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『毎日が尻騒ぎ』

まずい、まずい、まずい。
2クール目の最終日が始まってしまった。副作用の『ゲリラー』が治まらない。毎日、毎日、毎日。同じ事を書いている。
まるで、夏休みの最終日に宿題に追われている気分だ。宿題は間違いが許される。要は穴を埋めればいい。

しかし、どうやっても、私の尻の穴が埋まらないのだ。『妖怪じゃーじゃー』に取り憑かれたのかも知れない。また、『ガンかわいがり』患者にはそれぞれ手術歴などあって、なかなか一筋縄ではいかない。
私は盲腸癌で大腸の一部を切除しているので、一般の人よりも大腸が短くなっている。100メートル走のつもりで『ベン』を全力疾走させてはいけない。競技が違うのだ。いわば、私には70メートル走分の大腸しかない。70メートルを『ベン』が走る間に、ほどよく固まってくれなければならない。かーるく、ベンには走ってほしい。そういう『軽便状態走』なのだ。とにかく、カールとベンが仲良くジョグしてくれたらいい。

漢方も含めてあらゆる下痢止めに節操なく手を出している。
どれも効果は薄い。この軟弱薬め。このままいくと、化学療法中に点滴スタンドをゴロゴロ押しながら、4・5回はトイレにゆく事になる。下手をすると点滴中に漏らす。替えのパンツとジップロックを用意しよう。そんな状態だから、血液検査と尿検査だけで帰宅するかも知れない。一週スキップするのもいい。しかし、ゴールデンウィークもあり、予約が取れるかもわからない。ややこしい。

そして、今日の食事をどうするか。それで私の命運は変わる。必殺の『ファスティングフェス』か。それしかないか。ブルーベリー。バナナ。グミ。果たしてグミはいいのか。私は、フェットチーネグミに目がないのだ。後は、ごんじり(大根の漬けもの)。それで、凌ごう。「食、べ、な、け、れ、ば、でないぃ!(や、れ、ば、できるぅ!。の言い方で)」

『毎日が尻騒ぎ』、こんな日が来るとは思っていなかった。
「じゃーじゃーじゃーじゃーしてるねぇ」
私の目の前に『妖怪じゃーじゃー』がいる。因みに私は便座に座り、安心感に包まれている。一生、便座に座っていたい。便座に恋してるみたいだ。
「おう、来たか」
「いい、じゃーじゃーしてますねぇ」
「いい、仕事してますね。みたいな言い方だな。私の仕事はじゃーじゃーではないぞ」
「中島誠之助はジョブの意味で『仕事』といっている訳ではないぞ」
ほう、『妖怪じゃーじゃー』は意外と知恵があるようだ。
私は訊ねた。「じゃーじゃー、お前、テレ東、好きなのか?」
「ふん。視てやっているのだ」
すると、妖怪じゃーじゃーの緑色の耳が弾むようにぴんとした。耳を澄ましているようだ。首もぴくぴく傾いでいる。ビートたけしみたいだ。
「何処かで、おいらを呼んでるじゃーじゃーがするぞ」
「そか、行け」
「おいらいくぜ。じゃーじゃーねー」
再び、『妖怪じゃーじゃー』は私の股をすり抜け下水管に吸われていった。忙しい妖怪だ。




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