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20年越しのオランダ大使公邸とチューリップ、それに東京民初めての東京タワー。

タイトルを見ればわかるとおり、いろいろ要素があってどう書けばいいのかわからず1か月近く寝かせていたのだが、別に寝かせてもとくべつ素敵にまとまるわけではないという気もしたので、もうこの際エイヤッとやっつけてしまおうと思う。

4月10日(日)、「オランダ王国大使公邸 チューリップガーデン一般公開イベント」に参加してきた。


オランダ大使公邸と私

その数日前、私はテレビのニュースでその話題が流れたのをみかけ、はっ! となった。

というのも、20年ほど前、私はバイト先でたまたまオランダ大使館関係の方に遭遇したことがある。

当時、私は日本近代建築(明治時代から戦前までに竣工された建築)を好きになったばかりで、個人的な近代建築ブームの真っ最中だった。今ほどネット情報が豊富ではなく、ぼちぼちgoogleが登場という時期。近代建築の情報はネットではなく紙が頼りで、『日本近代建築総覧』という本の近代建築リストを頼りに見学にでかけていた。

そのリストにオランダ大使公邸(1928(昭和3)年竣工、設計は横浜「外交官の家」で知られるガーディナー)が載っており、当時バイト先でたまたま遭遇したオランダ大使館関係の方に一度見学できないかと尋ねてみたのだが、大使が生活されているため不可能というお答えだったと思う(※うろ覚えです)。

『日本近代建築総覧』に載っていても、住人の方が今も使っておられたり、一般公開されていない施設だったりと、見学できない建築は多かった。なので、見られないなら仕方ないな〜ぐらいの感じであきらめ、それきり忘れていた。

ここ10年は、近代建築をリノベーションしたカフェなどは当たり前の存在となり(もはや古民家カフェは多すぎて全部を訪ねるのは不可能だ)、20年前には非公開だった施設も改修のうえ一般公開されたりして、近代建築を取り巻く状況は大きく変わった。

知らないあいだに旧公衆衛生院が美しくなって一般公開されていたのを知ったとき、時代は移り変わったなぁと思ったものだ。

そんな経緯があったので、ニュースでオランダ大使公邸のチューリップガーデンが公開されるという話を聞いて、あのとき見られなかった公邸が!? しかもチューリップつきで? 見られるの!? と目を剥いた。

私の中の近代建築ブームはとうの昔に過ぎ去っており、ここ15年はあまり近代建築の情報も集めていなかった私は、2015年までオランダ大使公邸チューリップガーデンの公開があったことすら知らず、今年7年ぶりに公開というのも寝耳に水。

ともあれ、確かなのは、今年の公開イベントに乗っておけば、チューリップのみならずオランダ大使公邸の内部も見られるということ(公式サイトに「通常では見ることが出来ない、大使公邸内も同時に公開いたします」とある)。

個人的な近代建築ブームから20年越しで、とうとう私もオランダ大使公邸の建築と相まみえるというわけなのだった。

4月10日(日)オランダ大使公邸公開2日目に参加

オランダ大使公邸チューリップガーデン一般公開の日程は、4月8日(金)と10日(日)の2日間。ニュースで流れたのが、7日ごろか。無職なので金曜日でも問題ないのだが、8日は別にでかける予定を入れており、混雑するだろうことは予想しつつも10日に行くことにした。

(↑8日にでかけたのも念願の場所だった。夢にまで見た酒造である)

さて、4月10日(日)。
私は満を辞してオランダ大使公邸のある神谷町に向かった。

一般公開のオープン時間は朝10時。ニュースで流れたせいか、8日(金)の公開日もそうとう混雑したらしく、オープン時間以前に列をつくらないようにと公式サイトでアナウンスがあった。そこで、ちょうど10時に着くように出発。

移動中、twitterを検索して様子をうかがう。すると、9時台にしてすでに大行列ができているというツイートがちらほら。

地下鉄の駅を出てすぐ、もう明らかにオランダ大使公邸から続いていると思しき行列があった。同じ電車を降りて行列の最後尾に向かう人々の列と、すでにできている行列とがすれちがい、だいぶ先で合流した。

これはヤバい。今回の一般公開は、事前予約なし、入館者数が定員に達し次第終了。10時のオープン時間とともに列に並んだのに、すでに500メートルほど(※google mapで計算)並んでいた。500メートル分の人間って何人?

公式サイトに出ていた定員数と列とを不安な気持ちで見比べつつ、列が進むのを待った。列はオランダ大使館と公邸のある区画をぐるりとまわっており、坂道をのぼってようやく入り口の門が見えてきたころ、鮮やかな青いスーツが目をひく白人女性が現れた。

女性は入場整理券を配っていた。やったーーー間に合ったーーーーー。

整理券ゲットだぜ

オープン時間に並んで昼過ぎかぁ。でも、間に合ってよかったー。

整理券を受けとったのは10:35頃。まる3時間の空き時間が発生した。

東京民、初めての東京タワーへ

初めての東京タワー

東京タワーは、オランダ大使公邸から徒歩7分の距離にある。

前に千鳥ヶ淵花見の記事でも書いたとおり、私は東京生まれ東京育ちながら、今まで一度も東京タワーに行ったことがなかった。

ちなみに、習っている日本舞踊の先生(同じく東京生まれ東京育ち)にその話をしたところ、「そんな、東京タワーに行ったことがないなんて信じられないわ。だってあれができたとき、ずいぶん鳴り物入りだったじゃない」と言われたのだが、東京タワーができたころは私はまだ生まれていない。というか、なぜ先生の娘さんより年下の私を自分の同級生みたいにおっしゃるのか……笑。

それはともかく、思ったより早く東京タワーに行く機会が巡ってきたというわけだ。それにしても、タワー系の見物料金はなぜこんなに高いのだろう。正直なところ無職で金欠なので、てっぺんの見学ツアーは避け、最初の展望台だけをのぞきにいくことにする。

東京タワーのお腹あたりの展望デッキから
写真左にオランダ大使公邸も見える
床がスケスケになっているスポット

高いところはそれはそれでそれなりに楽しいのだが、わあ〜いい眺め〜以外に感想がない。展望デッキを一周し終え、次は東京タワー直下にあることで知られる芝の増上寺へ。

増上寺への坂を下りつつ、東京タワーを振り返る

増上寺界隈で花と緑と篠田桃紅を楽しむ

増上寺敷地内にて、散りかけの枝垂れ桜

増上寺の敷地内では、花は散りかけ、まぶしい新緑が出はじめたころだった。

もみじの新緑がまぶしい
増上寺の本堂と東京タワー

ここでお昼時になり、ごはんを探しに出る。この日はお腹の調子が思わしくなく、少し歩いたところにあるエクセルシオールのドリアが沁みた。

エクセルシオールのドリア

それから再度、増上寺に戻る。正門の前は、通りに沿って緑地の公園が続いており、マドリードのプラド美術館近辺の並木や木漏れ日を彷彿とさせる(ただし、だいぶ要素が和風)。芝公園10号地というらしい。

芝公園10号地の新緑
道路に沿って公園が続く。素敵
増上寺の正門から、再度、敷地内へ

実は増上寺に来たのには、目的がある。それは、篠田桃紅の作品を見ること。

増上寺宝物殿展示室ホワイエの篠田桃紅作品

前々から、篠田桃紅の作品が増上寺にあるという話は知っていたのだが、増上寺に来る機会がこれまたなくて、どんな状況で展示されているのかネット情報だとよくわからなかった。

実際に来てみれば、増上寺宝物殿のロビー部分、展示室ホワイエなる部屋にでかでかと設置されていて(おそらく本堂にも別の作品があるはずだが、今回は時間がなくて探しにいけなかった)、ロビー部分なのでなんと無料で見られる。太っ腹! ちなみに写真はないが、玄関部分にももうひとつ作品が展示されている。

広々とした空間に一面の篠田桃紅作品、しかもあたりにはYoshi Horikawaさんなるサウンドクリエイターの方が作曲したアンビエントなBGMがかかっている。日曜日の午後でも、作品の前にはほとんど人がいない(人はみんな宝物殿の展示のほうに行ってしまう)。

作品と自分自身、それにアンビエントなBGMしかない場所で、なんというか没入感がすごかった。瞑想的な空間。佐倉にあるDIC川村記念美術館のロスコ・ルームの体験に近いかも。そういえば、昔、川村記念美でやったロスコ展の名前が「瞑想する絵画」だった(当時はアート好きではなかったので行けてないけど。展覧会って本当に一期一会ですよね)。

こういう場所で、長い時間をかけて空間を味わうのが好きだが、今回は本題のオランダ大使公邸の入場時間が近づいていたので、少しだけ味わって離脱。なかなか充実した空き時間だった。

東京タワーがリフレクションするビル

いよいよオランダ大使公邸に入場

門の隙間から公邸をのぞきこむと、中から行列が続いていた

時間が近づいたので、オランダ大使公邸前に戻り、行列の最後尾についた。列に従って敷地内に入り、列のまま公邸の玄関へと向かう。

敷地内は多種多様なチューリップの鉢植えが満載
水仙もフレッシュ

洋館前のロータリーを一周して、とうとう中へ。

ロータリーの花壇もかわいい
しかし大量の植木鉢だ……

ひゃああ、内部オシャレ!

大使、よくこんなオシャンティー空間で生活できるよな。

近代建築のお屋敷の必需品、階段ホールのステンドグラスも最高。

この光がよくとりこまれる明るい空間、お雇い外国人系の設計らしいよな。日本近代建築で設計が日本人だと、わりと光量が少ないイメージ(個人の印象です)。

ほんっとオシャレだな〜! 絶対ここに寝転がって漫画とか読めないよね。

限られたいくつかの部屋を見学したあとは、ベランダから外へ。拙者ベランダ大好き侍なのだが、いかんせんみんな行列になっているので、無人の写真は物理的に不可能。無念。

窓もかわいい〜!
拙者、ベランダの手すりの隙間からさす光大好き侍でもあります

あとはひたすら、チューリップガーデン。

ひらいたチューリップもかわいい。ビタミンカラーの力を感じる
優美だなぁ……

チューリップ以外もすばらしかった。

オランダ大使、こんな楽園空間で生活してるのか……。

背後に見えたビルに月がかかっていた

庭園をひととおり見終わっても、まだまだこれでもかとチューリップが出てくる。

色の洪水でもうお腹いっぱい。これは並んだ価値あったなぁ。
界隈の散歩も合わせて、とても充実した一日になった(日記)。

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