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「シンガポールは世帯年収はなぜこんなに高いのか」データと実生活観察から感覚的に検証してみる。

先日、シンガポール政府から家計支出調査による報告書2017/18「REPORT ON THE HOUSEHOLD EXPENDITURE SURVEY, 2017/18」が発表されました。

https://www.singstat.gov.sg/-/media/files/publications/households/hes201718.pdf

こちらにブログ記事「The Average Singaporean Household Income: Where Do You Stand?」としてもまとまっています。

日本語の関連記事でも触れられていましたがシンガポールの平均世帯年収が発表されその金額に驚いた方も多いと思います。

でも数字だけ追っていいのかなと思いシンガポールに住んだ3年半を思い出しながら、そして隣の国から通ってる視点から色々再考察してみました。(後からデータなどを加えてリライトする予定)

1:世帯年収の金額


シンガポールの家計収入の中央値はS$9,203と発表されています。シンガポールドルは現在の為替だと76円。単純計算すると699,428円が家計収入の中央値になります。

ちなみに日本の厚生労働省が平成27年に発表した最新の全世帯年収の平均値は545万8千円です。単純計算で12で割ると454,8333円。

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/03.pdf

この数値だけ比べてしまうと「ほらやっぱ高いやんか」と思う方も多いです。

よく比較されるポイントとして「ラーメンの値段」。シンガポールには一風堂があります。一風堂のラーメン単価を比較してみましょう。

白丸元味 790円 17S$(1292円)

赤丸新味 850円 18S$(1368円)

一風堂からか麺 880円 19S$(1444円)

シンガポールドルに76円を乗算(税金、サービス料を除く)

参考:

日本価格:https://www.ippudo.com/1015_nishikikouji_web.pdf

シンガポール価格:https://www.ippudo.com/wp/wp-content/uploads/2017/01/c28ffb39733bbc6c6a11b430eb65307f.pdf

高い。。。ちなみにこの価格はあくまでベーソック、全部盛りだともっと高額になります。

では、なぜ「シンガポールの人は高いラーメンを躊躇なく払えるほどに世帯収入が多いのか」を検証してみましょう。

2:高い世帯収入を維持できる理由

2ー1:共働きの環境が整っている

この世帯年収は日本のように一人の稼ぎ手が原則ではありません。シンガポールの共働き率は84パーセントです(日本総研:2015 年アジア主要都 市コンシューマーサイト比較調査より)。

家事や育児はメイドや同居している祖父母などの協力を望むことができます。働き手が多ければ、当然世帯年収は上昇します。

ちなみにシンガポールではすべての層の収入が上がっているという驚きの統計が出ています。これはすべての層が働きに出やすい環境が整っているということの証明でもあります。この世帯収入も就労人数の違いを確認すると非常に納得できます。

ちなみに、前出した統計(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/20-21-h28.pdf)を世代ごとにみてみると「三世代世帯の平均所得金額は、877万4千円」。(日本の場合は高い年金収入の影響大)つまり住環境、生活や保育とともに労働環境が整っていれば高い世帯収入を保てるということでもあります。

2−2:外食産業が整備、そしてその環境を利用できる心理的開放感。

外食産業、家事委託産業が整っていて「その産業を使うことに誰も躊躇しないマインドであることは感じます。生活するにおいて「何々をしなきゃいけない」と感じることが本当に少ないことを日々実感します。それはあまりに皆自分と違うところから始まるので周りを気にしていないというのもあります。(ただホーカーの食事だけ食べ続けることが健康にいいのかは別面から検証したいです、私は毎日は食べられなかった)。

2ー3:被服に関してバリエーションが少ない。

東南アジアに暮らしていると当然ですが基本一年中夏です。よってそこまで洋服を常に買い換える必要がありません。年中暑いので「屋外徒歩移動を避けるように」生活するスタイルが浸透しています。よって靴も消費度も少ないです。そして就労服装に関してのドレスコードは非常に緩いです。出勤時や内勤のみの場合は驚くようなカジュアルな服装も珍しくありません。

しかし、室内は、驚くほどに寒いです。なぜこんなに寒くしても平気なのか、まだ理解できないでいます。。

2ー4:住環境の変動に心配がない

シンガポールにはHDBと言われる政府が販売している公共住宅があり、こちらに国民の8割以上が住宅を取得し生活しています。

公共住宅?狭いんじゃないの?と感じる方もいるかもしれません。高級HDBは日本の高級マンションよりも高級感あふれています。ここに三世代で所有して住めるって生活面ですごく安心できますよね。

2ー5:国の広さが小さい、交通が整っているので移動がしやすい

いくら共働き環境が整っていても働く場所まで移動に時間がかかる場合は就労に多大なストレスがかかります。シンガポールは東京23区ほどの大きさで電車やバス移動でもそれほど多大な時間がかかりません。しかも日本のような満員電車もありません。市民の足NRTが常に万全とか限りませんがもし何かトラブルがあったとしてもバスやタクシー、配車タクシ5ーサービスであるGrabを使えば移動は容易です。

つまりシンガポールは1世帯において高い収入を維持できる、そして環境を整えるためにサービスを使用するため経済がまわっているから各世帯が高収入を維持できているのです。これは人口が約560万人と非常に少ない上に国が豊かであるから出来るということでもあります。

3:では、問題点はないのか

では、問題点はないのでしょうか。いくつかの問題点が既に指摘されています。

3−1問題点その1:就業環境の維持が最優先されるため少子化に歯止めがかからない

就業環境が整っているということにより現在の世帯収入は維持されるということは、出産や家族の増加によって収入が一時的とはいえ減少することでもあります。そのような影響故、シンガポールの少子化は実は日本より深刻です。

3−2:問題点2:安価な食事を支えている外食産業を引き継ぐ若い世代の不足

シンガポールの台所と言われるホーカーですが、近年は次世代への継承問題が表面化しています。重労働である故店舗の継続が困難という状況も各所で見られます。シンガポールのホーカーはHDBと言われる公共住宅エリアに隣接していることが多いのでなかなか行きづらいのですがでも一度足運んでみるとすごく楽しいと思うのでオススメです。

報告書を読みながらシンガポールの世帯の現状、そして未来について考察してみました。

お隣の国からは、以上です。