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【アレンザホールディングス】浅倉俊一社長インタビュー

 新型コロナウイルス感染拡大により経済活動が停滞した影響で、企業の業績悪化が明らかになりつつある。「新しい生活様式」が求められる中で、今後、県内企業はどう対応していくのか。ホームセンターのダイユーエイトなどを展開するアレンザホールディングス(福島市)の浅倉俊一社長に、現状や今後の見通しについて話を聞いた。

 ――新型コロナウイルス感染拡大による影響は。

 「不要不急の外出自粛を求められ、遠出せず自宅周辺で過ごすようになったことで、『住まいや生活を見直そう』といったニーズが出てきたように感じます。この間の当社売上高も前年比微増ではありますが伸びています。ホームセンターはスーパーマーケット、ドラッグストアと並び、地域密着型のライフラインになっていることをあらためて実感しました。

 3月はトイレットペーパーなどのニーズが高かったですが、4月に入ると家庭用品・インテリアなど日常生活を快適にする商品が人気を集めるようになり、大型連休に入ると工具やペンキなどDIY用品の需要が高まりました。大型連休以降は園芸や植物の売れ行きが好調です。感染拡大に注意を払いながら余暇をどう楽しむか、という考えに変化しているのだと思います。

 多くのお客様に安心して足を運んでもらうため、感染対策は徹底しています。お客様に対する安全性の確保、社員が安全に働ける環境づくりを考えて、従来は厳禁だった職員のマスク着用を3月頭からスタートしました。3月中旬からはレジにビニールカーテンを取り付け、2㍍間隔を空けて並ぶよう促す店内表示を徹底しました。店舗入り口には消毒液を設置し、買い物かごやカートも定期的に消毒しています」

 ――ホームセンター業界の今後の見通しはどうなると見ていますか。

 「〝コロナ特需〟のようなものも少しありましたが、先行きは不透明です。大手企業の決算発表を見ると業績が悪化しているところが多い。今後新規採用の抑制・リストラを実施することも考えられますし、倒産する事例も出てくると思います。そうなれば失業者が増え家計に影響を及ぼすようになり、節約マインドが高まっていくので消費は停滞します。10万円の一律給付ではどうにもならないレベルで経済状況が悪くなっていくと予見しています。当社においても相当厳しい経営環境になることを覚悟しています」

 ――震災・原発事故後、福島県では復興特需が発生し、原発被災者や被害を受けた企業に賠償金が支払われました。今回はそれが見込めない分、相当苦しい状況になりそうです。

 「世界共通の問題ですし、東京・大阪の大経済圏の活動が停滞したままでは福島県を含む地方経済が上向くこともないでしょう。回復には少なくとも10年ほどの時間が必要だろうし、人口減少が進行する地方において完全に元通りになるのはかなり難しいと思います。そうした中で優勝劣敗の構図がこれまで以上に鮮明になり、企業間の競争がより激しくなるのではないでしょうか」

ネット販売事業を強化

 ――アレンザホールディングスの2020年2月期連結決算は、連結営業収益1376億9500万円(前年同期比67・0%増)、連結営業利益33億4700万円(同745・8%増)、連結経常利益37億7300万円(同446・1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益18億9900万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失6400万円)という結果でした。この決算をどう受け止めていますか。

 「概ね満足できる結果でした。ホールディングス設立から1年経過し、シナジー効果も順調に創出されています。さらに粗利率改善とコストコントロールを強化するため、商品統合委員会など複数の委員会を立ち上げ、中長期的な視野での経営改善について話し合いを重ねています。大規模なグループだからこそ得られる〝マスメリット〟を追求し、競争力につなげていきたいです。

 来期の連結営業収益の見通しを1475億円と発表しましたが、新型コロナウイルスの影響は含まれていない数値です。不確実なことが多く、今後は想定外の変化に対し、どう対応していけるかが重要になると思います。いずれにしても『地域のライフラインとして皆さんの生活をサポートし、暮らしの提案をしていく』というホームセンターの基本は変わりません。例えば豪雨が多い時期に商品販売を通して防災対策を提案するなど、時節に合わせた啓発活動もできます。今後もそうした役割を果たしていきたいと思います」

 ――5月12日には、福島市にインターネット販売の物流拠点「EC物流センター」が開所しました。

 「3年前からネット販売事業に本格的に取り組み始め、売上高が年々倍増する勢いで伸びているのを受けて、新拠点を設けました。従来の10倍の商品を保管できるようになり、来期はネット販売事業だけで約30億円、5年後には約100億円の売上高を目指していきます。国内のネット販売のシェアは消費全体の6%程度ですが、中国や米国は10%台と高くなっています。新型コロナウイルス感染拡大に伴う『巣ごもり消費』もあって、日本も一気に10%以上に伸びていくとみており、今後に期待しています」

 ――ダイヤモンド社発行の業界誌『ダイヤモンド・ホームセンター』において、直近1年間に新規出店した店舗のうち年間ベスト店舗を読者投票で決定する「ストア・オブ・ザ・イヤー」という企画が実施されています。この企画の2020年発表分で、昨年10月開店のダイユーエイト福島西店が第1位に選ばれました。

 「全国のそうそうたる企業の店舗から1位に選ばれたことは大きな喜びです。体験型の店舗づくり、ライフスタイル提案型の売り場づくりを心掛け、特にアウトドア用品、ガーデニング用品を充実させています。同店周辺への店舗集積も進めており、昨年12月には、ペットショップとして日本一の規模の売り場面積を誇る『ペットワールドアミーゴ福島西店』、2月には新業態の職人向け専門店『エイトプロ福島西店』をオープンしました。そうした点も全国から評価されたのだと思います」

 ――今後の抱負を。

 「『〝チャレンジ3000〟飛躍への挑戦~グループ企業を結集して経営統合の成果創出~』を経営スローガンに掲げ、2030年グループ売上高3000億円の実現を目指しています。新型コロナウイルス感染拡大の影響で『新しい生活様式』が求められていることもあり、出店戦略の見直しは避けられません。ただ、後継者問題などを抱える企業も多いと思うので、M&A戦略は今後も積極的に進め、売上高3000億円を実現したいと考えています」


あさくら・しゅんいち 1950年生まれ。聖光学院高卒。76年に㈱アサクラ(現ダイユーエイト)創業。昨年4月、経営統合により設立されたアレンザホールディングス社長に就任。

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