するのか、議会質問に向けたポイントなども発信します。

消防団の組織概要等に関する調査

総務省消防庁は、全国の市区町村(消防団事務を実施している消防本部、一部事務組合を含む)を対象に、2020年4月に行った現在の消防団の組織概要等に関する調査の結果をとりまとめ、公表した。(12/15付)

調査の結果、2020年4月1日時点での消防団員数は約81万8千人と、前年比で1万人以上の減少となった。1万人以上の減少は2年連続となる。

消防団員数

消防庁はこの結果を踏まえ、消防団員報酬や出動手当等を引き上げることによる処遇改善等、消防団員の確保に向けた取組を依頼する書簡を、総務大臣より都道府県知事及び市区町村長に対して発出した。

消防団とは

消防団とは、消防組織法に基づいて各市町村に設置される消防機関である。消防組織法においては、消防本部、消防署と並列して消防団が置かれており、市町村が消防事務を行ための機関とされている。

消防組織法(昭和二十二年法律第二百二十六号)
(消防機関)
第九条 市町村は、その消防事務を処理するため、次に掲げる機関の全部又は一部を設けなければならない。
 一 消防本部
 二 消防署
 三 消防団

消防団の構成員である消防団員は、消防団員の他に本業を別に持つ一般市民で構成されており、自治体から装備及び報酬が支給される非常勤の地方公務員である。常勤公務員である消防職員とともに災害発生時の消火活動や救助活動、水防活動を担う他、地域の防火・啓発活動も行っている。

消防団の現状

消防団員の数は60年以上にわたって減少の一途をたどっている。就業構造の変化により消防団員に占める被雇用者の割合が高くなってきており、被雇用者団員比率は73.2%にも上っている。退団理由として「本業が多忙」や「活動の負担が大きい」といったことが挙げられており、消防団活動と本業の兼ね合いが難しくなっている現状がある(平成29年度「消防団員の確保方策等に関する検討会」報告書による)。

消防団員の確保方策等ni-11 (2)

前出の報告書では、

操法訓練のみならず、その他災害時に求められる多様な役割を果たすために必要な知識・技術を身につけるための訓練等をバランスよく行うことが必要である。(中略)こうした訓練を行う際は、基本団員に加重な負担がかからないよう、真に必要な訓練を効率的なスケジュールで実施することが求められる。

と、消防団員の訓練の内容の充実と負荷の適正化の必要性を指摘する一方、処遇についても以下のとおり言及している。

消防団の活動実態に見合う適切な額の年額報酬や出動手当を支給できるよう、その水準の引上げについて検討していくことが求められる。特に、年額報酬等が低い地方公共団体においては、地方交付税単価(年額報酬36,500円、1回当たり出動手当7,000円)を踏まえ、早急にその引上げを行う必要がある

市区町村別年額報酬条例額

消防団員の報酬や手当は市町村が条例により決定することとされているが、その財源は地方交付税により国から手当されている(年額報酬36,500円、1回当たり出動手当7,000円)

一方で、地方公共団体が定めている報酬にはばらつきがあり、前述の地方交付税単価を下回る地方公共団体は多い。月数千円から十万円超まで、実に20倍以上の開きがある。

市区町村別年額報酬条例額一覧表(階級:団員)

消防団の組織概要等に関する調査(令和2年度)

大規模災害時や高齢化に対応した消防活動を行っていくためには、常勤公務員である消防職員だけではなく、地域に密着した存在である消防団員や自主防災組織や社会福祉協議会、ボランティアなど、様々な主体との連携が重要である。中でも消防団は、消防本部、消防署と並ぶ消防行政の機関であることから、担い手の処遇改善は喫緊の課題と言えるだろう。

実際にあった議会質問

「”消防団” "確保"」の検索結果

議会質問の例(案)

本市の消防団員の報酬は年額○○万円と、交付税単価と比べて著しく低いが、防災の担い手を確保する観点から、交付税単価と同水準まで引き上げるべきと考えるが、見解如何。引き上げが難しい場合は、その理由を問う。
消防団は消防組織法に基づいて市町村に設置される消防機関であり(同法第9条)、市町村の消防は市町村長が管理することとされている(同法第7条)。消防団員が地域の防災の担い手であることから、団員確保に向けた施策に行政が率先して取り組むべきではないか。特に、訓練の効率化や負担の軽減については、消防団任せにするのではなく、首長がリーダーシップを発揮することが必要ではないか。
地域住民の多くがサラリーマンである現状を鑑み、本市での消防団のあり方について、機能別団員制度や地域の自主防災組織と関係も含めた議論が必要ではないか。水災害の激甚化や大地震などに備えて前広な検討が必要と考えるが見解如何。


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