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【横田一】小池知事の正体を浮き彫りにした爆弾告発|政界ウォッチ29

 女性初の総理大臣への道が再び見えてきた途端、元側近の小島敏郎氏の「爆弾告発」(文藝春秋5月号)が直撃したことで、衆院東京15区補選(4月28日投開票)をめぐって開幕した“小池劇場”が目まぐるしい展開となっている。上川陽子・外務大臣と並ぶ「女性初の総理候補」と有力視される小池百合子氏が、都知事を電撃辞任して東京15区補選に出馬する見方が広まっていたのだ。

 単なる「永田町の噂話」ではないことは、3月12日の朝日新聞が「八王子市長選(1月21日投開票)」と絡めて報道。市長選から間もない夜に萩生田光一・自民都連会長と小池知事が会食、「小池氏に対し、今夏の都知事選で3選を目指す場合は支援、また古巣の自民党への復党を望めば、後押しする考えも示した」という関係者のコメントを紹介した。

 より詳しく両者の急接近を暴露したのが、週刊文春4月25日号。「実は萩生田氏は、小池氏を巻き込んだ〝クーデター”を画策していた」という都連関係者の発言をこう紹介していたのだ。「15区に小池氏を擁立し国政復帰させる。そして岸田降ろしが起こったところで総裁選では『旧二階派議員とともに小池を担ぐぞ』と、3月上旬、配下の地方議員たちに伝えていた。結局、小池氏はこの打診を断り、乙武洋匡氏を擁立したのです」(都連関係者。萩生田氏の秘書は『事実無根』と否定)。

 “小池劇場”のシナリオは三部構成。「まず電撃辞任で補選に出馬(圧勝確実)、次に自民党復党を果たし、総裁選で不人気な岸田首相に勝利する」と思い描いていたに違いない。もちろん、総裁選直後の解散・総選挙で「女性初の総理誕生」を旗印に勝利することは織り込み済みだ。

 しかし小池知事は補選出馬を断念、シナリオは急に書き換えられた。 注目ポイントは3月上旬以降、状況が急転したこと。4月発売の文藝春秋5月号の校了は発売前月の3月下旬だから小池知事の学歴詐称をめぐる「爆弾告発」の当て取材は3月中旬から下旬。「“文春砲”直撃を知って小池知事が補選出馬を断念」と考えると、一連の経過と符合する。

 「小池総理誕生」が現実味を帯びて来たことが、前出・小島氏を後押しする要因になったようにも見える。先の告発手記にはこう記されている。「小池さんは一時、国政への復帰が噂され、さらには次の総理候補としても取り沙汰されていました。意を決して、私が手記を発表しようと思い立ったのは、このままでは、日本の政治が危うくなると感じたからです」。

 小池知事を支えていた小島氏が評価を一変、日本の政治を危うくする存在と見なしていた。学歴詐称疑惑を沈静化する際に自民党にも世話になり、2020年の再選を境に「改革路線」から「古い政治」に逆戻りしたとも小島氏は指摘していた。

 このことを目の当たりにしたのが、小池知事支援の都民ファ候補と、神宮外苑再開発に反対する元都民ファの森愛候補らが二議席を争った昨年6月の「大田区都議補選」。本誌7月号で「立憲民主党と共産党などが支援した無所属の森愛候補(元都民ファ都議)がトップ当選」と紹介したが、この森氏が所属する会派「ミライ会議」のアドバイザーを小島氏は務めていたのだ。

 なお森氏は都民ファ時代に外苑再開発を都議会で追及しようとしたら「森喜朗さんの利権だから終わったこと」と党幹部に言われて離党。小島氏と同様、小池知事と袂を分かち対決する側に回っていたのだ。

 緑がシンボルカラーの元環境大臣なのに外苑再開発を強行、「伐採女帝」との異名を持つ小池知事――その変節の発端が自民党に借りを作った学歴詐称疑惑ではないのか。今回の爆弾告発は小池知事の正体を浮き彫りにし、都知事や総理に相応しいのかを問題提起するものなのだ。


よこた・はじめ フリージャーナリスト。1957年山口県生まれ。東工大卒。奄美の右翼襲撃事件を描いた『漂流者たちの楽園』で90年朝日ジャーナル大賞受賞。震災後は東電や復興関連記事を執筆。著作に『新潟県知事選では、どうして大逆転が起こったのか』『検証ー小池都政』など。

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