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【高野病院】異世界放浪記⑨

寒くなってくると、住宅街でクマと遭遇し、襲われたというニュースをよく聞きますが、私達が異世界に飛ばされてからこれまでの、異世界生態調査をご報告したいと思います。

 みなさんも報道等で耳にしたと思いますが、当初は犬が町内を徘徊していました。野犬というよりも飼い犬だった子達が、様々な事情で、自らの力で生きるしかなかったのです。町内を散歩していると、食べ物を求めてなのか、人がいるのがうれしいのか、しっぽを振って寄ってきました。実は私、過去に犬を飼っていましたが、自分の家の犬と高野病院のセラピー犬、高野ジョンさん以外は怖くて触れないので、目を合わせないように立ち去るほかありませんでした。ある日、町内の道路を闊歩している牛のカップルと遭遇し、離れて後ろをついていったのですが、途中の空き地で急に牛達が座りこんだため、前を通って進むしかなくなり、困って病院に「どうすればいい?」と電話をしちゃいましたよ。今思えば、来た道を戻ればよかったんですよね。ちなみに病院スタッフの返事は「目を合わせず、静かに通り過ぎろ!」でしたが、牛達と目が合っていたらどうなっていたのでしょう。ここからさらに危ない生き物に移っていきますよー。まずは病院敷地内に現れた猪豚の親子。食べ物の匂いにつられたのか、厨房近くまできたので、猟友会の方が出動。次は、裏の林に現れた猪です。町に相談して、罠を設置してもらいましたが成果はありませんでした。目撃情報などからその猪は、以前後ろ足を失いながらも罠から逃げ切り、学習したのか、二度と罠にかからなくなったという、伝説の猪だったようです。セラピー犬のジョンさんが、一晩中吠えて威嚇したせいで、当時の高野院長が寝不足に陥ったという逸話を残し、その後消息を絶ちました。

 しかし何よりも怖かった生き物は「人間」でした。人の気配がない町内を散歩していて、動物達にあうよりも、急に人間に遭遇するほうが、よほど怖かったです。当初異世界は盗賊のみなさんにとって、お宝の山だったようで、住人不在の住宅から、屋内の貴重品だけではなく、窓のサッシやパラボラアンテナなども持ち去ったのです。当時、全国から応援の警察関係者が町内のパトロールを強化していましたが、すべてを取り締まることはできませんでした。その後、異世界に多くの人達が立ち入るようになると、下着泥棒も発生。当院の関係者も被害にあい、「持っていくなら私のパンツを持っていけ!」と意味不明な怒りを爆発させていた私です。

 院内回覧で注意喚起をしたのは、夕方から夜間、人が道路で倒れていて、通りかかった車の運転手が助けようと駆け寄ると襲われる、という事件が発生した時です。絶対に車から降りない、どうしても気になるなら、遠く離れてからすぐに警察に通報するようにと周知。幸い職員や関係者に被害はなかったですが、人の善意につけ込む卑怯な行いでした。

 今回の生態調査で、異世界の生態系で一番恐ろしいのは「人間」という結果になりました。当初は「人間」が事件を起こすたび、「東京電力」が発電所内の事故などを隠ぺいし、それが明るみに出るたび、この地域は危ないところだという認識が外の人々の頭の中に刻まれ、人材の確保がさらに大変になりました。異世界で人を集める苦労がどれほどのものか、その苦労をあざ笑うかのように、たびたび起きる事件や東電の不祥事。空に向かい「ばっきゃろー」と、やり場のない怒りをぶつけていた日々を思い出しながらの調査報告でした。

たかの・みお 1967年生まれ。佛教大学卒。2008年から医療法人社団養高会・高野病院事務長、2012年から社会福祉法人養高会・特別養護老人ホーム花ぶさ苑施設長を兼務。2016年から医療法人社団養高会理事長。必要とされる地域の医療と福祉を死守すべく日々奮闘。家では双子の母親として子供たちに育てられている。2014年3月に「高野病院奮戦記 がんばってるね!じむちょー」(東京新聞出版部)、2018年1月に絵本「たかのびょういんのでんちゃん」(岩崎書店)を出版。

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