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『ま夏。八月二十六日。退院日』

五時半。爽やかな朝だ。
鎖骨に埋めた、カテーテル・ボートの傷みもない。鳥のように、ぱたぱたと九階の私の大部屋から飛び立っていった。

さあ、これからは三週間で一回のクールから、二週間で一回のクールに変わる。ただ、二週間の最初の三日間で抗がん剤治療は終わる。あとは、抗生剤を日に朝夕二錠づつ服用する。入院中に最初の三日間は終えた。体調不良はなし。每日、三食しっかり食べた。入院食は、魚も多く、シーチキンなども良くでた。初めて入院される方は、フロスを持っていったほうが無難でしょう。咳こんでいる入院患者もいるので、あわせてうがい薬もあるといいと思います。そう、うがい薬は口内炎の予防にもなる。
看護師に「口内炎大丈夫ですか?」と、よく聞かれた。それだけ、患者側にストレスがかかっているのだろう。免疫力もおちると聞く。

関係ない、話をしよう。オアシス再結成だと。信じていいのかわからないが四半身四半疑で躍らされて見ようじゃないか。

戻ろう。入院すると『屁』の概念が変わる。屁は健康の証なのだ。ぷうぷうするのだ。四人部屋だから、あちらこちらから、ぷうぷうぷうぷう鳴るが、それでいい。部屋の換気も充分効いているので、ぷう仕放題なのだ。

同部屋の私以外の三人は、虫垂炎らしい。私もこの時期あたりに発症した。なにか、季節と関係があるのだろうか。気圧とか。

九時三十分。荷物まとめ完了。

午前中には帰宅出来た。
体調はいい。体調は日日刻々と変化する。1クール目と2クール目では、まるで違った表情を見せる事もある。何度も言うように、これは相性だ。抗がん剤治療から脱落しても仕方がない。私も、「その者らしさ」を、捨ててまで抗がん剤治療を続けようとは思っていない。

だから、一度目の抗がん剤治療は落第したのだ。二度目は、まずまず耐えられる事が出来た。あの地獄のような『腹下り』から、よく生還できたものだ。三度目の火蓋は切られた、はじまりは悪くない。


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