叔父さん

母の弟である私の叔父は、長いこと精神を患っていて、何十年も入院生活を送っています。

母親(私から見たら祖母)を亡くしたと同時に異変が現れ始めたのです。体が前のめりにガクンガクンと動いてしまい、止めようとしても止められない。

他にも症状はあったのでしょうが、まだ小学生だった私には何が起こっているのかよく分かりませんでした。

それでも数年間は、たまに入院することはあってもずっとということはなく、薬を飲みながら定期的に通院するという生活を送っているようでした。

この叔父との思い出というと、まだ元気だった頃ですが従兄弟たちとプロレスを仕掛けたところ反撃に遭い、けっこう痛かったとかそういうことが多いんですが、一番印象に残っているのは私が中三の時のことです。

ある日、彼氏(ませてんなー)との初デートに遅れそうになった私は焦りまくり、長い坂を駆け下りて叔父の住む家の戸を叩きました。頼むから、街まで車で送って下されと。

当時は携帯などもなかったため、彼氏に連絡を取る手段がありませんでした。服選びで迷っているうちに、一時間に一回しかやって来ない田舎のバスを逃してしまい、血の気が引いたことをよく覚えています。

叔父は快く街まで送ってくれました。時速40kmくらいの、緩やかな運転で。

いま思えば、その時はもう通院していた頃だったのに、運転なんかさせて良かったのか?という疑問が浮上するのですが(汗)

その叔父とは、もう15年くらい会っていません。社会人になっても暫くは、うちの両親がお見舞いに行くのに当たり前のように同行していましたが、最近ではなぜか全く誘われなくなり、同時に私の記憶からも、薄情なことにこの叔父の記憶だけが、まるで霧でもかかったかのように見えなくなってしまっていたように思います。

でも何故か最近思い出し、あの日のことを叔父に感謝したくなりました。

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