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〝真剣交際〟を主張した性犯罪教師|【高橋ユキ】のこちら傍聴席12

 18歳未満の少女にみだらな行為をしたとして逮捕される大人は後を絶たない。ニュースをチェックすればほぼ毎日そんな報道がある。そのこと自体にどんよりした気持ちになるが、逮捕者が、子供を導き指導する立場である教員であったとき、一層どんよりした気持ちになる。

 23年10月末には福島県の青少年健全育成条例違反容疑で相馬総合高新地校舎の教頭だった鈴木裕一(52)がいわき中央署に逮捕された。いわき市内で少女が18歳に満たないと知りながら、みだらな行為に及んだとされる。

 その後鈴木元教頭は、同じ少女に対してSNSを通じてわいせつな写真を送らせたという児童ポルノ禁止法違反にも問われた。11月15日には、いわき簡易裁判所において罰金60万円の略式命令が下され、同月17日には県教育委員会により懲戒免職処分となった。

 さて同様に、教員でありながら未成年に性欲をむきだしにした男の裁判が23年、東京地裁で開かれていた。しかも相手は元教え子であり、その教え子に対して最初に性的接触をしたのは、教え子が小学5年生のときだった。

 東京都内の小学校に勤めていた河嶌健被告(逮捕時46)は、勤務していた学校で児童らを盗撮した容疑で逮捕され、その後、かつての教え子だった女性・Aさんに対する準強姦未遂の罪でも逮捕・起訴された。Aさんはいま成人しているが、小学5年生の頃、担任を受け持っていた被告から、キスを求められるようになったという。「『好き?』と言ったら『好き』と言って」と要求され、従わされていた。6年生になると、被告はさらにエスカレート。陰茎を触らせたり口淫をさせるといった行為を繰り返し、それを撮影していたほか、宿泊を伴う行事の際、被告から部屋に呼び出されると全裸になるよう命じられ、陰部に陰茎を押し付けられたともいう。さらにAさんが中学受験することを報告すると被告は「キスを嫌がる素振りを見せると内申点を下げる」とAさんに告げたのだそうだ。小学校卒業後も被告の性的要求は続き、中学2年生の頃、準強姦未遂の被害に遭った。

 しかし当の被告は、罪状認否で「私はAさんをレイプなんてしていません。当時Aさんとは交際をしていました」と〝真剣交際〟を主張。被告には家庭もあり、何より成人した大人と小学生が真剣交際していたという言い分自体に疑問が生まれるが、被告はあくまでも恋愛関係にある中での性的行為だったという驚きの言い分を繰り広げた。

 「彼女は僕に先生としてより、男性として好意を示してくれたので、とても嬉しく感じました。今考えるととても問題だと思いますが、当時は舞い上がり『好きだ』と答えました」(被告人質問での証言)

 車椅子に座り〝小学生時代のAさんと両思いになった〟と語る被告は〝Aさんが嫌がったから挿入していない〟などと主張。

 Aさんは、法廷でこう陳述した。

 「先生は性的なことをしていた動画を改めて見て、私の話を聞いて、それでも同意していたと本気で言っているんでしょうか」

 被告には「長期間にわたり性的虐待を繰り返し、Aさんを抗拒不能に陥らせた。極めて卑劣な犯行で常習性は顕著」として懲役10年が求刑され、5年の判決が言い渡された。


たかはし・ゆき 1974年生まれ。福岡県出身。2005年、女性4人で裁判傍聴グループ「霞っ子クラブ」を結成(現在は解散)。以後、刑事事件を中心にウェブや雑誌に執筆。近著に『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』。

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