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肩こりを背負って、温泉旅

 3月9日(水)から1泊2日、2か月ぶりに箱根温泉旅にでかけてきた。

 おりしも、2月から個人サイトにWordpressを導入するべく作業していたり、3月からはさらにnote毎日更新月間を始めたりと、無職にしてはデスクワークが増えていた。もちろん転職サイトで求人行脚も継続中。
 気がつけば、単なる肩こりだけではなく、今までに経験のない、肩甲骨付近にたえずかすかな痛みがあるステータス異常状態だった。

 そんな状態で迎えた旅の初日。朝起きると、やはり肩がこわばっており、少し首に痛みも感じた。相変わらず背中も痛い。この調子だと、旅の途中で頭痛になってダウンするんじゃ? という不安を胸に、荷物に頭痛薬を多めに放りこみ、小田急線に乗りこんだ。

初日:まずはまつだ桜まつりへ


 今回は、小田急線で小田原駅に行き、そこからシャトルバスで宿に向かう。復路も同じシャトルバスを使う。宿以外の遊びは、おおむね小田原駅近辺。という、なるべく交通費を増やさない、無職にやさしい旅だ。

 まずは、小田原駅に行く前に、新松田駅で途中下車。
 目的は「まつだ桜まつり」だ。新松田駅から少し歩いたところにある松田山という低山が、菜の花と河津桜に包まれ、天気がよければ富士山も見える。

あのピンクと黄色の山へ

 一昨年に一度、仕事がダメになったタイミングで訪れたことがある。当時それなりにしょぼくれていた私は、菜の花と河津桜の黄色とピンクが与えてくるパワーと美しい富士山に元気をもらった。昨年は新型コロナで中止になったので、2年ぶり2度目のまつだ桜まつりである。
 今年は寒さで開花がだいぶ遅れていたが、旅の直前の日曜日にようやく公式サイトの開花状況が「満開」になり、これもあって急いで温泉旅を決めたのだった。

一面のビタミンカラー

 満開を確認してから来たため、今回は咲いたばかりの瑞々しさはなかった。
 しかし、やはり何回見てもこの黄色とピンクの色には、目が喜んでしまう。ビタミンカラーとよくいうけれど、本当に目のビタミンである。

 花が遅れたために季節が進み、空は春霞そのもの。富士山の姿は一切合切見えなかったけれど、とにかく色のパワーは2度目でも十分有効だった。

 待ち望んでいた春、そのものの光景である。

開成フォレストスプリングスでトラウトバーガー


 昼ごはんは、以前、寄ロウバイまつりの際にたまたま通りがかって気になっていた、開成フォレストスプリングス。釣り堀である。

開成フォレストスプリングス

 小田急線で箱根方面に向かう際、線路が直角に曲がるポイントがあるのだが、ちょうどそこに広々とした池が見える。長年、箱根や小田原に向かうたびに、それが何なのかずっと気になっていたが、最近遅ればせながら釣り堀と知った。

ときどきトラウト的な魚が跳ねる

 開成フォレストスプリングスにはレストランがあり、釣り堀でも釣れるニジマスの料理を食べることができる。

 湧き水ファンでもある私。湧き水のある土地を訪れると、ニジマス・イワナなどを釣れる釣り堀がそばにあることが多い。そこでは、新鮮な清流の魚料理を食べられる。中でもニジマスバーガーに目がない私は、開成フォレストスプリングスのメニューにトラウトバーガーがあると知って以来、これを狙っていた。

開成フォレストスプリングスのトラウトバーガー

 念願のトラウトバーガーは、わりとオシャレ風の店内のわりに、サイズが控えめ(いろいろ偏見)なのが大変ありがたい。地味な外見でインスタ映え要素などはないと思われるが、味は抜群だった。これこれ。これですよ。味がよくて過剰なカロリーでないトラウトバーガー。こういうのを探していたのだ。

 ニジマスバーガーを食べたいばかりに、松田山から開成フォレストスプリングスまで徒歩30分ほどの距離を連れてこられた母も、「これだけのために来る価値があるわね」とご満悦。

 発案者のニジマスバーガー推し湧き水ファンである私も、にんまりである。

開成フォレストスプリングス近くの梅の花

湯の花プリンスホテルで温泉三昧


 そして、今回の本題、温泉宿に向かう。

 今回選んだ宿は「湯の花プリンスホテル」。

 箱根の中でも、小涌谷と元箱根港の真ん中あたりの高台にあり、ゴルフ場と温泉以外は何もないといってもおそらく過言ではない、温泉つきホテルである。

 この湯の花プリンスホテルは、箱根の温泉の中では珍しい白濁した硫黄泉で知られる。母の友人が、ここの温泉がお気に入りだと教えてくれたそうで、「白濁したお風呂に入りたいの❤️」と母がのぼせあがってしまったため、今回の宿に選ばれた。

 今回、そこそこの肩こりを背負ってやってきた私は、本当に休養のためだけにこの宿に来た。よって、徒歩圏にほぼ観光地がない立地(元箱根港まで徒歩1時間、小涌谷駅まで同じく徒歩1時間10分)のは「まぁそれはそれで」といったところ。

 小田原駅の北条早雲像の下からシャトルバスに乗り、所要時間40分。
 チェックイン後、部屋へ案内してくれたスタッフの方に母が「白濁した温泉が楽しみなの❤️」というと、スタッフの方はいきなり目の色を変え、「私は温泉が好きであちこち行っているのですが、ここの温泉は他の温泉とはひと味ちがいますよ! 肌がすべすべになり、化粧水を塗る必要がなくなります。ぜひお楽しみください(主旨)!」と、アツく語ってくれた。

湯の花プリンスホテル中庭

 部屋の中の案内書きに、ここの温泉は空腹で入ると湯あたりしやすいので、水や食べ物を少し食べてから入ったほうがいいといった注意(内容うろ覚え)が書かれていた。今までの温泉では、こういう注意書きには遭遇したことがない。
 実は以前、砂蒸し風呂で体調不良になり、言葉どおり倒れたことがある。しかも2回。血流の関係だと思われるが、今回もそこそこの肩こり状態でやってきた。私は警戒し、部屋にあった温泉まんじゅうを食べ、お茶を飲み、効能が強そうな温泉に備えた。
 新型コロナの関係でか、ここの大浴場はQRコードを読み取って現在の混雑状況をチェックできるシステムになっている。チェックインの時間からしばらくたち、女湯が「空いています」になったタイミングを見計らって、われわれは大浴場に向かった。

湯の花プリンスホテル館内

 大浴場はわりとこぢんまりしており、洗い場は5人分ほど、浴槽も5人程度までにしておきたいぐらいの広さの内湯(無色透明だが硫黄泉)と、それよりは若干広いぐらいの露天風呂(白濁した硫黄泉)の2つがある。
 近年はなんとなく、無臭で無色透明の温泉か、茶色い温泉に入ることが多かったので、硫黄泉は久しぶりだった。子どものころや若いころは、「卵くさい」と言って、硫黄泉にあまり好感をもっていなかった覚えがある。

 しかし、湯の花プリンスホテルの硫黄泉は不思議だ。硫黄臭を快く思ったことなどないのに、ここの硫黄臭はやさしい。なんというか、清潔感のある硫黄の匂いで、まったく気にならない、むしろ心地よい匂いといってもよかった。
 温泉の温度もちょうどよかった。われわれはのぼせる体質なので、われわれにとってはやや熱めだったが、おそらく一般的な温度(40度ぐらい?)だと思われる。露天風呂のほうがやや温度は高めで、外気の寒さといいバランスになっていた。

 注意書きで、どんなに効能が強い温泉なのかと怯えていた私だったが、純粋に快適だった。白濁した露天風呂にのぼせあがってこのホテルを選んだ母も、「湯あたりを起こすのは、気持ちよすぎて長風呂しすぎるからじゃないかしら❤️」とご満悦。

 満天の星が見られる、という触れ込みの露天風呂だったが、今回は曇天のため星空はほぼなし(4粒ぐらいだった)。
 きっちり夜中まで、早朝からも入れる大浴場で、眺めは芦ノ湖ビューなどではないものの、東向きであり、早朝に来ると日の出を楽しむことができそうだ(私は6時すぎに来たので、だいぶ日が高くなっていた)。

 一度、脱衣所でしゃべりっぱなしの若い客がいて、われわれは急いで脱衣所を出たため化粧水を塗り忘れたのだが、肌は全然問題なかった。けっこうな乾燥肌体質なのだが。温泉好きのスタッフさんの言うとおりだった。

 食事は、朝食と夕食の2食付き。分量少なめのプラン。

夕食。左がメインのひとつ、鶏胸肉のサラダ
夕食のメインのひとつ、豚肉の陶板焼き。バターがかかっていておいしい


 夕食のメインディッシュが豚肉・鶏胸肉で、反射的に「コスト下げてきたな!」と感じるメニューづくりだったが、味はおいしかった。わりと味が薄めで、酒を飲みたくなる味ではないが、朝食の「ごはんのおとも勢揃い」のようなメニューを見ても、シェフは非飲兵衛のごはん党なのではないかと想像している。ヘルシー党の方、純粋に湯治目的でこのホテルを選んだ方にはよい食事内容ではないだろうか。

朝食。辛子明太子はじめ、ごはんのおとも的なラインナップ。さつま揚げ(写真左)うめぇ〜

 日本酒は、この日立ち寄った開成フォレストスプリングスの近くにある「瀬戸酒造店」の「セトイチ いざ」をはじめとした4種と、富士宮市の酒造の日本酒があった。「セトイチ いざ」が美味なのはわかっていたが、ここで飲むとけっこうなお値段設定だったので、いちばん安い富士宮市の知らない酒にしたが、これが大ハズレ。

 食事の味つけが飲兵衛向きでないのも相まって、今回の旅行では暴飲できなかった。もちろん、そのほうが健康にはよいに決まっている。

食事の会場から見える人口の滝、カッコいい。「バブル期のプリンスホテルの力を感じる」と母。ちなみ人がいないときは水が止まるそうな

 部屋は和室1室に3人で泊まったが、建物自体は古いものながら、きれいにリノベーションされた広い部屋でとても快適だった。部屋からゴルフ場が一望でき、かすかだが芦ノ湖も見えていたと思う。

朝起きたときの部屋からの眺め。たぶん少しだけ芦ノ湖の湖水も見えている

 まとめると、湯の花プリンスホテルは温泉自体がとにかくすばらしく、食事は健康路線なので、日頃の疲れをとるという目的にはうってつけの宿だった。

 今回、1泊2日で4回も温泉に入った。あの旅から1週間たったのだが、まだあのときの快い硫黄の匂いが体に残っている。私は快いのだが、外出の際よその人に「こいつ、硫黄くさっ!」と思われていないことを祈る。

2日目:二宮吾妻山で菜の花ハイキング


湯の花プリンスホテルの休憩スペース。朝のチェックアウト時間はフリードリンク、他の時間は有料


 旅の2日目も、しつこく温泉を堪能してからチェックアウトした。10時チェックアウトで、シャトルバスの時間が10時45分だったので、無料の休憩スペースでフリードリンクのコーヒーなどを飲みながら、バスの時間を待つ。
 余談だが、ホテル内の自販機にあった柿ピーがおいしい。フリードリンクのマシンは若干ポンコツ気味で、昭和のゴルフ場らしくて風情がある(?)。

 シャトルバスで小田原駅に戻ると、北条早雲像の下から今度はタクシーに乗りこむ。
 まずは、歌の先生に頼まれた「ういろう」を買いに、有名なういろう屋さんへ。先生に頼まれたのは漢方薬の「ういろう」。別途、お菓子の「ういろう」も買い、タクシーに戻る。

 タクシーで、今度は比較的新しいスポット「TOTOCO小田原」へ。やはり一度は漁港の食堂のような場所で海鮮丼を食べてみたいのである。海鮮丼はまぁまぁのクオリティといったところだが、お土産売り場が豊富で助かる。好物の井田塩研究所のポテトが買えてラッキー。

TOCOCOの海鮮丼。クオリティはまぁまぁ
TOCOCOからの眺め

「TOTOCO小田原」の最寄り駅は早川。そこからJRで二宮駅に行き、2日目の本題、二宮吾妻山に向かう。

二宮駅から見える二宮吾妻山

 二宮吾妻山も菜の花と河津桜と富士山の名所だというのだが、今回は春霞や雲で富士山はまったく見えず、河津桜はどこにあったのかわからなかった。

二宮吾妻山の頂上からの眺め。右のほうに富士山があったと思われる
頂上以外にもある菜の花スポット。ここの菜の花はまだフレッシュだった
展望台から二宮駅を望む


 でも、あまりにも楽ちんなハイキングコースだというのに、眺めはすばらしく、事前情報のとおりお得感のある低山だった。

気づいたら背中の痛みが消えていた

 ということで、1泊2日で花と温泉を満喫して帰宅した。

地元に戻ってお腹が空きすぎて食べたホットケーキ、いちごクリームトッピング

 旅の前に肩こりを悪化させ、頭痛薬も荷物にたっぷり詰めこんだにもかかわらず、体調不良のかけらもなく帰ってきた。
 気づいたら、しばらく続いていた例の背中の痛みも消えていた。湯の花プリンスホテルの温泉の効能なのか……! ただ気持ちよくて入っていただけなのだが、4回も入浴した甲斐があった。あと、平常よりしっかりと睡眠もとったので、そのためもあるだろう。

TOCOCOで買った金目鯛の干物と、帰り道の藤沢駅で立ち寄った酒屋で買った「セトイチいざ」

 今回の温泉旅は、完全に私を元気にした。旅の翌朝、起きだすと、さまざまなことに対する意欲に満ち満ちており、私はウキウキとデスクワークの作業を進めた……そしてその日、再度あの背中の不思議な痛みが帰ってきた……。

 私はあきらめ、すみやかに整体の予約をとったのだった(完)。

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