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【コロナワイド】感染議員が警鐘「コロナ対策の穴」

本当に怖いのは肺炎よりも血管炎


 桜井充参議院議員(4期、無所属、宮城県選挙区)は昨年11月、新型コロナウイルスに感染した。完治後、自身の闘病記をメールマガジンやウェブサイトで公開し、対策の徹底を呼び掛けている。求められる感染対策について話を聞いた。
 
 議員活動のため、地元・仙台市と東京を行き来している桜井議員。11月13日(金)に仙台市に移動してPCR検査を受けたところ、同日夕方に陽性と判明した。

 仙台市保健所に届け出て指示を待つうちに熱が上がり、せきも出始めた。入院を希望したが、ベッドの空きがないという理由で入院を拒まれ、ホテルでの宿泊療養も叶わなかった。やむを得ず自宅療養することになり、同居する妻は義理の父の家に移った。

 時間とともにせきが激しくなり、筋肉痛や関節痛、胸の不快感といった症状が現れ始めた。夜は全身の痛みで眠ることさえままならず、熱は最終的に38度5分まで上がった。

 桜井議員はこう振り返る。

 「レントゲン検査や酸素飽和度検査を受けられず、薬も処方されないまま、自宅でどんどん症状が悪化していくのは不安が大きかったです。自宅療養を余儀なくされたことで、仙台市が医療崩壊していることをあらためて実感しました」

 幸い桜井議員は現役の医師(心療内科医)でもあり、症状からある程度判断して薬を飲むことができた。痛み止めで全身の痛みを抑え、オルベスコという吸入ステロイド剤を使ってせきや胸の不快感を軽減し、胃薬で胃酸分泌による腹痛を抑えた。

 陽性判明から3日後の11月16日(月)、無理を言ってレントゲン検査やCT検査を実施してもらったところ、小さな肺炎が確認された。薬を飲まなければ、一気に重症化していた可能性もある。自宅療養の怖さをあらためて思い知らされた。

 コロナの症状として知られる味覚・嗅覚障害はなかった。ただ、微熱(熱っぽさ)や全身のだるさ、下痢・腹痛は数日続いた。何より一気に重症化するのではないか、という不安が大きかった。

 それらの症状も次第に回復していき、陽性判明から10日後の11月23日(月)には熱やせきなどの症状がなくなった。軽症・中等症は発症から10日以上経てば周囲の人に感染させることはないとされており、感染者の退院条件も「発症から10日経過かつ症状軽快から72時間経過」と定められている。仙台市保健所との電話連絡の際に現状を報告し、11月25日(水)に就業許可の証明書が送られてきた。

 無事回復を果たしたわけだが、桜井議員は自身の体験やこれまでの報告から「新型コロナウイルスは風邪やインフルエンザと全く異なる。油断すべきではない」と呼びかける。

 「コロナで影響を受けるのは肺などの呼吸器系というイメージが強いですが、ウイルスの侵入により心筋炎(心臓の筋肉に炎症が起きること)や血管炎(血管に炎症が起きること)を引き起こすことが報告されています。血管炎は動脈硬化のリスクを高めるが、検査ではなかなか分かりづらい。5~10年後、コロナ感染者に特定の疾患が増加しないか観察し、対策を講じていくことが必要です。昨年12月には同僚議員だった羽田雄一郎参議院議員がコロナに感染し、PCR検査を受ける直前に亡くなりました。基礎疾患があり、コロナの疑いがある人がすぐPCR検査を受けられる体制も構築すべきです」

 折しも1月20日未明には、コロナ感染歴があるお笑いコンビ「爆笑問題」の田中裕二さんが前大脳動脈解離によるくも膜下出血、脳梗塞を起こし、入院した。コロナとの関連性は不明だが、警戒が必要だろう。

 加えて桜井議員が強く訴えているのは、「接触感染」の怖さだ。現在は、感染者の口から出る飛沫が口や鼻、目などの粘膜に付いて感染する「飛沫感染」ばかり注目されているが、飛沫が飛んだ場所を触ってしまい、その手を介して感染する「接触感染」もリスクが高い。

接触感染に要注意

 「私は陽性判明の4日前、東京の割烹で、5人で食事した際に感染したと考えています。店のスタッフはフェイスシールドを付け、それぞれがソーシャルディスタンスを守って座っていました。ですが、私を含む2人だけが感染しました。2人に共通していたのはトイレを利用したこと、酒瓶を掴んだこと、手づかみのおつまみを食べたことです。不特定多数が使うものを触り、その手を消毒しないまま、自分の口に触れてしまったため、接触感染してしまったのだと思います」

 桜井議員が疑っているのはトイレのドアノブだ。感染者の便にはウイルスが含まれることが分かっており、豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス号」においても、感染者が利用したトイレの床からウイルスが確認されていた。ふたを開けたまま流せば、ウイルスが床に拡散し、室内が汚染されることもあり得る。

 「入り口に消毒用アルコールを備えている飲食店は多いが、トイレの前やテーブルごとに置いているところは少ない。仮にドアノブが汚染されていたら、接触感染を防ぐ術はないわけです。テーブルの上のしょう油、カラオケで歌う人の近くなども接触感染のリスクは高く、もう少し注意して対応すべきだと思います。菅義偉首相は施政方針演説で『感染経路不明者とされる新型コロナ感染者の多くが飲食店での感染だとみられる』と述べていましたが、具体的に飲食店でのどんな行為が危ないのか、きちんと示すべきです」

 これらの感染者ならではの体験談を感染対策に生かすべきだ。とりわけ心筋炎・血管炎の影響については注視していく必要があろう。


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