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ハンガリー語のちょい面倒な特徴・続

 前回は「ハンガリー語のちょい面倒な特徴」についてざっと紹介した(下記リンク)
 https://note.com/seikiya/n/n1ec7513b5971

 今回はその続きとして、「私の」など所有を表す表現について紹介したい。

🟧 私の、あなたの

 英仏独露語など多くのヨーロッパ語では、my, mon, mein, мойといった、所有を表す単語を名詞の前に置く。
 他方、ハンガリー語では「私の」など所有を表すには接尾辞を名詞の後ろにつなげる

 例をひとつ見てみよう。
・オフィス iroda
・私のオフィス irodám
→ 語尾の「m」が「私の」を表している。
(単語末のaがáに変わる点はとりあえずスルーしてください)

 このように、単語の後ろに所有の語尾を付けるのである。

 この接尾辞は、所有を表す人称接尾辞であることから〈所有人称接尾辞〉などと呼ばれたりもする。人称というのは、私やあなた、彼、彼女など、文における人や物の関係性のことである。

 この〈所有人称接尾辞〉は人称ごと、つまり、私やあなた、彼、彼女、およびその複数形ごとに形が決まっている。そして言うまでもなく母音調和の規則に従う。
 母音調和については「ハンガリー語のちょい面倒な特徴」でも触れたが、単語の最後の母音に応じてその単語に付ける接尾辞が変わる現象である。これは表を見るほうが早いので、所有人称接尾辞の一覧をご覧いただこう。

 下の表が所有人称接尾辞の一覧になる。
 「単」「1」の横の列が「私の」を表す語尾になる。左から順に、単語が母音で終わる場合、単語が子音で終わり、かつ最後の音節にa, o, uがある場合、i, eがある場合、ö, üがある場合を表す。
 要するに、単語が子音で終わる場合、付く語尾が、単語の最後の音節の母音に応じて-om, -em, -ömと変わる。これが母音調和という現象である。

所有人称接尾辞のまとめ

〈3人称について〉
 3人称というのは、単数だと「彼」「彼女」のほか無生物を表す人称だが、ハンガリー語の場合は敬語を使う相手(あなた)にも3人称の語尾を使う。「あなた」は話し相手だから物理的には2人称だけれども、敬語の相手は文法的には3人称になる。
 つまり、敬語を使う相手に対する「あなたの」は、3人称単数の語尾-ja/-je, -(j)a, -(j)eになる。
 ちなみに、敬語の相手を3人称として扱う現象はイタリア語のLeiやポルトガル語のvocêと同様なので、ヨーロッパではそう珍しいことではない。

 以上、「私の」など所有を表す人称接尾辞について説明しました。

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