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金曜日のケンカ

幼稚園に迎えに行くと、大汗をかいて園庭で遊んでいたであろう息子が柵によじ登り、駐車場で車のドアを閉める私に向かって叫んだ。

「まだ来ないで!まだ来ちゃだめー!」

そうか、そうか。まだまだ遊び足りないよね。緊急事態宣言を受けて、夕方の延長保育が無しになり、早朝の延長保育も無くなり、園庭での遊びタイムもかなり減ってしまった。「わかった、わかった」と身振り手振りで合図を出して、息子は前歯が数本ないスカスカの笑顔で友達のところに走って行った。

数分でもいいから長く遊ばせてあげよう、と時間ギリギリまで車で待ち、いよいよ行かないとまずい時間に、先生に見えるように姿を見せ、なんとかゆっくり歩き、近くにいたママ友達とお話をしたり・・・なんだかんだしてから、先生にご挨拶。

「さあ、帰ろう!」と息子に呼びかけようとしたら、何やら言い合いが始まったところ。それまで遊んでいた一番の仲良し君とケンカが勃発したもよう。彼とは毎日早朝から夕方までずっと一緒に遊ぶ仲。

仲良し君は息子から離れて、遠くへ行ってしまった。息子は私の顔を見ると、だんだんと目が赤くなり、泣き出した。転んでも、怪我をしても泣かない息子。でもきっと一番甘えられる対象である母親の私を見て、どうしても涙が出てきてしまうのだろう。

話を聞いても、よくわからない。(ごめん息子よ)

何度も何度も、「自分は悪くない」と言いながら涙が止まらない。仲良し君は園庭の端っこの方から反論をしてくる。「ちがーう!オレじゃなーい!」彼は泣かない。ムスッとした顔で、地面を蹴ったりフェンスを押したりしている。

何度聞いても、何が起こったのかよくわからない。

仲良し君のことは、アートクラスの生徒さんでもあることから、小さい頃から知っている。彼は明るくユーモアがあり、気さくで賢く、息子とは本当に良い友情を結んでいると思っている。

母としては息子の味方をしたい。だけど、仲良し君の気持ちもとってもよく分かる。
それに、どちらが悪いとか決着をつけるつもりは全くないし、なぜこうなったかと聴く必要もない。

もし仲良し君のママが今、ここに来たら、彼も泣いてしまうだろうか?または、もし息子が逆の立場で、ケンカの相手がママにすがりついていたら、涙も流さずただひとりで悔しさをフェンスにぶつけるのだろうか。

私としては、二人がいつものように「バイバーイ!またねー!!」と別れて欲しいと思っていた。後味が悪いまま月曜日まで会えないなんて。

それでも、普段なら絶対に恥ずかしくてやらないのに、抱っこをせがんで泣く息子と、フェンスに頭をガンガン押し付けてイライラを爆発させる仲良し君。どうしようもなく、そのまま車に乗ることにした。

そして、泣きながらおやつを食べて3分後。そこには、BTSのダイナマイトを大声で熱唱する息子がいた。目はまだ赤い。

車の窓から見えた景色の中に「アンテナ」を見つけた息子は、大きな声で説明を始めた。
「アンテナって知ってる?アンテナって知ってる??宇宙にフロートしてるやつ。そして電気がワークするの。僕のブレインもつながってるの!」

よく分かるようで分からない説明が終わる頃、私でさえケンカのことを忘れていた。

6歳男子のケンカ。それは「アイスを落として悔しくて泣いちゃった」。それくらいのレベルかもしれない。

すっかり日が沈むのが早くなった、秋のはじまり。平和な夕暮れなのでした。今頃仲良し君も、車の中でママと一緒に笑ってる。

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そしてこれを書いたのは緊急事態宣言が解除される前。ずいぶん温めてしまったな。息子の成長は早い。あの時は「アンテナ」の話をよくしていたけれど、今では「宇宙」の話に夢中だ。

「世界で一番大きなもの知ってる?ユニバース!!次は何か知ってる??ギャラクシー!!次は、、、」

 でも歌っているのはまだまだBTS。中学生の姉の影響をモロに受ける6歳男子なのでした。

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