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KODAK SAFETY FILM 5017

廃棄処分にしようとまとめていたゴミの中からほとんど未整理のポジフィルム現像済みの束を見つけました。ルーペを持ち出して見ているうちにデジタルとは違った色味に惹かれて座り込み、とうとうスキャナーも引き出してきてこれまでほとんどやったことのないポジカラーのスキャニングまでしてしまいました。1980年代初め頃のポルトガル、リスボンでの撮影です。

その頃ある大手出版社の企画する全集本の仕事で行ったリスボンで撮影したものだという事はわかっても、さて使用機材は何だったのか全く思い出すことができません。カラー撮影ということで、あるいはコンタックス(ヤシコン)を持っていった可能性はあります。それとミノルタCLに付けた35ミリズミルックスもありそうですが、M型ライカはなさそうと写真を見ていて思いました。

その頃の感覚では、自分にとってカラーポジの仕事は撮影後出版社に原稿として納めてしまえばそれで終わりという割り切りで、あとは全く見返すこともなかったと思います。カラーフィルムの場合、自分が関与するのは撮影だけで、現像も現像所任せ、例えプリントをと思ってもこれまた現像所での仕事です。自分で作ったプリントでフィニッシュできるということのないカラーには、限定的な興味しか持てなかったというのが本音です。

リバーサルのフィルムを最後に買ったのはいつだったのか、今では遥か昔のことで思い出すこともできませんが、このリスボンでの仕事あたりが最後だったのかもしれません。というわけで久しぶりに見たポジカラーですが、いつものモニターで見ているデジタル画像とはまた違う感覚に、新鮮な気分にもなりました。

写真が他の表現手段と違うことには、ごく短い時間の中で行う(撮る)という条件があると思いますが、特に35ミリのような小型カメラを用いての写真は、それがはっきりすると思います。瞬時に全てを決めて暗箱に納める、その後はもう言い訳なし、ごまかしなしの世界です。そして一定の時間を経てその結果を得る、それがフィルム時代の写真でした。瞬間に終え、そして結果を見るまでの間、、、なんとも絶妙な組み合わせではないでしょうか。

それがデジタルではすべてインスタントになり、待つということがなくなりました。撮るということについても瞬時に決めるよりは、オペレーションそのものになり、大袈裟に言えばなんでもあり(求めるならば)の世界になりました。もはや写真とは言えない!と思う人がいても不思議ではないでしょう。

これを機会にときにはリバーサルで撮ってみるのも面白そうと、現行コダックのフィルム価格をチェックしてびっくりです。36EXロール1本3700円!
それに現像料金を加えると軽く5000円オーバーです。これはもう軽々にお遊びでとは言えません。

仮に一本フィルムカメラに入れて35ミリで36枚撮るとします、フィルム代だけでワンカット100円と意識するかどうかは別にしても、無闇にシャッターは押さなくなるはずです。デジタルでの1000ショットはあっという間かもしれませんが、フィルムでは35ミリで30本に相当、これはかなり学べる物量です。でもデジタルばかりやっていると、こういうことは考えたりしなくなっていました。


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