保険業界で次の10年に起こる5つのパラダイムシフト予測
初めまして、津崎です。
保険プラットフォーム「SEIMEI」を開発運営するSEIMEI株式会社を経営しています。
自分なりに考えた「保険業界の次の10年のパラダイムシフト5つ」についてゆるく初noteを書いてみます。
長年保険セールスに携わってきたので僕の予想はセールス領域に偏ってしまっているのと、海外トレンドはまだまだ不勉強なのですが、お付き合い頂ければ嬉しいです!
※記事サムネイルは2019/12/23に起業の科学著者田所さんにピッチしてフィードバックを頂いたときの田所さんとのツーショット写真です。
①非対面募集の全面解禁
僕がSEIMEIのピッチをしていると、参加者から、
「津崎さんはスマホ完結で加入できるような保険サービスをなぜやらないんですか?」
と結構な確率で聞かれます。
この疑問は消費者の方々からすると最もだと思いますが、答えはとてもカンタンで、
「違法だから」
です。
現在の日本では、一定以上の保険金額の保険契約は保険募集資格を持った募集人が契約者及び被保険者と対面で手続きをしなければならないという保険業法規制があります。
オンラインで何でも買える時代に逆行しているこの業法は、一重に既得権益の保護のためでしかありません。
つまり、全ての保険契約がオンラインで完結してしまうと、全国23万人の対面前提で組織された直販社員(その多くが、いわゆる生保レディー)が組織構成の大幅な変更を余儀なくされてしまうわけです。
しかし、次の10年間で日本の労働人口が10%以上減ることは確実です。
人海戦術を維持できなくなる日が近い将来に必ず訪れるので、保険金額に関わらず、非対面募集は全面解禁になるはずです。
とはいえ、営業職によるコンサルティングサービスが不要になるということではなく、保険コンサル部分についてはweb会議が主流になっていくでしょう。
②P2P保険の隆盛
保険はそもそもがリスクシェアリングの概念で成り立っている金融商品ですが、P2P保険は従来の保険会社が担ってきた業務のほとんどをソフトウェアで自動化できるわけですから、理論上は流行らないはずがありません。
保険商品組成コストも劇的に下げることができるので、商品開発コスト面で損益分岐採算が合わないという理由でこれまで存在し得なかった一見マニアックな保険商品も数多く生まれ、消費者にとっての利便性は増していくことでしょう。
今日の時点では国内ではJustincase社だけがこのP2P保険を手掛けていますが、すぐに大手も次々と参入し、保険マーケット内で一定シェアまで成長すると予想します。
但し、日本はP2P保険で先行している中国と違って、既存の保険商品に明確な「負」があるとも思えませんので、P2P保険の浸透には相当な時間がかかると思います。
また、マジョリティーにもなり得ないと考えています。
③キャッシュレスに伴う保険料・保険金・給付金のオペレーション変革
僕は2008年24歳のときに新卒でジブラルタ生命に入社し、リテール営業で社会人生活をスタートしたのですが、
「初回保険料を現金で預かり、お客様に紙の領収書を渡す」
という当時の体験を今でも鮮明に覚えています。
P2P保険とはあまりにもかけ離れたアナログ体験ですね(笑)
数年前にジブラルタ生命社員が保険料詐取で告発された事件がありました。昨年のかんぽ生命の不祥事も記憶に新しいところです。
こういう詐欺事件が起きてしまう根本的な原因は保険料収納に現金を扱っているからです。
銀行口座を使うから、「ジブラルタファイナンシャル生命保険株式会社」とかの存在しない架空会社口座を騙って、振り込ませることができてしまうわけです。
日本がキャッシュレスになっていく過程で、契約者が支払う保険料、保険会社が支払う保険金・給付金の双方が全てキャッシュレスになれば、保険営業職による詐欺は減るでしょう。
オペレーションコストも大きく削減できますので、保険会社の負担も減らすことができます。
給付金請求を受け付けてから10分以内に契約者のスマホにpaypayで支払完了という日も実現するでしょう。
④保険代理店の統廃合と金融コングロマリット化
日本の保険市場規模は横ばいですが、チャネルごとに見ると乗合保険代理店市場は急成長しています。
これは2005年に個人情報保護法が施行され、生保レディーが職域営業できなくなったことが大きいです。
契約者は、職場で生保レディーの営業を受けなくなったので、自分からほけんの窓口に相談にいくようになったというシンプルな構図ですね。
スタートアップは伸びてる市場で勝負するのが鉄則ですから、当社も保険会社⇔乗合保険代理店間というマーケットを市場選択しているのですが、社保義務化で乗合保険代理店も昔ほど儲からなくなりました。
数年前まで保険代理店は社会保険に加入しなくて良い時代があったのですが、業法改正で社保加入が義務付けられると、負担は重く、まあ儲からないです。
結果として小規模代理店を大規模代理店が吸収する動きは加速します。
一方で、保険販売や投信販売の資格試験を一本化する法改正が決まり、2021年から施行されます。
保険代理店も保険を売っているだけでは不十分となり、IFA資格を取得し、総合金融サービス業者として事業展開する代理店が増加するでしょう。
昨年9月にアメリカAustinで開催されたMDRT・TOT会に参加してきましたが、保険営業成績だけで基準クリアーしてくるのは日本人くらいで、海外では保険も投信も両方扱うのが主流のようです。
数多くの金融商品を扱うということは、事務と商品比較の簡略化はマストになりますので、当社としては全力で取り組んでいる主領域であり、強い追い風が吹いていると感じています。
⑤「国家」を超えた保険会社の誕生
保険は認可事業のため、各国家ごとの認可が必要です。日本生命も第一生命も海外展開する際には該当国家にまず子会社を作り、そこで営業免許を取得して保険事業を始めます。
このオペレーションで何十年と世界各国の保険会社はグローバル展開してきたのですが、技術的な環境は整った今、「国家」の枠組みを超えた保険会社が登場するでしょう。
既存の保険商品は、「保険証券は日本の契約者住所に送らないといけない」「契約内容を日本語で読めることが必要」などの理由で外国人加入ができなかったりしますが、保険証券はペーパーレスにしてしまえばいいですし、全ての契約内容はスマホ内で多言語化してしまえばよいですよね。
ただ該当国家の税制が絡むので、後はこのハードルさえクリアーすれば十分に可能だと思います。
世界の全人口77億人をターゲットユーザーにできる保険会社があれば最高だなと思いますし、僕自身が創りたい保険会社の理想像でもあります。
国家という概念は、経済的には今後も形骸化していくので、実現できるはずです。
さいごに
自分で5つ考えてみて、P2P保険を除く4つについては当社が率先して取り組んでソリューションを提供したいと改めて感じました。
P2P保険については僕の得意領域では全くないので、友人のJustincase畑さんに頑張ってもらいます(笑)
日本の急速な労働人口減少は絶対的な未来なので、保険業法規制によって人海戦術バリアーを築いている保険業界は、規制を守ろうとすればするほど、自分で自分の首を絞めることになります。
「保険業界の人不足」という課題に対して当社は保険業界のweb上の「検索」と「コミュニケーション」を円滑にするサービスを提供します。
2年近く開発してきてやっと製品化できるフェーズなのですが、トラクションも出始め手応えを感じています。
この記事を読んで頂いた方とどこかで保険業界の未来についてお話しできる機会があれば幸いです。
自分でも10年後に読み返して、どこまで当たったかも検証します。
最後までご覧頂きましてありがとうございました。
2020年もよろしくお願いします!
僕個人の直近インタビュー記事はこちら。今年はメディア露出も増やしていきますので、取材のご依頼もお待ちしてます!→
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